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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
第一章 ミロン・アケディが恐れること
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初戦闘

 ギルドより依頼が発注されたと、受付員がツェツィーリヤに告げた。

 ツェツィーリヤは覚悟の硬い表情でそれに応えて、依頼内容をミロンたちに報告した。


「エヴァチームの回収を目的とした任務だ。救出する人数は三。エヴァ、エレノア、ゴルズだ」

「その三人を助ければ良いんだね」

「ああ。行くぞ」


 今回のエヴァ救出チームは三チームの参加となるらしい。

 その内の一つが、ネリーのチームである。


 ネリー、ツェツィーリヤ、アリア、そしてミロンの四人一組となる。

 戦闘能力は申し分ない。ただ、懸念があるとすれば、経験のなさであろう。ネリーはこの間最初の任務を終えたばかりであるし、ミロンは今回が初任務である。

 アリアなどは言うまでもない。


 この中で唯一経験があるのは、サポーターであるツェツィーリヤだけであった。


 ツェツィーリヤが口からトラックを吐き出した。助手席にミロンが座る。


「今回の目的地は?」

「廃工場だ。この近くにある。車を作ってたらしいな」


 アクセルが踏まれて、トラックが発進する。


「本当は迂回しなけりゃなんねぇが。今回はちょっと省くか」


 第二ドームは未だに敵に見つかっていない。


 その理由は多々ある。

 その内の一つが、周囲の地形であった。多数の岩がまるでビルのように建っている。

 それが上手く第二ドームを隠蔽しているのだ。


 もう一つの理由は、幻術を生み出す神々の死体(ホラーチャーム)保有者がいることである。


『創り者』が外に行くときは、敵にアジトがバレないように、道を誤魔化しながら進む。


 しかし、今回の任務は急ぎである。

 無論、道の隠蔽はできる限り行うが、普段よりは簡素なものとなる。


 トラックで飛ばして一時間。

 視界の先に、寂れた施設が入ってきた。如何にも工場、といった風情の建物である。


「あそこだね」


 ミロンは少しだけ声を弾ませる。


「喜んでもらんねぇみたいだぜ」


 と、ツェツィーリヤが窓から外を眺めた。彼の視線は目の前の目的地ではなく、別の場所を向いていた。


 ミロンもそちらを凝視する。

 発見する。


 数体の残り者が、危なげな足取りでこちらを目指している。


「作戦中に背後を取られるとめんどい。今の内に叩いておく」


 ツェツィーリヤは急ブレーキを踏む。思わぬ勢いに競り負けて、ミロンが顔面を窓へと強かに打ちつけた。


「ミロン、アリア。行ってこい」


 アリアが荷台から飛び降りた。そして、そのまま軽い足取りで残り者たちへと向かう。


 残り者の数は五体。それぞれが得物を持つこともなく、ゆっくりとした足取りで近寄ってくる。


「御主人様。作戦に入る前に、実戦経験を積んでおいたほうがよろしいかと」

「う。うん。そ、そそうだよね」


 魔道書のページを捲りつつ、ミロンは助手席から降り立った。


「では、自分が四体を片付けます!」


 言って、アリアは地を蹴った。それだけで、彼女は残り者たちの間合いに侵入する。


「ぁぁ」


 残り者たちが力なく、両の手を振りかざした。

 アリアはそれに構うこともなく、地面を全力で蹴りつけた。地面に亀裂が入り、残り者たちはそれに足を囚われる。


 メイド服が風になびいた。と、同時に、四体の残り者たちの頭が食い千切られていた。

 アリアがその圧倒的なまでの握力で握り締めたのである。頭を失ってなお、残り者たちは動き続ける。

 そこへ、アリアは容赦のない蹴りを放つ。


 肉に風穴が開く。


 四つの肉片が生まれた。


 アリアはまるで軽く家事をこなした、くらいの気安さでミロンの背後へと回った。


「どうぞ、御主人様」


 残る残り者は一体。ふらふら、とこちらへと接近してくる。


「『喚起ヴィーゾフ・ザカース』!」


 ミロンの前方に、石球が出現した。それはミロンの眼前をふよふよと浮遊している。

 その石の弾丸に、教鞭を打ちつけた。

操作スポールト・ザカース』によって、その石弾には強烈な運動エネルギーが加えられる。


 それは真っ直ぐ、飛んでいった。


「外した!?」

「ぁぁぁあああ!」


 残り者が駆け始める。猛烈な勢いで、ミロンとの距離を狭める。


 ミロンは恐怖で頭が真っ白になる。それでも、手は自然と動く。

 二発目を装填して、射出していた。


 石の弾丸が残り者の片腕を捥ぎ取る。

 だが、敵の勢いは止まらない。残り者が蹴りを放った。それはミロンの腹に命中し、彼を空へと吹き飛ばした。


 アリアの悲鳴が響き渡る。


「っ! でも、まだ」


 アリアが悲鳴を上げたことによって、ミロンの思考は落ち着いていた。

 苦痛に表情を歪めつつも、空中で教鞭を振るった。


 顕現するのは十の石弾。

 命中率が悪いのならば、数打ちゃ当たるに頼る他ない。ミロンの判断は迅速であった。


 教鞭を振るい、前進の命令を叩き込む。命令通り、石弾が放たれた。


 数個の弾丸は命中しなかったが、残りの弾丸は全弾命中。残り者の肉を削ぎ落とした。


 しかし、残り者はまだ動き続けている。

 ミロンは地面に落ちていた石ころを拾う。そして、チョーカーから操作魔法を引き出し、腕力を強化した。


 投擲。


 石ころが残り者の足を貫いた。


「まだ魔法の扱いにはなれない、ね」

「上出来よ」


 ミロンが額の汗を拭っていると、トラックの荷台からネリーが評価を下した。

 想像よりも良い評価に、ほっと胸を撫で下ろす。

 ここまで来て不合格であれば、全員が困る結果となっただろう。


 改めて、助手席に戻る。

 隣のツェツィーリヤが破顔した。


「初戦闘、おめでとう。じゃあ、いよいよーー」


 本番である。

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