表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かつてゲームの大魔王  作者: 一崎
第一章 ミロン・アケディが恐れること
16/113

大型残り者

 メイドの機人オートであるアリアを仲間に迎え入れ、取り敢えずミロンたちは休むことを選んだ。


 体力的な問題は皆無に近しい。


 ミロンもアリアによって負わされた傷を回復させる為に、寝ている間に人肉を食べさせられた。そのお陰で、今は何と瞳まで回復していた。


 アリアは意識を失っていたミロンたちを運ぶ際、力加減を誤って、肉体を引き千切ってしまったらしい。

 欠陥品たる所以である。


 ということで、ミロンたちの体力は十全といえた。一方で、精神的疲労は抜け切っていない。


 ネリーはそれ程でもないだろうが、ミロンは最近の急展開により、心が疲弊していた。

 心の疲弊は致命的なミスに繋がるし、何よりも心が壊れてしまえば詰みである。


 身体能力的に優れている『創り者』といえども、休憩は必要なのだ。


 ネリーは眠いと言って、寝室へと戻った。

 ミロンはアリアの奉仕欲を満たす為、苦笑と共にティータイムを開始していた。


「ありがとう、アリア」

「これが自分の生きがいですから」


 声音には僅かな熱が篭っていた。


「勿体無いなぁ、ネリー。こんなに美味しいのにね。寝ちゃうなんて」

「自分は御主人様にお仕えできれば幸せなので。雌犬(ネリー様)はどうでも良いです」

「あれれ? おかしいなぁ。普通に名前呼んだ筈なのに、何処と無く毒を感じたんだけど……」


 アリアの口調に違和感を覚えつつも、ミロンはお茶を啜った。


 ゆっくりとした時間が流れた。


 久し振りに訪れる平穏に、ミロンは思わずウトウトとしてしまう。かくんかくん、と頭が舟を漕ぐ。


 そのような主人の姿を見て、アリアは頬を緩めた。


 このまま、寝てしまうのかと思わせるくらい、ミロンは頭を揺らしていた。


 だが、


「……がっ。な、い痛い」


 突如、左目を抑えて、悲鳴を上げた。


「御主人様?」


 アリアはミロンへと駆け寄り、彼の様子を伺う。尋常ではない痛がりようであった。


 通常『創り者』はある程度痛みに耐性がある。完全な耐性は持っていないが、高が目に痛みが走った程度の反応ではない。


「この痛み。アリア。ネリーを起こしてきて。多分、何か来る!」


 ミロンの指示は一手遅かった。


 天地が翻ったのかと錯覚する程の揺れ。アリアは窓へと向かい、所々が破けているカーテンを引き千切った。


 そして、目撃する。


「大型の残り者です、御主人様」


 窓から足が見えた。


 直後、頭上に只ならぬプレッシャーを感じた。ミロンは呆然と天井を見つめる。


 見かねて、アリアがミロンを突き飛ばした。彼女の咄嗟の判断は正解であった。

 ミロンがいた位置に、巨大な剣が振り落とされたのである。


「ぐあ」


 アリアの怪力によって、ミロンは吹き飛ばされていた。木造の壁を自らの肉体で突き破り、そして、地面を無様に転がる。


「アリア!」


 ようやく止まったとき、ミロンは機人オートの少女の名を呼んだ。


 果たして、アリアはそこにいた。

 巨大な、電信柱のような剣。その斬撃を、アリアは自らの肩で受け止めていた。


 紫電が迸り、コードや部品が飛び出ていた。

 その光景を見て、ミロンはようやくアリアがロボットなのだと本当に理解した。


 しかし、幾らロボットといえど、彼女はもうミロンの仲間である。であれば、見捨てられる筈もない。


 ミロンはアリアへと駆け寄った。


「来ないでください、御主人様」


 ノイズの走る声で、アリアが制止の声を投げかけた。


「どうしてさ!」


 アリアの肩では、未だに彼女の肉体を両断せんと火花が散っている。放置すれば、近い将来、必ず両断されてしまうだろう。


「御主人様は見たところ、戦闘能力を保有しておられません。この残り者を止めることは不可能かと」

「また……ぼくは。力がない、から」


 ミロンの言葉を待っていたかのように、剣へ込められる力が増した。

 そして、とうとうアリアの肩を剣が通った。ぶちぶちと、コードが千切れる音が耳にまで届いた。


「アリア!」

「問題ありません」


 と、ミロンの心配をよそに淡白な声をアリアが返してくる。片腕が断裂されたというのに、アリアは実に涼しい顔をしている。痛覚がないのだろう。


 声には僅かなノイズが混じるものの、普通に駆動していた。小走りで、アリアがミロンの元へと駆け寄ってくる。


雌豚(ネリー様)と分断されたようでございます。しかし、御主人様には自分が仕えていますので、御安心を」

「うん、何かネリーの呼び方に悪意を感じる」

「はい」

「認めるんだ!?」

「御主人様の御言葉は絶対ですので」


 と、軽口を叩き合う一人と一体であったが、その表情は真剣そのものである。

 まだ、敵の間合いからは脱せていない。


 既に、彼らは屋外にいた。

 だからこそ、わかる。


「大きい」


 身長は三階建ての家よりも大きい。手には、電信柱程の大きさの剣を握っている。眼は顔の中央に無数に生えている。

 ギョロリ、と無数の瞳がミロンを捉える。


「うーうーうー」


 サイレンのような音を口遊みながら、巨人がミロンへと剣を振り下ろそうとする。

 ミロンは咄嗟に、右へと跳ぶ。地面に剣が突き立てられる。


 その剣はミロンを破壊することはなかったが、代わりに石礫を彼へとぶつけてくる。

 悲鳴を上げて、ミロンは地面を転がった。


 そのような彼の姿を眼にして、怒りに打ち震える存在が一体。


「てめえ。あんまふざけてっとぶっ殺すぞ! ……でございます」


 一体のメイドがブチ切れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ