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落日の音  作者: もぃもぃ
2/22

一.

あたたかい……。

だれか、手を握ってくれているの?



ああ、そうか。

かえってきてくれたのね。

また、あそぼう。

幼いあの頃のように――







「……キールド」


「お目覚めでございますか」


はっとして瞬いた。

目に映るのは、穏やかそうな初老の男。少しの笑みを湛えて、わたしを見下ろしている。


「ご気分はいかかでございますか」

なだめるような声だった。


「すこし……だるい……」

先ほど覚醒したはずなのに、いらえは存外頼りないものだった。


「左様でございますか。どこかお痛みはございますか」


いいえ、と応えるかわりにふるふると首をふった。


「脈は安定なさってございます。長の行程のお疲れかと存じます。今少しお休みになれば、すぐにもご回復あそばされましょう」


「……脈?」

ならば、先ほどの温もりはこのかたのものだったのね。ぼんやりとそう思っていたのを、穏やかな声が遮った。


「恐れながら、先ほど御身をお清め申し上げたよしにて。……何事も、どうかご案じ召されませぬよう」



……何事も……?

その刹那、今度こそ鮮烈に目覚めた。

「――――っっ!!」


勢いよく起き上がろうとして、ひどく焦った様子の声に止められた。


「なりませぬ! 突然にこのようなことを申し上げることをお許しください。ですが、どうかお心安らかに。なんのご心配も要りませぬ」



そんな……。

そんなこと……。


ひゅぅ、と喉が鳴る。

くるしい。

胸が、くるしい。



ああ、そうか。


助かったのだ、わたしは。

助かって、しまったのだ――――。


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