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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
崩壊の序章
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チームワークと足の兄妹

「いたな」


 今回の任務は単純である。

 残り者の殲滅、のみであった。


 第二ドームの隠蔽は徹底されている。周囲の岩にドーム自体が擬態しているのもそうだし、幻術の神々の死体(ホラーチャーム)持ちが隠してもいる。


 正確なルートを知っている者しか、第二ドームへは辿り着けない。


 だが、残り者たちは本能的に『創り者』を求めるらしい。


 居場所までは掴まれずとも、少しずつ集まってくるのだ。

 そうなれば、任務へ行くときや帰るときに邪魔となる。また、何かの手違いでドームに辿り着く輩が出てくるかもしれない。


 そういう懸念を排除するために時折行われるのが、純粋な残り者退治なのである。


「視認できるだけで五十か。少ないね」

「うんうん。物足りないねえ」


 戯けた調子ではあるが、彼らの目線には明確な殺気が宿されている。プロの目であると、ミロンは即座に理解させられた。


「おにい、四番八十九番」


 クーマの背中を駆けながら、ミャウが支持を出す。そうすると、クーマの四本目の足が振るわれた。

 遠心力によって、クーマの足に下げられていた袋が飛ぶ。


 ミャウはそれをキャッチすると、中から一つのネックレスを取り出した。それを首に掛けつつ、新たに飛んできた袋をキャッチした。


 中から現れたのは、小振りの短剣である。


 そこに刻まれているのは、魔印。


「『喚起ヴィーゾフ・ザカース』だよ」


 無数の岩が喚起された。ミャウはそこでクーマの背中から飛び出した。生み出した岩を足場にして、高速で残り者の群れの中へと飛び込んだ。


 遅れて、ミャウが踏んだ岩が射出される。


 岩は流星となり、残り者たちへと降り注いだ。残り者たちが肉片を撒き散らす。


「にひぃ!」


 空中で器用に身を躍らせながら、ミャウは右の靴と左の靴をぶつけて、硬質な音を奏でる。


 両の安全靴から閃光が迸る。


「近接魔法使いの戦い方だよ。見ておいた方が良い」


 クーマが静かに、ミロンへと指示する。


 ミャウは敵陣のど真ん中に降り立った。そこに恐れはない。どころか、何処か喜悦に満ちた表情を浮かべている。


「さあさあ、来なよ」


 残り者が一斉にミャウへと飛びかかる。ミャウはそれを前へ一歩出ることによりかわした。

 多数対一になるところを前に出ることにより、一時的な一対一の状況を作り出したのだ。


 ミャウがバク転の調子で残り者の顎を蹴り上げる。直後、残り者の頭部が吹き飛んだ。


「今のは!?」

「ミャウの安全靴は魔道具なのさ。そして、攻撃が命中すると同時に『喚起(ヴィーゾフ・ザカース)』と『操作(スポールト・ザカース)』を同時に行っている」


 それによって実現するのが、ミャウの火力だよ。と、クーマは誇らしげに言った。


 蹂躙は続く。


 残り者が振るった腕を短剣で斬り飛ばし、カウンターで蹴りを見舞う。包囲されると、自分の肉体の背後に岩を設置して、それを射出して牽制を行う。


 兎のような動きで、戦場を飛び回り、その度に鮮血が流れていく。


「妹に任せっぱなしも悪いね。俺も行ってくるよ」


 百足が起動する。

 高速で地面を這う。クーマの足が地面に触れる度、採掘機を使っているかのような轟音が響く。


 クーマの百足の足には、スパイクが装着されている。それが地面を穿っているのである。


 やがて、その足が穿つ対象が変更される。


 残り者の頭頂部に、スパイクが突き立った。クーマは構わず、そのまま地面に触れようとする。

 当然、クーマの足は残り者を串刺しにした。


 器用に足を降り、それを抜いていく。クーマが駆けるだけで、戦場は蹂躙されていく。

 巨大な肉体を縦横無尽に駆る姿は、最早龍のように美しい。


 マーガロイア兄妹は、足技を得意としているのかもしれない。


「あっ!」


 剣を持った残り者が現れる。

 焦るミロンを放置して、戦闘は続行されていた。残り者が振り下ろした剣を、ミャウは安全靴で受けていた。


 その背後では、もう一体の残り者がミャウへと剣を振り下ろそうとしていた。


「『喚起(ヴィーゾフ・ザカース)』!」


 慌ててミロンが魔法を発動させるが、遅かった。そして、無意味であった。


 ミャウが前方の残り者を石弾で片付ける。

 ミャウの背後では、クーマの肉体が彼女の小さな身体を庇っていた。


 百足の硬質な肉体は、剣程度では傷一つ付けられずにいた。


 だからこそ、ミャウは振り向くこともしない。理解していたのだ。

 必ず兄が自身の身を守る、と。


 そう、理解していた。信じていたのではなく。


 圧倒的なまでのチームワークであった。

 そのまま、ミャウは見ることもなく、クーマの足から袋を取り出した。


 取り出したのは閃光弾。それが地面に叩きつけられると同時、視覚に頼っていた一部の残り者が動きを停滞させた。

 その隙を逃さず、ミャウは蹴りを叩き込む。


 蹴りの反動で空を舞う。

 そして、ミロンは見る。ミャウの履いている安全靴が崩壊する光景を。


 次の瞬間には別の光景を見せつけられていた。

 クーマの足から飛ばされた袋。中から新たな安全靴を取り出し、空中で器用に履き直すミャウの姿。


 完璧な連携であった。


 ミャウのかかと落としが、残り者を破砕する。


「おにーさんも来なよ、楽しいよ?」

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