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序
争乱の音が遠くにきこえる。
なにかが燃える音も。
でもとおい。
ずっととおい。
うっすらと目をあける。
霞む天井。亀裂の入った壁。倒れた椅子。散らばった硝子。砂だらけの床。抜き身の短剣。
ゆっくりと身を起こす。
髪や頬についた砂が、パラパラと零れた。
ゆるゆると短剣に手を伸ばす。力が入らずに、また床に崩れた。
とっさに腹をかばった。腹に片手をあて、ずるずると這いつくばって進む。
長い衣が無惨にも破ける。
わたしは なにが したいのだろう
息が上がる。
夢中で手を伸ばす。
勢いのままに剣の柄を掴んだ、そのとき――
「なにをしている」
矢を射るような鋭い声が、響いた。