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二.
やわらかい笑顔のひとだった。春の陽のように。
*** *** ***
目覚めて二日が経った。
こちらに来るまでの二日間も、わたしはずっと眠り続けていたらしい。
気がつけば見知らぬ土地の城で、見知らぬ者たちに囲まれていた。
肌掛けを纏って、緩やかに庭園に向かって歩を進める。陽が落ちる頃に戻れば良いだろう。それまではまだ幾分か暖かいから。
ぱし、ぱしと、踏むたびに乾いた音の鳴る落ち葉を見つめた。祖国――いや、故国でも――幼い頃、季節になると落ち葉を踏んで毎年遊んだ。いつの頃からか、それはしなくなったけれど。それでも、いつも傍らにいてくれたひとを思いながら季節を眺めた。
いつしか無心で落ち葉を鳴らしていた。
ひゅぅ、と風が鳴る。
落ち葉がからからと舞う。肌掛けが重たそうにさらわれた。
「あっ」
指の間を風が通り抜ける。
落ち葉が、舞う。
からから
からから
風が鳴る。
足下の葉も、すべてさらって。
落ち葉は舞う。
ゆっくりとだれかが肌掛けを拾う。
――思い出は、とまってくれるだろうか。
そこに佇むひとが、あなたであったならば。