五.
――ラヴェンナ、ぼくはもう吹かないよ。
かなしみの笛しか、吹かない。
*** *** ***
「きぃるどぉー こっち、こっちだよお」
「あはは、ラヴェンナ。それだとすぐにつかまえられるよ」
「ぜえったい、だいじょうぶ。だってちゃんと、れんしゅうしたもの」
「えっれんしゅう? 追いかけっこの?」
「そうよ。おとうさまに、てつだっていただいたの」
「『おとうさまに』って……。あはは、よくやるね、ラヴェンナ。一国の王をつかまえてさ」
「おとうさまは、わたしをつかまえられなかったわ。だから、きーるど にも、ぜったいにむり」
「うーん、きみの『おとうさま』は、お姫さまにはとってもよわいからなあ……」
「いいからっ。はやく、そこにたって。わたしが、いいっていうまで、うごいちゃだめだからねっ」
「……ほら。つかまえた」
「ああっ! ずっるーい。ずるいわ、きーるどっ!」
「あはは、ごめんラヴェンナ……って、うわぁ! ご、ごめん。ごめんよ。あやまるから、なかないでよ」
「ゆ、ゆるしてあげないわっ。ふ、ふえをふいてくれるまで、ゆるしてあげないっ!」
「じゃあ、笛をふくから、なみだをとめてね」
――きーるど のね、ふえのおと、だいすき
とっても きれい
とっても あたたかい
あしたも、あそぼう
また、あしたも
ふえをふいてね
ずっとずっと――――