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王都の片田舎、馬車すらあまり通らない、行商もすぐ近くにはない所にその家はある。
森が近くにあり、自然に許された形でひっそりとただずんでいる。
そこには青みがかったシルクの様な美しい髪を靡かせる少女と、飄々としている変わり者の師匠が居る。
煙突があって、レンガ造りで、工房の為に家の間取りの大半を工房に当てている家だ。
「あ」
間の抜けた声は師匠のもの。
"あ"と師匠が言う時はろくでもない。
少女は商品の拭き掃除を、する手を止めて体の向きを変えた。
優雅な仕草で、丁寧に雑巾をバケツに入れて、律儀にハンカチで手を拭く。
紙を濡らさない為に欠かさずやっている事だが、師匠はそんなことお構い無しだったので、その手の仕事は無理やり奪った。
ここに来て、随分経つ。世話にもなってる。
でも、それはソレ。これはコレ。
「……なんですか、そのマイナスな現象を前にした人間のリアクションは。はあ、それで、何をやらかしたんですか?謝るくらいは一緒にしてあげますから」
本当に、偉大な人なのか怪しい時が多々ある様に見受けられますね、私の師匠は。
本当に歳上の成人男性なのかと呆れる。もっとしっかりして欲しいと思いながらも、仕方ない人と、甘やかす側面が見れる。
呆れた物言いとは裏腹に優しい言い方。
もはや日課となっている師匠の作るよく分からない商品の納品書を作る手を止めて、優雅さのある綺麗な姿勢、綺麗な歩き方で、師匠の方へ歩く。