第八話:彼女が颯爽と駆けつける理由!
「ところで。」
しばらくの沈黙ののち、ミサキちゃんの方から話題を変える。
「まさか先輩と角谷さんが一緒にいるなんて、メールに書いてあったんですが、それの方が驚きましたよ!」
「メール?」
今の時代にメール?という驚きもあるし。
あのシノブとあのミサキちゃんがメール?という驚きもあるし。
魔法使える環境にあってもメール?という驚きもある。
「はい。先輩からいきなり連絡が来たということに一番びっくりしました!」
「そうなの?」
「なんてったって、四年前から音信不通でしたからねぇ!」
それでよくこんなになんの疑いもなくきたな…。
どれだけの信用なのだろうか?
というか、そういえば、シノブたちがケセランパサランのことを知ってからまだ二十分も経っていないような…。
いくらシブヤ町とアカネ町が近いと言っても、そんなに早く来れるものなのだろうか?
「そういえば…ミサキちゃん、どこからきたの?」
っていう質問だと、意味がよく伝わらなそうだなぁ。
と思ったのだが、その辺はさすがイケメンで、しっかり私の意図を汲んでくれた。
「私、住んでるのはシブヤ町なんですけど、この辺の学校に通ってるんですよ!」
「へぇ…。」
そういえば、今改めて見てもなんとなく見たことがあるようなないような制服。
もしかしたら、単純によくある感じの制服というのではなく、近所の高校だからぼんやり見たことがあったのだろうか?
というか、学校って?
普通に人間界の高校に通っているのだろうか?それとも魔法学校的な?
ニコと知り合ったのがその魔法学校なら、ミサキちゃんは今…?
「ほら、ここの道をまっすぐ行って大通りに突き当たって右に曲がってまっすぐ行ったあたりに、カラノミヤ学園ってあるじゃないですか?」
カラ?
カラ!?
「私、そこの高等部に通ってるんですよね。」
カラノミヤ学園といえば、この地域を中心に点在している幼稚園から大学まで一緒になっている私立学校である。元々は女子学校だったのが、最近は一応教学になった。それでも女子の割合が多い…。
なぜそこまで詳しく知っているのか?
それは、驚くべきことに私が在籍している(通ってはいない)学校も、そのカラノミヤだからである。
通りで、制服に見覚えがあったわけである…。
私は別の高校から入っているので着たことこそなかったが。
どんな魔法学校の名前が出てくるのかと思えば、まさかの在籍校。
ここまでくると、偶然というより、因縁めいた何かを感じざるを得ない?
むしろ誰かの陰謀か…。
「へぇ…。」
「今は部活帰りなのですよ!というか、同好会、ですかね?」
「ちなみに、何部のなの?」
これはただの興味本位。
ミサキちゃんはあれだけの、つまりビルの谷間を飛び越えるだけの脚力なのだ。
見た目的にも…というのはだいぶ偏見だが、陸上部とか、そういう運動系のイメージだが?
「オカケンです。」
「え?」
「あ、すみません。オカルト研究会です。中高大の生徒が集まってる、あんまり人数こそ揃ってないですけど、結構本格的な研究会なんですよ!」
「へぇ…。」
また面妖な…。
まぁ確かに、ビルの谷間を飛び越えるだけの脚力だとむしろ、本気を出すと世界記録を出してしまいかねないし、そんなものなのか?
にしたって、オカ研…オカルト研究会とは…。
今日はだいぶミサキちゃんに驚かされ、振り回されてばかりである。
そして私は今更、同じ学校であると言い出すきっかけを逸したのに気がついたのだった。
〜次回予告〜
ニコ:「カナコとミサキって同じ学校だったんですか!?」
カナコ:「いやぁ私もびっくりだよ。」
ニコ:「まぁ確かに大きな学校だったらそんなこともある…んですかね?」
カナコ:「ねぇ、もしかして学園の中に魔法学校に通じてる魔法の扉なり廊下なりがあたりするの?」
ニコ:「え?さぁ。それは流石にわからないですね…。確かに有名な学校などの組織では、派遣機構と関わりのあるものもあるそうですが…。」
カナコ:「じゃあ、ニコはどこの学校に?というかミサキちゃんとどこであったの?」
ニコ:「それはまたおいおい…。というわけで次回は、ケセランパサランに話を戻して、『第九話:他人の家の事情にはあまり言及しないようにしましょう。』をお送りします。」
カナコ:「お楽しみに。」
幕




