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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
第一章 ミロン・アケディが恐れること
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魔法の特訓

 さて、道具は揃った。

 後は使用するだけである。ミロンとネリーは魔道具の性能を試すべく、広い場所を探していた。


 魔法の効果を直に確認する必要もあるし、魔法を行使したことのないミロンが練習をするのだ。

 誰もいなく、また壊しても構わない場所が望ましい。


「何処に行く?」

「そうね。……ツェツィーリヤの家に行きましょうか」

「え、どうしてここでツェツィーリヤが出てくるの?」

「彼の家は広いわ。それに壊しても文句は言わない」

「や、言うと思うけど」


 渋々ながらミロンはネリーの背後をついていく。

 無論、ネリーの言を信じた訳ではない。家を壊されれば、ツェツィーリヤは必ず怒ることであろう。


 しかし、同時に、ツェツィーリヤならば、良い感じにかわせるだろうとも思えた。


 ツェツィーリヤの屋敷はすぐに目に入ってきた。周囲が石造りの家だというのに、この家だけが木造であった。

 かなりの広さである。


 ネリーは特に遠慮することもなく、屋敷に侵入した。その姿には、まったくの申し訳ない感が見られない。


「ほ、本当に大丈夫なの?」

「ええ」

「ぼくは果てしなく不安なんだけど」

「問題ないわ。彼は何かあればうちに来ても良いと言ってくれたもの」


 絶対に意味が違う、という言葉をミロンは呑み込んだ。ツェツィーリヤがそのような言葉を述べた真意はわからぬが、あまり深く関わっても意味がない。

 申し訳ないが、今は人命が第一である。


 ということで、長い廊下を抜けて道場のような場所に到着した。空手家や剣道家が修行をやっていそうな場所である。


「兄様、構えて」


 言葉の直後、ネリーが拳を放ってきた。ミロンはそれをかわすことができず、顔面を殴打される。鼻が折れ、血液が流れ出てくる。


「な、なにふるのさ!」

「私は教えるのが得意じゃない。ので、実戦形式で、身体に覚えて貰うわ」

「魔法ってそんなので覚えられるの?」

「わからないわ」

「おい!」


 ミロンは慌てて、まずは理論を教えてくれと請うた。ネリーが曖昧に頷く。


「えっと。……魔法には二つの段階がある、わ。一つ目が『喚起(ヴィーゾフ・ザカース)』」


喚起(ヴィーゾフ・ザカース)』は魔法の姿形を決める為の行動である。

 例えば、水球を生み出す。というような行為のことを指す。


「続いて、『操作(スポールト・ザカース)』よ」


操作(スポールト・ザカース)』とは、言い換えるならば運動エネルギーである。

 ただ物体を生み出すだけでは、魔法足り得ない。それを動かす必要がある。

 水球を前進させたり、後退させたりは全て『操作(スポールト・ザカース)』で行うのだ。


「つまり、『喚起(ヴィーゾフ・ザカース)』が拳銃に弾丸を込める行為で、『操作(ヴィーゾフ・ザカース)』が銃弾を放つ行為なんだね?」

「そうね」

「で、それの違いって何? どうやって分けてるの?」

「引き出す感じと押し出す感じ」


 ミロンは首を捻るが、やってみようという気になった。魔道書のページを捲り、「えい」と掛け声を出す。

 何も起こらない。


「あ、そうか。『喚起(ヴィーゾフ・ザカース)』!」


 何も起こらない。

 あるのはただ静寂のみ。


「引き出す感じよ」


 と、ネリーが懐から教鞭を取り出してアドバイスを始めた。けれども、ミロンには理解できない。


「体内の魔力を二つに分けるの。で、その魔力を餌にして、魔道具から魔法を引き出すの」

「な、何言ってんの!?」

「早く」

「それにさ。喚起と操作で、二回魔法を使うんだよね? でも、魔道書は一ページにつき一回しか使えないんじゃあ」


 ミロンの質問に対して、ネリーはふふんっと胸を張った。無表情にドヤ顔を配合して、偉そうにミロンを見つめる。


「ページには裏と表があるのよ」


 言われてから、ミロンはページを見る。表には赤い魔印。裏には白の魔印がある。


 表の赤い魔印で喚起、裏の白い魔印で操作をしろ、ということなのであろう。ミロンは納得して、魔法を引き出そうとする。


 無理であった。


「えっと」


 ネリーの言葉を思い出す。体内の魔力を二つに分ける。

 瞳を閉じ、ゆっくりと思考する。魔力が何かはわからない。それでも、何となく思考する。


 気分的には、体内の血液を半分に割る印象。


 そして、右半身の血液を引き出し、それと魔道書を混ぜる感覚。

 目を見開き、叫ぶ。


「『喚起(ヴィーゾフ・ザカース)』!」


 何も起こらなかった。


「何でなのさ!」


 魔道書を地面に叩き付ける。


「兄様、落ち着いて」


 教鞭でミロンの頬を突くネリー・ナイトラウ。比較的温厚なミロンも、苛立ちを感じた。

 無表情でネリーから教鞭を奪い取った。


「や、め、て」

「ごめんなさい」


 むー、と唸りながら魔道書を拾い直す。


「これをさ。どうやって引き出すのさ」


 教鞭でページを指してから、それをネリーへと突き付ける。

 そして、


「……何か出た!」


 炎が教鞭の先に顕現していた。それもただの炎ではない。尋常ではない程の火力である。教鞭の先から現れた炎は、既にツェツィーリヤ家の道場の天井を燃やし始めていた。


「う、うわ」

「兄様、炎を飛ばしてみて」


 まったく動じずに、ネリーが更なる指示を飛ばす。思い切って、ミロンは教鞭を前へと振るう。

 体内の血液のもう半分を絞り出すイメージ。


 そして、叫ぶ。


操作(スポールト・ザカース)!』


 炎が前進した。

 その速度は術者であるミロンですらも捉えきれない。炎は一瞬でツェツィーリヤ家の壁を焼却してしまった。

 巨大な穴が開く。


 ミロンの頬を汗が伝っていった。

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