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第十六話:そういうジンクスとかってあるよね。

 自分の部屋のドアを、本日何回目かわからない開封の儀して、中にはいる。

 ドアを開けるとそこは私の部屋じゃないような気がしてしまうその部屋。


「そういえば、部屋に入るの嫌がっとたけど、もうええの?」

「まぁ…はい。」

 頭をかきながら、頷き、そのまま靴を脱いで上がる。

「パサ!」

「パサ!」

 ただいまとかなんとか、そんな挨拶なのだろうか。ケセパサ達七匹がひとこと言いつつ私に続いてくる。


 さらにそれに続いて、ニコ。

 そして若干遠慮しつつサトミさん達、ミサキちゃんが続く。

「お邪魔しまーす。」

「ごめんください…。」

「邪魔する!」

「やめてください。」

 アカネちゃんの不吉な言葉にしっかりつっこんで、私は3人をリビングに案内する。


「なんや綺麗…やん…か?」

 考えてみれば、ニコ以外の三人は、この部屋がどういった経緯でどうなったかを知らない。

 つまり元がゴミ屋敷だったことも、リビングになぜ灰の山があるかも…。

「浄化魔法の跡ですね?」

「ニコちゃんがやったん?」

 サトミさんが笑顔で尋ねるけれども、その細い目は笑ってない。

 ミサキちゃんの顔面を掴んだあの時と同じ表情だ。

 どうやら、サトミさんは日常生活で魔法を使うことに特に敏感な人らしい。


「いや、ハクアさんが…。」

「はぁ…なるほど?ハクア、ぶっ倒れんかった?」

「はい。そういえば、なんでなんですか?」

 今度は私が尋ねる。


「ううん…詳しい説明はめんどくさいんやけど、要はハクアは<狐の珠>がないんよ。」

「?」

「そないなクエスチョンマークみたいな顔せぇへんでも…なんちゅうか、狐の種族の幻獣がみんな持っとる魔力のもと、みたいなもんかな…。」

「それがないから、魔法を使うと魔力切れで倒れる?」


「そうやな。魔法の使い方もそれぞれやけど、ハクアは天狐族やから、本来は自分の魔力だけで膨大で、魔法を何度も使っても倒れるようなことはない。でも、あの子は珠がある時みたいな魔法の打ち方を今でもしてまうせいで、倒れるんよな。

 ちゅうか本来は、珠がないないと生きるのも危ういんやけど…。」


 なんだかまた物騒なセリフが聞こえた気がしたけれども、それは一旦おいておくとして。

「じゃあ、魔法少女でも、魔法は連発できない?」

「せやなぁ…。」

 なるほど、だからニコは魔法を使いたがらなかった?

 時間停止なんて明らかに魔力使いそうな魔法を使ったせいで、ドラゴン戦にも参加できなかったのだろうか?

「あはは…。そうですねー。」

 なんだか違いそうだけど。

 やっぱりニコはダメな子だったか。

 ダメな子ほど可愛い。

「だ、ダメじゃないですもん!」

 ニコが両手の握り拳を胸の前に置いたまま、上目遣いで悔しそうにこちらを見る。

 何それ本当に可愛い。

 というか、なんだか怒りの琴線のわかりにくい子だ…。


 そんな私たちの会話を、もはや慣れたものでも見るように、無視する三人。

「あ、なるほど!だから第一種の契約なんですね!?」

 と、ニコが突然気付いたようにいう。

「どういうこと?」

「そうや。」

 私の問いと、サトミさんの回答が被った。

「ごめんなさい。」

「え?いやえぇんやけど。そう。第二種と違うて、第一種は魔力の共有も行われるんや。せやから、コクウとシノブとハクア三人の魔力が共有されることで、ハクアは死なんで済んどるわけ…。」

「先輩は、そうやって行きあった多くの幻獣や妖魔や精霊を封じたり滅したり見殺しにせずに助けてきました。それを私は引き継いでるんです!」


 情報量が多い説明だったが、なるほど。

 今の姿からは残念ながらあまり想像できないのだが、シノブが死にかけのハクアを助けた?

 ミサキちゃんが今やっていることも、シノブのやっていたことと同じ?

 じゃあケセパサたちに興味を持っているようだったのも、案外その頃の血が騒いだから?


 と、その時だった。

 壁の方から、何かの叫び声のような音が聞こえた。

 先ほどまでいたシノブの部屋の方角からである。


 流石にこちらのリビングから向こうの部屋まで、私の寝室一部屋を挟んでいるので何をいっているかまでは聞き取れなかったが。

 逆にいうと壁越しでもないのにこの音量。

 何を言い争っているのだろう?


「またやっとる…。」

「だねん。」

 サトミさんの言葉に、アカネちゃんがわざとらしく肩をすくめる。

「何を…?」

「チサトとシノブは昔から仲が悪い。なんやわからんんけど、ソリが合わんのやろうな?」

「なるほど…。」

 またも響く声、今度はハクアちゃんか。

 なんにせよ、サトミさんがこちら側に来たがった理由がなんとなくわかった気がした。

〜次回予告〜

サトミ:「しかし、そうわからん状態よな?改めて…。」

ミサキ:「そうですね。シノブ先輩と再会できたのも良かったですよ!」

サトミ:「ほんまにあんたら仲えぇよな?」

カナコ:「うわぁ!またなんの脈絡もなく三人!?」

サトミ:「そない驚かんでも…。」

カナコ:「というか、チサトとシノブってなんで仲悪いんですか?」

ミサキ:「そういえば…?」

サトミ:「まぁ研修時代にちょっとな?」

カナコ:「とはいえ次回は『第十七話:何事もとにかく掃除から!』をお送りします。」

サトミ:「また安直なタイトルやなぁ。」

ミサキ:「お楽しみに!」

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