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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
崩壊の序章
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マイナス思考とプラス思考

今回から数話、試験的に会話の間にも空間を作ることにしました。

見辛い、などの御意見がございましたら、遠慮なくおっしゃってください!

 重苦しい空気が、ミロンたちの肩にのし掛かる。あまり『創り者』は悩んではいけない。


 寿命もない『創り者』たちは、小さな悩みでも、永遠に積み重なっていく。そして、些細なことから壊れてしまうのだ。

 そうならない為にも、『創り者』は無意味に思い悩んではいけないのである。


 空気の打破には失敗していた。

 ミロンがどうしようかと悩んでいると、思わぬ救いの手が伸ばされた。


 自信なさ気な声が響いた。


「ミロンさーん!」


「エレノア?」


 頭にゴーグルを付けた少女が現れる。

 彼女の名はエレノア・グラムハイド。生命を操る力を持つ『創り者』である。


「あ、あっ! すいませんっす。あたしみたいなちんけな虫がミロンさんの名前をハイテンションで呼んで……」


「名前呼んだだけなのに。凄くマイナス思考だね」


「もうあたしは駄目だ。折角ミロンさんを助けに来たのに、もう終わってるっぽいし」


 間が悪い、とエレノアはその場に座り込んでしまった。


「兄様。言い忘れていたけれど、エレノアはかなり面倒くさいわ」


 知っていた。

 それよりも、気になる言葉があった。助けに来たのに、という言葉である。


「助けに来たって、どういうこと?」


「ギルドに行ったら、受付員さんから依頼が来たんすよ。花火さんがやり過ぎたときに止めに入れ、と」


 ギルドの受付員さんは、相変わらず優秀なようである。

 しかし、少しだけ遅かったが。


「ミロンさんたちは助けに来てくれたのに、あたしは……もう死ぬっす」


 そう言ってから、エレノアは瞳を涙で潤ませた。


「『創り者』は死ねないんでした。……絶望的っす」


「そ、そんな! 死ぬなんて言わないでよ、エレノア。ぼくはきみとも仲良くしていきたいと思ってるのに」


 ミロンが悲しそうに項垂れた。すると、エレノアが興奮し始めた。


「っ!? ミロンさん! 何て……可愛いんすか!」


「か、可愛い?」


 どうして今ので可愛いと言われてしまうのだろうか、とミロンは首を傾げる。

 そういうところが他者の庇護欲を誘うのだと、ミロンはまだ気が付いていない。


「ミロンさん、ミロンさん! 任務! 任務一緒に行きましょう」


 エレノアは高速でミロンの手を取ると、恥ずかしがって顔を赤く染めていた。パッと手を離したかと思うと、再び取る。

 それを何度も繰り返した。


 それを止めたのは、ネリーである。


「許可できないわ。兄様と二人で任務へ行って良いのは、パートナーである私だけだもの」


 ネリーとエレノア。彼女たちは典型的な『創り者』の特性である独占欲と依存がかなり強いようだ。


 ちょっとした修羅場に顔を青褪めさせていると、ツェツィーリヤが場を取りなす。


「おい、二人とも。ミロンが怖がってんぞ。いつも通り。止めてやれ。で、エレノア。今から打ち上げやるから、お前も来るか?」


「あたし何かが行ってもいいんすか?」


「ああ。お前の救出祝いでもあるからな」


 そう、ツェツィーリヤは明るく言う。

 それを聴いて、エレノアは顔に光を灯した。とても嬉しそうに、咲くように笑った。


「嬉しいっす。あたし、打ち上げにお呼ばれするの初めてっすよ!」


「エヴァとは打ち上げもしなかったの?」


 と、ネリーが尋ねる。すると、


「はい! あたし、呼ばれたことないっすから」


 打ち上げが開かれたことがない訳ではなく、呼ばれたことがない。

 いや、エヴァたちはまだ初任務をクリアしていなかった。それ故に、打ち上げをする機会がなかったのだろう。


 訓練中のテストなどで打ち上げが行われなかったに違いない。

 と、ミロンはそう思うことにした。


 顔を興奮で赤らめ始めたエレノアを伴って、彼らはツェツィーリヤ家へと向かう。


「そういえば、アリア。随分大人しいね。どうかしたの?」


「……御主人様に隠し事はできません。はい。自分は今悩んでおります」


 歩きながら、世間話程度に話を振ると、どうやらアリアは悩んでいたらしい。

 ミロンは心持ち、気持ちを引き締めて、彼女の悩みを聞くことにした。


「自分はメイドでございます。御主人様を守ることがお仕事」


「それは違うと思うけど」


「だというのに、自分は何度も負けております。その上、自分はその……実はあまり家事も得意でなく……」


 それは気が付いていた。

 得意不得意の以前に、力が強過ぎる。ゴミ掃除をすれば、却ってゴミが増える始末である。


「自分は一体どうすれば……このままでは御主人様のメイド失格でございます」


「みんなマイナス思考だなぁ」


 ミロンは笑顔を作って、アリアの手を取った。アリアは当然、ミロンの手を握り返さない。潰してしまうからだ。


「別に、今できなくたって良いんだよ。できないなら、できるように努力すれば良いんだ」


「努力する……」


「そう」


 アリアは生まれ持った才能で戦っている。ただ力が強いというだけで、戦えている。

 それはつまり、アリアにはまだまだ強くなれる要素があるということ。


「家事だって、いつかできるようになるかもよ? 力の使い方次第さ」


「……どうしてでございますか? どうして、御主人様はこのようや世界でも、前を向いていられるのですか?」


「ぼくは弱いから。身体も、力も、心も。だから、ぼくは少しでも楽に生きようとしているだけさ」


 情けない、頼りない笑みをミロンは浮かべた。庇護欲を誘う、可愛らしい顔付き。

 彼の優しい雰囲気は、絶望に満ちたこの世において、光となる。蛾が眩い光に憧れるが如く、ミロンという光は『創り者』や機人(オート)を惹きつけた。


「自分は、御主人様のメイドになれて、幸運だったのかもしれません」


 そうして会話をしている間に、ツェツィーリヤ家に到着した。

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