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かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
第一章 ミロン・アケディが恐れること
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ギルド

 ツェツィーリヤが大口を開いて、トラックを丸呑みにする。というよりも、ツェツィーリヤの唇がトラックに触れた瞬間、忽然と消失したのである。


 これがツェツィーリヤの能力。

自作する災厄の匣(ヴェラ・ムント)』である。


 ミロンが感心の声を上げる中、ネリーが頭を下げる。


「助かったわ」

「はっ、気にすんな。チームだろ。これからはミロンもだな」

「え?」


 勝手にチームにされたことにより、ミロンが動揺を露わにした。


「何驚いてんだよ?」

「ぼく、きみたちとチームを組むことが確定しているの?」

「ああ。ネリーと俺はギリギリ基準をクリアしてないしな」


『創り者』たちは基本的に三人一組である。神々の死体(ホラーチャーム)持ちの戦闘員、サポーター、そして……魔法使い。


 ネリーのチームには魔法使いが存在しない。


「でも、ぼく魔法なんて……」

「ああ。なるほどな。大丈夫だって! 簡単簡単」


 ツェツィーリヤはそう朗らかに笑うが、ミロンはとても不安であった。


「ま、取り敢えず、報告だけしとこうぜ」

「そうね」


 何処かへ報告に行くらしい。

 ネリーとツェツィーリヤは迷いのない足取りで歩き始める。

 アリアも、初めて来ただろうに、その足取りに戸惑い一つ存在しない。ただ静かに、ミロンの後ろを歩く。


「凄いなあ。第一ドームとは大違いだ」


 第一ドーム内は、まるでこの世の終わりのようであった。家屋は老朽化を極め、ガラスは割れていた。

 道という道には腐敗死体が転がっていた。

 血に汚れていない壁など存在しなかった。


 一方で、第二ドーム内は想像以上に豊かであった。

 西洋風の住居は実に優雅で、壁には汚れ一つ存在しない。道路はきちんと整備されていて、煉瓦の道を靴が叩く度、軽快な音が耳に入ってくる。


「人も多いし」


 全員が『創り者』なのかは不明だが、沢山の人々がドーム内を歩いている。

 外部の腐敗した雰囲気とは一変して、明るい印象をミロンに与えてくる。


 寸刻きょろきょろと景観を鑑賞していたミロンであるが、前を歩く二人の動きと連動してその足取りを停止させた。


「ここがギルドだ」


 ツェツィーリヤが見せびらかすかのように、両腕を広げる。周囲の目が、そのような彼の様子をうっとりと眺める。

 美少女のかわいらしい行動にしか見えないのであろう。


 本人はそれに気が付かず、「決まった」とでも言いたげにドヤ顔であった。


「で、ギルドって何なのさ?」


 ツェツィーリヤは無視して、ミロンはネリーに問う。


「会社みたいなもの。ここで任務を貰う」

「ほうほう。じゃあ、ぼくはこのギルドの依頼で助けられた訳だね?」

「そうね」


 ミロンは無意識のうちに、ギルドへと頭を下げていた。ミロンが今こうしていられるのも、全てはギルドのお陰である。


「じゃあ、入りましょう」


 ネリーに先導され、ミロンたちは施設内に入った。


 ギルド内は絢爛豪華であった。

 まず目に入るのがシャンデリア。床には赤の絨毯が引かれており、まるで一流ホテルのロビーのようである。


 最高の踏み心地である絨毯の上を歩けば、ここを王宮と勘違いする者も現れるだろう。


 受付らしき場所は大理石製。

 壁には肖像画や絵画が飾ってある。


「こ、ここ?」


 ミロンは臆する。

 場違いではないかと、怖じ気付いたのである。顔色を悪くしていくミロンを見かねてか、アリアがそっと耳打ちする。


「御主人様。最高でございます」

「何がさ!?」


 アリアとしては場違いではなく、寧ろよく溶け込んでいるということを伝えたかったのだろうが、よくわからない表現はミロンを更に混乱させた。


「何してんだ? 早く来いよ、ミロン」


 ツェツィーリヤの声で、はっと我に返って、ミロンは彼の元に駆け寄った。


 受付に行き、任務の達成を報告する。


「任務完了。『創り者』ミロン・アケディ並びに機人オートアリアを回収」

「お疲れ様です」


 ネリーの端的な報告に、受付員が愛想笑いを浮かべる。受付員は愛想笑いを浮かべたまま、


「初任務ですのに、回収依頼を完遂させるとは。恐れ入りました」


 初任務! とミロンが声を荒らげた。

 初めての任務だったというのに、ネリーは実に慣れた様子で戦闘していた。そのことにびっくりしてしまったのである。


 ネリーは無言で、胸を張る。

 その隣では、ツェツィーリヤがしかめ面を浮かべていた。受付をバンっと乱暴に叩き上げて、受付員を睨む。


「てか、あれはどういうことだよ。あんなに大量の残り者がいるなんて、聴いてねえぞ」

「大量の残り者?」

「ああ。あれは数万レベルでいたぞ。逃げ切るのに俺がどんだけ苦労したか」


 ミロンは、トラックが不自然な程にカーブを繰り返していたことを思い出す。


「数万、ですか。おそらく、エヴァチームの失敗が原因でしょうね」

「エヴァたちがミスったのか? で、どうなった? 何人帰ってきた?」

「今の所、ゼロです。彼女たちも初任務組でした。とある工場内の『壊れ者』退治任務でしたが、任務終了予定時間になっても帰還しておりません」


 ミロンは展開によくついていけていないが、一つだけ理解できた。あの残り者の群れは、誰かが任務を失敗してしまった結果なのであると。


「ちっ。俺が行く。まだ残ってるかも知れねえ」

「それは遠慮ください。後日、ギルドが正式に任務として発注致します」

「遅えよ!」

「敵の規模が未知数です。今戦力を送り込んでも無駄に戦力を減らすだけ。貴方はそのようなことも師匠さんから習っていませんので?」


 師匠、という言葉を出された瞬間、ツェツィーリヤの表情が強張った。拳を力の限り握り締めている。


「わかった。だが、任務が発注されたら即言え。俺らが行く。良いな?」

「了解です」


 ツェツィーリヤが舌打ちを漏らし、受付員に背を向けた。

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