魔法のコンパス
【しいなここみ様の「瞬発力企画」「コンパス」になります】
私の魔法は想像を具現化する。
私はまん丸な月が好き。
いつかまん丸の月を作りたい。
◯
魔法のほうきで空を飛ぶ話を聞いたことがある。
私にはできない。
空を飛ぶことをリアルに想像することができないのと、運動が苦手な私はほうきに乗ってバランスが取れないからだ。
魔法とは人それぞれ、向き不向きがあるし、今の時代無くても生きていけるから、魔法はどんどん減っている。
数年後には魔法はなくなると言われている。
私の魔法は無から有を産む魔法。
ただ本物の有ではなく、本物みたいな有を産む魔法だ。
魔法のコンパスで円を描く、大きい円の中に小さい円を。
ドーナツを想像して、色、味、形、重さ、におい、食感…次々と想像を形にしていく。
紙に書いた円はゆっくり浮き上がり、透明なドーナツのようなものがぼんやりと現れる。
そして、それはゆっくりとドーナツに変化した。
ただこのドーナツは本物のようなもの。
色、味、形、重さ、におい、食感はドーナツでもそれは空気のようなもの。
食べても栄養がない。
そう、私の魔法はただの幻なのだ。
大きい紙に大きい円を書いて、フラフープを作ったことがあった。
しかし、そのフラフープで遊べたのは5分だった。
タイムリミット5分の魔法。
まん丸の月を作りたいという夢は遠いな…
◯◯
大きくなって私は気がついた。
この世に1つしかないものは作れない。
月は作れない。
月が2つある想像が全くできない私がいた。
悲しいような悔しいような名前のわからない気持ちでいっぱいになった。
家には帰らず、公園のベンチに座り込む。
目の前にシャボン玉がたくさん飛んできた。
沈む夕日に照らされて、シャボン玉は消えていった。
儚く綺麗だなと思った。
まん丸の月より綺麗だと思った。
◯◯◯
数年後。
ほとんどの魔法はこの世界から消えていった。
私は魔法のコンパスでシャボン玉をたくさん作っている。
シャボン玉は5分後には消えてしまうがそれがいいと思っている。
◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯
「みてみて〜すごい数のシャボン玉!綺麗だね」
「ママー、シャボン玉スゴイ」
「素敵な景色ね」
葬送のフリーレンと魔女の宅急便に今ハマっている。
魔法がでてくるものを書きたかったので満足(*´-`)