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第六話:他人の運命を私に委ねるな!

 こんなに引っ越したばかりの家に、なんのようがあるというのだろうか。

 大家さんが何かを渡すなり説明するなりし忘れたとか?

 あるいはあのコラおじがまた何か文句を?


 だが、その予想はどちらも裏切られることになった。

 チャイムに続いて、聞き慣れた声がしたからである。

「いますかー?」

 「いませんか」じゃなくて「いますか」なあたり、ここに私たちがいることを知っているのだろう。

 その声は、おそらく昨日別れたミサキちゃんだった。

「はいはい。」

 シノブがそう答えて、扉を開けに行く。


 やはりツムギちゃんが入ってもなお彼らのグループのカースト最下位はシノブらしい。

 なんだか可哀想なきもしないでもない。

 それともこれが百合の間に挟まる代償だというのか?


 まぁ猫耳はともかく、チサトやシノブという魔法少女界隈の男性陣が苦労人気質っぽいのは、そのせいかもしれない。

 可哀想になぁ。

 私も女性側ではあるものの、これだけ癖が強い女性陣が集まっている中で、一人男であるという状況の苦労は流石に偲ばれる。

 彼らから言わせれば、私もその癖の強い中に入っているのだろうか?


 無駄話ならぬ無駄思考しているうちにも、シノブはドアを開ける。

 ぼんやりとそちらを見ていると、そこにはミサキちゃんと噂の猫耳クロハがいる。

 これで八人。ちょっとしたサークル活動である。

 なんなら部活申請とか通りそうな人数である。


 魔法少女部。活動はチャリティ運動。

 部活成立に人数が足りなくて困っているアニメの中の青少年に半分くらい分けてあげたい。

 いや、誰かいなくなって欲しいとかはないけども…。


「おっ久しぶりですね!シノブ先輩!」

 まさかの先輩呼び?

 と驚いたのも束の間、さらに驚くべきことに、ミサキちゃんは頭からシノブの胸あたりに抱きつく。

 あの頭の入り方は、明らかにシノブの肋骨や鳩尾あたりにダメージがありそうだ。

「うっ!?…ひさしぶ…り?」

 それでも一応社交辞令的な挨拶はこなすシノブさんぱねぇっす。

 というか、抱き…?


 試みに、白黒の様子を見てみると、コクウはいつものポーカーフェイス。しかも本当に無感動って感じ。ハクアは苦笑い。

 どうやらこの状況は、なんの感情も呼び起こさない程度には当たり前の光景らしい。

 ちなみにニコとツムギは私と似たり寄ったりの反応である。


 というか、今更だがシノブとミサキちゃんの関係性を先程聞きそびれていることに気がついた。

 先輩呼びであの抱きつき。割と親密なのは間違いない。

 確かシブヤ町A地区の元守護者と守護者の関係のはず。

 その役職って仲がいいものなのだろうか?

 チサトとサトミさんは…元々兄弟だからなぁ…。


「おい、シノブさんに迷惑だろ。」

「ホイホイっと。」

 しかもなんとあの猫耳が「さん」付けで呼んでいる。

 なんということでしょう。

 とにかくクロハの指摘でミサキはシノブから一旦離れ、様子をじっと伺っている私たちに気づいたらしい。こちらに手を振ってくれる。

「こんにちは。角谷さんにニコちゃん、それにハクアさんとクロハさんと…あれ?」

 そこでミサキちゃんは言葉に詰まる。

 なるほど流石に、ツムギちゃんとは面識がなかったのだろう。

 靴をスマートに脱ぎ、不思議そうな顔で、リビングにやってくる。

 それについて、シノブとクロハもやってくる。


「あ、この度シノブさんの監視のために十二支会から派遣されました、ツムギというのですよ。」

 そう言って頭を下げるツムギちゃん。

「これはこれはどうもご丁寧に…。私はシブヤ町A地区守護者の花崎ミサキと言います。」

「ミサキと契約しているクロハです。」

「ミサキさんとクロハさん、よろしくお願いするのですよ。」

 なんだその社会人の名刺交換みたいな?

 いや、魔法少女も一種の仕事なのであれば、むしろこれが普通なのか?


「…さて早速ですけど、ケセランパサランを保護したいと聞いてきたのですが?」

 ミサキちゃんは居住いを正すと、早速そういった。

「それで、ケセランパサランたちは?」

 そう聞かれて、周囲をぐるっと見渡す。

 しかしそこには、ケセランパサランたちがいなかった…。

〜次回予告〜

カナコ:「いや…色々なことがありすぎてケセパサたちのこと忘れてたよ…。」

ミサキ:「まぁ元々気配を消すことが得意な子達ではありますからねぇ。」

カナコ:「というかびっくりしたよ?ミサキちゃんがいきなりシノブに抱きつくもんだから…。というかだいぶキャラ崩壊起こしたよ私の中で?」

ミサキ:「いゃぁ。お恥ずかしいところを。久々だったのでつい?」

カナコ:「つい?あの男はどんだけハーレムな生活してたんだ…。」

ミサキ:「あはは。まぁ、私と先輩はあくまで弟子と師匠みたいな感じですから。」

カナコ:「弟子と師匠でそんなにベタベタしてていいの?」

ミサキ:「いやいや、これくらいならただのスキンシップですよ!」

カナコ:「えぇ…。」

ミサキ:「角谷さんはそういうの苦手そうですよね…?でもケセランパサランたちはすごい懐いてるみたいですが…?」

カナコ:「うぅん…これに関しては色々事情が?」

ミサキ:「というわけで次回は、『第七話:弟子は師匠に似るのか元気に育っていけるのか?』をお送りします。」

カナコ:「お楽しみに。」

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