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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
第一章 ミロン・アケディが恐れること
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回復の手

「さて、問題はどうやってここから脱出するかね」


 ネリーが何事もなかったかのように続けた。

 エレノアの心の救出には成功したが、ギルドの依頼は彼女の肉体を無事ギルドに届けることであった。


 その為には、まずこの廃工場から脱出せねばならない。


「壁を破壊致しましょうか、御主人様」


 アリアは拳を構えつつ、そうミロンに尋ねる。悪くはない手である。一度外に出てしまえば、後はトラックで撒けるだろう。


「うん、そうしようか」


 ミロンはそう判断した。その判断を伝える為、室外で戦闘を続けているツェツィーリヤに声をかけた。


「わかった。ここは退くか。だが、こんだけの残り者を残しておくのも、なぁ!」


 大砲を口から抜き取り、それで残り者の群れを薙ぎ払う。一瞬、残り者が姿を消すが、すぐさま他の残り者が大挙した。


「ああ。あのベルトコンベアを調べる任務を依頼するんだったね」


 あのベルトコンベアがどのような目的で動かされていたのか。それを調べる為に、ツェツィーリヤは後日ギルドに依頼すると言っていた。

 これだけの残り者を残していけば、後続の負担は計り知れない。


「この任務を受けてんのは、俺ら含めて三チームだ。後続に任せても良いが」


 言いながらも、ツェツィーリヤは銃声を響かせ続けている。

 残り者と戦う方法として、銃弾はそこまで有効ではない。確かに、敵を傷つけることはできる。だが、残り者は肉体が動ければ、動き続けられるのだ。


 銃弾を打ち込んだところで、後方へと吹き飛ぶくらいであった。


「これを排除すれば良いんすか?」


 ここは逃げようか、と決まりかけていた中、言葉を発したのはエレノアであった。

 彼女は両腕に白い光を灯すと、能力を発揮した。


「『捕食の業(リリア・マーゲン)』捕食形態」


 白い光がゆらゆらと四方に霧散する。大量の残り者たちへその光が降り注いで行く。

 すると、みるみる残り者たちの動きが悪くなった。


 その代わりに、エレノアの顔色がどんどんと良くなっていく。これはどういう絡繰であろうか。


「な、何をしてるの?」

「あたしの『捕食の業(リリア・マーゲン)』は、生命力を操る能力っす。ゼロにはできないんすけどね。こうやって」


 残り者から無数の光が溢れ、それがエレノアの元に収束していく。


「あたしは生命力を相手から奪えるんす」


 動きが悪くなった残り者など、恐れるに足りない。ツェツィーリヤの弾丸が残り者たちを貫いていく。


 死にはしない。

 だが、残り者たちはもう動く力も残っていないようだ。


「ずるいな」

「ずるくない神々の死体(ホラーチャーム)なんてないんすよ」


 そう言いつつも、エレノアは残り者たちから大量の生命力を吸収し続ける。こと命がある敵に対して、エレノアは一方的な捕食者となれた。


 これこそが、エヴァチームが大量の残り者退治と『壊れ者』退治を同時に行えると判断される要因となった能力。


 弱った残り者に、ネリーとツェツィーリヤ、アリアがトドメを刺していく。

 一瞬にして、大量の肉片が出来上がっていく。


 ここまでの力があってなお、エヴァのチームは二名を失うこととなった。

 エレノアとて、集めた生命力を回復力に変換できなければ、肉体を失っていたかもしれない。


 ……そのようなことがあり得るのだろうか。


 エレノアの能力を鑑みる限り、今回の任務はそこまで難しいものではないはずである。だというのに、結果は惨敗。


 ミロンは何か作為的なものを感じずにはいられなかった。


 誰かが、何かを仕組んだ。

 そうとしか思えなかった。でなければ、このようなチートとしか呼べない能力を持ってして敗北はあり得ない。


 釈然としないまま、ミロンは掃討戦に加わろうとする。とはいえ、彼は両腕を失っている。

 魔法の発動に教鞭を必要とするミロンは、魔法を使うこともできない。回復には人肉が必要だが、食べたくない。


 渋るミロンの様子に気がつき、エレノアが寄ってきた。彼女は発光する掌で、ミロンの肩に触れた。


 思い出すのは、右腕をあっさりと切断されたときのことである。エレノアの斬れ味は本物だ。

 怖がるミロンを励ますように、エレノアが微笑を浮かべる。


「生命回帰」


 言葉と共に、変化は訪れた。ミロンの腕が生えてきたのである。


 うわっ、とミロンは仰天してその場で尻餅をついた。


「あたしの能力は、回復にも使えるんすよ」

「万能だね」

「ま、仲間は守れなかったんすけどね……」


 エレノアは絶望に満ちた顔になり、その場で膝をついた。


 能力的には頼りになるが、どうやらエレノアは結構面倒臭い人のようであった。


「どうせ、あたしなんて……ミロンさん。もうこの際、一緒に死にませんか? あ、死ねないすよね……」

「げ、元気出して! ね、腕まで治して貰ったし、ぼくにはきみが必要だよ!」


 もう人肉を食べなくても良くなるかもしれないと思うと、自然と心が弾んだ。


「そ、そうすか! ありがとうございます、ミロンさん!」


 顔を赤らめて、エレノアが言う。

 ミロンはエレノアを口説きつつあることに、まだ気が付いていない。


 掃討戦にミロンが加わったことにより、更に殲滅力が増加した。それから数十分の戦闘で、敵軍は壊滅に陥った。

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