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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
崩壊の序章
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足止めと撤退戦

喚起ヴィーゾフ・ザカース


 ミロンは岩の壁を作り出す。その壁はアルルの逃げ道を完全に塞いだ。

 と、同時にネリーも動き出す。


命ノ灯(アラハ・ハール)』を展開させたのだ。


 壁が、アルルの拳によって破砕される。

 その壊れた壁の向こうには、ネリーの髪が待っていた。


 ネリーの髪は、岩の壁などよりも強度があり、尚且つ柔軟である。

 そうそう拳で突破できるものではない。


 能力の肝である炎は消されるが、それは問題とならない。


「見たぞ。何と厄介な能力か」


 岩の壁を簡単に破壊できる拳が、ネリーの髪へと突き立てられる。

 ネリーの髪はそれを真っ向から受け止めつつ、髪の柔軟さで衝撃を和らげる。


 攻撃にも有用な『命ノ灯(アラハ・ハール)』であるが、拘束の技としても機能した。


「『停滞した新世界(ヴェラ・ヘルツ)』対象変更」


 アルルの人差し指が、ネリーの髪に触れる。直後、ネリーの髪の長さが元に戻った。


「髪への魔力の供給が……断たれたわ」


「魔力!?」


神々の死体(ホラーチャーム)は魔力で動いているの」


 だからこそ、魔法使いという役職が存在するのだろう。


 神々の死体(ホラーチャーム)持ちは、自身の魔力を能力へと割かねばならないからだ。


「ん? だとすれば、アルルの神々の死体(ホラーチャーム)も、いつか魔力切れで止まるんじゃ」


「どうかしらね」


 ネリーは髪に炎を灯しながら、アルルへと駆け寄って行く。


「それは俺が説明しよう。ミロンくん」


「クーマが?」


「通常、神々の死体(ホラーチャーム)は魔力を消費しないんだ」


「さっきの話と違うよ!?」


「能力拡張というものがある。ネリーさんの能力は、火を放つ髪を自在に操ること、だけだ」


 よく話が見えてこない。


「その能力を行使するだけならば、魔力は消費しない。だが、髪の長さを変えたりするのは、また違うのさ」


「本来なら、髪の長さは操れないの?」


「その通り。けれども、髪を伸ばすこともできる。それをする為には多量の魔力が必要だけどね」


 能力の応用には魔力が必要、ということだ。

 また、とクーマは説明を続ける。


 戦闘中にやって良い行為ではない。説明など、本当は後で良い。しかし、今は敵を逃がす必要がある。


 できるだけ不自然にならない程度には、戦力を減らす必要があった。


「また、単純に威力を底上げする為にも、魔力は使われるそうだよ。ネリーの髪があそこまでの威力を持つのも、魔力を絶えず供給しているからだね」


「なるほど。ちなみに、魔力を回復する方法は?」


「幾つかあるね。一番は死肉を食べることだけど」


 あまり長い間、戦闘を行わないのも問題である。クーマは話を切り、戦場へと向かった。


 ミロンも、魔道書から魔力を引き出す。


「兄様。敵はまだ能力の応用を残しているかもしれないわ。接近はしないように」


 ネリーは能力の応用を行わずに、通常の髪の長さだけで戦闘を行っている。

 それでも、ネリーの髪は長い。


 ネリーはクーマから渡された剣を手にしている。踏み込み、剣を振る。


 だが、アルルは腕で剣を受け止めると、反撃として蹴りを放った。


 ネリーは敢えてかわさない。腹を蹴り抜かれながらも、髪の鞭をアルルへと打ち込んだ。数本の髪の鞭がアルルの肉体を打つが、ダメージはない。


「でも」


 ネリーの髪が勢いを失いながらも、アルルの四肢へと絡みつく。

 後ろへ吹き飛んでいたネリーだが、髪を操り、一気に再びアルルと距離を詰める。


 剣が、アルルの眼球へと突き立っていた。


「無駄だ」


 剣は眼球の表面で完全に停止していた。ネリーは髪を操り、剣底を押し上げる。

 それでも、剣はびくりともしない。


 ネリーはその場から髪を使って飛び退いた。


「行かせて貰うぞ」


 戦闘中、アルルは常に前へと駆け続けていた。

 移動しながらの戦闘である。


 ネリーですら、アルルを足止めすることができない。


「私っちもいるいるよ!」


 アルルの前方に立ち塞がるのはミャウ。

 彼女は魔法の弾幕を放ちながら、軽くジャンプする。安全靴同士をぶつけて、小さな火花を散らす。


「見る、価値もない!」


 アルルは魔法の一切を構わずに駆け抜ける。ミャウによる安全靴のかかと落としが、アルルの顔面に入る。


 ミャウが爆発を生む前に、アルルは彼女の肉体を殴り飛ばした。


 ミャウの肉体がかなりの速度で吹き飛ぶ。けれども、それと同時にアルルが転倒した。


「にしししし! 雑魚は雑魚なりに強いんだよよ!」


 ミャウの手には細いワイヤーが握られていた。魔法も安全靴も、囮に過ぎない。

 本命はワイヤーによる動きの拘束。


「勢いは止められても、そもそも勢いの必要のない拘束には弱いんだよね?」


 ミャウは、ミロンやネリーの戦いを観察して学んでいた。

 ワイヤーに雁字搦めにされたアルルは、苦悶の表情を浮かべる。


「ミャウ! それ以上先に行かせるな。森に入られると、俺たちでは追えない!」


「奇襲される可能性があるからだね」


 クーマがミャウへと告げる。その言葉の意味は、森へ敵が入った時点で終われ、ということだ。


 わざと、敵を森へと誘導せねばならない。


「おーけー!」


 ミャウはワイヤーに刻んだ魔印を発動させる。ただのワイヤーに、岩がコーティングされていく。


 岩のワイヤーが完成する。

 それも、アルルを拘束するには不十分であった。岩のコーティングがアルルの能力により解除される。


 それからワイヤーは、力尽くで強引に突破された。


「また会おう。近いうちにな」


 アルルが地面を蹴る。足がぐちゃりと潰れるが、その代償にアルルの肉体が空へと発射された。


 彼は森の奥へと消えていった。


「ようやく終わったか。帰って、花火さんに報告しないとね」


 クーマが疲れ果てた様子で、その場にだらりと伏せた。


 ミャウやミロン、ネリーでさえも、その場に倒れ込んだ。


 格上との戦闘というのは、実に疲労する。精神的に、である。


「早く帰らないと、怪しまれるかもね。クーマ、急ごう」


 ミロンの提案により、クーマたちはできるだけ早く、第二ドームへと帰還するのであった。

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