軽さと魅力
うん?この声は。
前に2泊同じ部屋でカーテン越しに過ごした声だ。
今回も2泊3日らしく、女性は業務で促した。
どこどこに行ってください
彼は
OK!とすぐに応じ、間髪入れずに私が初めて聞くセリフのような言葉、その場所に相応しくない言葉を耳にする。
「一緒に行こっ」
こんな返事の仕方もあるんだ、驚いた。
私は常にハイとか、わかりました、すぐ行きますとかしか言わない。
程なくして検査を終え、たまたま部屋の出入りで顔が合った。
私は気まずいのでとりあえず会釈して、彼を見た。見覚えのある顔だ。
身長180センチはありそうだ、175センチの私より高い。
肩まで伸びている長い金髪
お久しぶりっす!
また、一緒っすね!
うわ〜軽い、今でいうチャラいのがこれなのか?
61歳の私と20代に見える彼とのギャップか?
私はつい湧き出る言葉のように
どこからきたの?と尋ねてしまった。
横浜っす、と彼は答えた。
私は4人部屋の隅の方でカーテンを閉じながらベッドに腰掛けて小さな声で喋りかけたのだ。
彼はカーテンの下から俗にいうヤンキー坐りのまま、カニ歩きでやってきた。
痩せているがにこやかに喋りかけてきた。
待機者である私は、術前、術後の体験談などを彼に教えてもらう。
私は自分の主治医からいつも心に思う移植後に1番忘れてはならないことを彼に伝えてみる。
「2つの命だ大切にしないと」
彼は移植済み、私は待機。
今回、彼は明日カテーテル検査。前日に入院。最初に聞こえたのは看護師から検査前の検査(心電図やレントゲン等)を促されていたのである。
彼は病室の床に膝を着き揃えて
そうっすね、お医者さまからも常に言われてますと返事が帰ってきた。
そして手術痕まで見せてくれた。
その時、左手の薬指に指輪が。
結婚してるの?
ハイ、2児のパパです。
Vサイン、オーラさえ感じさせてもらえた。