表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
崩壊の序章
48/113

最強と試練

 首を切り落とされたミロンは、崩れ落ちる自身の肉体を見つめて、唖然としていた。

 切断された部分の痛みを感じる間も無く、気が付けば地面に頭が転がっていたのである。


 落ちたミロンの頭をネリーが優しく拾い、携帯食料を無理矢理に食べさせた。


「な、何で急に」

「兄様。霧島花火には話が通じないわ。気を付けて」

「言うの遅いよ!」


 首元を抑えながら、ミロンが吠える。彼の視線は花火へと向いていた。

 花火はニヤニヤ、と口元のみが緩んでいる。冷たい目は相変わらずである。


「貴君が報告に上がっていたミロン・アケディだろう? 新人だが、中々に優秀と聞いているのだが。しかし、見当外れだったな」

「な、何が?」

「貴君は何もわかっていない。戦闘とは、つまり未知の探求に他ならない。それなのに、貴君は私に気圧されるばかりで、一切の思考を行っていなかったが。貴君の眼鏡は飾りかね?」


 ミロンとしては、戦闘はまだ始まっていなかった。準備はしていたが。


「霧島花火」


 と、言われるままのミロンを見兼ねて、ネリーが声を上げた。


「私の兄様を舐めないで」

「いや、そう言われると舐めたくなる」


 言うと、花火はまた足を一歩動かした。それだけで、彼はミロンの前に現れると、そのままミロンの唇に自身の唇を重ね合わせた。


「ん!?」


 慌てて、ミロンは飛び退いた。

 遅かったのだが。


「く、くくく。何て凄いんだ、私! 物理的に舐めるとは。絶好調だな、私よ」


 何を考えているのか、まったくわからない。

 ミロンは怖がりながら、自分の唇を抑える。最悪である。

 同性に唇を奪われた。


「壊すわ」


 ネリーが無表情で『命ノ灯(アラハ・ハール)』を発動させた。紅蓮の髪が、ギルド内で容赦なく振るわれる。


 それに対して、花火の行動は単純だった。

 指を鳴らした。


 同時に、ギルド内にいた人物全員が意識が奪われた。



「おはよう。ミロン・アケディ」


 声を掛けられ、ミロンはようやく意識を取り戻した。服が所々焦げ付いて、身体中に火傷痕が残っている。


 あの一瞬で、ミロンは何をされたのかすらもわからなかった。

 目にも止まらない何が動いて、そして意識を奪われたのである。身体が上手く動かない。


 痺れのようなものが残っている。


「私はとあることを危惧しているのだが、その危惧を解消する為には戦力が必要だ。故に、貴君を試させて貰う」

「試す?」

「そうだ。挨拶時にも試したが、このままではいけない」


 花火は一切をミロンに語らず、ただ歩く。ミロンを肩に担いで、である。


「着いた」


 と、花火は肩に担いだミロンを地面に投げ捨てる。ゴロゴロと、ミロンは地面を転がされた。


 存外、花火は力が強い。

 ミロンは思い出す。アリアが床に埋められていたことを思い出す。


 こと力に於いてはアリアの方が遥かに強い。だが、アリアを一瞬で制圧しただけあり、やはり全てに於いて圧倒的である。


 自称『創り者』最強の男。


「試練を与えよう」

「急ですね」

「生きるとはそういうことだ」


 くくく、とまた花火が笑い出す。顔を手の平で覆い、高笑いをする。その姿はどう見ても悪者であった。


「死体で創られた我々が生きる、とは! どれだけ面白ければ気が済むんだ、私!」

「花火さんの考え方がまったく理解できないんですけれど」

「構わない。さて、では始めようか。試練を」


 花火がナイフを構える。それに応じて、ミロンは魔道書を取り出そうとして、それがないことに気がつく。


「あれれ?」

「ふ、貴君が探しているのは、これか?」

「あ! それぼくの魔道書!」

「今から戦うというのに、敵に武器を渡しておく馬鹿が何処にいる」


(それじゃあ、ぼく戦えないよ!? 今から何を試すのさ!)


 首のチョーカーまでも外されている。狂っているように見えて、花火の行動は徹底されていた。


 花火は見せつけるように、ナイフを振るっている。高速の斬撃は残像を生み、ミロンを威圧する。


「レッスンワン。笑え」


 花火が一歩を踏み込むと、ミロンの背後に出現した。


(また!?)


 まったく見えなかった。ミロンは慌てて逃げようとするが、遅かった。肩にナイフが掠る。


 それだけだったのに、ミロンの腕が切り離される。鋭い痛みがミロンの脳を刺激した。その場に蹲ってしまうミロンの腹を、花火は軽く蹴りつける。


「笑え」


 軽く蹴られた。

 だというのに、ミロンの肉体は数十メートルを飛んでいた。『操作(スポールト・ザカース)』も使われていないのに、だ。


「笑え」


 花火は冷たい瞳で、ミロンを見下す。地面を転がるミロンは、痛みで顔を歪めている。


「苦しみというのは、思考能力を奪う。故に、笑え。苦しい時こそ、笑い飛ばせ。戦闘の基本だが?」

「で、でも」


 腕を切り飛ばされた痛み。腹を蹴られた痛み。無抵抗で地面を転がされる屈辱。

 笑う余裕など、有りはしない。


「……レッスンツー。考えろ」


 そう言うと、花火はナイフを地面に捨てた。


「私は特異体質だ。神々の死体(ホラーチャーム)を二つ保有している」

「な! そんなのズルい」

「戦闘において、そのような言葉は無意味だ。ミロン・アケディ。私の能力を見破ってみろ」


 それこそが、と花火は続ける。冷たい瞳は、何かを言いたげである。


「貴君に課す試練だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ