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第三話:読心とか閉心とかそういうややこしい色々。

 そこは、私の部屋とほとんど同じ構造の物件だった。

 玄関を入ると真っ直ぐ続く廊下。その正面がリビング。私の部屋と同じ方向に水場とキッチン。そしておそらく、リビングの横には、狭いが一人分の寝室があるのだろう。


 とりあえず何もないその部屋に上がり込む。

 シノブたち四人はすでにリビングに行き着いて私たちを待っていた。


 若干焦りはあるものの、自分の部屋のようにはいかないので、靴を揃え、踏んでいた踵も直して、しっかり整えて置く。

 ニコは待っていてくれたので、二人して皆が待つリビングへ向かう。


 リビングではすでにゆったりと、フローリングに座り込んだハクアが他の三人を見上げながら話している。

「しっかし本当に何もないな!」

「私の荷物は今日か明日にでも届くのですよ。シノブさんたちは、どうするのですか?」

「うぅん、一応拠点にしてた場所があるから、そこから持ってくるけど。家具とかはなぁ。」

 シノブは、いつからか持っていたスマホをポケットにしまいこみつつ答える。

 こう見ると本当に、ただの現代人である。

 いや、見た目こそ若干風変わりではあるが。


「確かにそうね。知り合いの家を転々としてたから、家具が要らなかったのよね。」

 そして、ただこれだけ聞くと、ただの引越しの話だ。

 その目的は、お隣さん、つまり私たちの護衛という、一般性のかけらもないものだが。


 そういえば、ニコやツムギちゃんは荷物が届くと言っていたが、それは魔法で届くということなのだろうか?

 それとも、サトミさんがいうように人間界に彼らも紛れているのだとすれば、普通に人間の世界の宅急便で届くのだろうか?


「色々なのですよ。確かに魔法で瞬間的にものを移動させることもできますが、あまりそう言ったことに魔法を使いすぎるのも良くないのですよ…。」

 まただ。魔法を使いすぎるとよくないというフレーズ。

 それは世界のことわりに触れるからとかなのか。

 それとも日常の中で魔力を使いすぎるといざという時困るからとかそういうことなのか。

 あるいは単純に戒め的な何かなのか…。

「うぅん。それも色々な理由が…。」


 と、ニコと話をしていると、いつの間にか話をやめていた四人がこちらを見ている。

「それがユニコーン族の読心能力なのですね?」

 ツムギちゃんがニコに尋ねる。

「あぁえぇっと。はい。」


「私たちの心、読めないでしょ?」

「そうなのですか?」

 ハクアの唐突な質問に、なぜかニコでなくツムギちゃんが驚く。

 おそらくニコが言っていたように、情報の多い少いはあれども、ユニコーン族の能力を持ってして、心が全く読めないということは異常なことなのだろう。


「え?はい。そう言えば、なんでなんですか?そういう術があると聞いたことはありますが…。」

 ニコはドギマギしながら答える。

 単純に話なれない相手との会話だからなのか。

 それとも能力について深く聞かれるのが嫌なのか。


「えぇ…その聞いたことある術っていうのは忍術?」

「あ、はい、そうです。」

 今度はシノブの質問に答えるニコ。

 まるで、転校生の周りに人だかりを作って質問しているみたいなテンション感である。

 というかだいぶ今更だが、忍術ってなんだ?

 忍者というのは歴史上存在したのは事実らしいが、彼らも魔法のような術を使っていたとでもいうのだろうか?


「でも、これはその術とは別。」

「そ、そうなんですか?」

 今度はコクウが返す。

 ニコは若干キョドり気味。

 考えてみれば、シノブたちはニコにとっては先輩に当たるので無理もないのか?


「忍術による完全な閉心術は、自分の心を極限まで無に近づけることによるもの。だけどあたしたちがやっていうのは、その逆なのよ。」

「えぇっと?」


「情報処理の性質上、許容量を超えた情報は無視される。私たちの感情は情報量が多すぎて、相手に読み取れない。」

「つまり?」


「つまり、読み取れないんじゃなく、読み取ったのに感知できてないってこと…ですか?」

 つい、私が割って入る。

 おそらくは実はそんなに聞いてみたかったわけでもないことを質問してしまったがために、一人集中砲火にあっているニコに助け舟を出そうと思ったのである。


「そう。えぇ…原理自体は多分脳科学とか、そういう分野でもある程度説明できると思うけど…。まぁ、要はキャパオーバーして情報が処理されなくなるってこと。」

 なるほど?

 脳科学云々は本気で良くわからないけども、原理はなんとなくわかった。

 多分、推しの尊いシーンを見て放心するのと変わらない状態ってことだろう。

 だが、それだけの情報量を、人間の感情は常に持ちうるのだろうか…?

「そうですね。確かに。そんなに情報量が多い心って?表層的に考えていることや心の存在さえ読めないなんて…。」


「まぁ、副産物みたいなものなんだけどね?」

「私たちは、二人とも第一種の契約だから。」

「え!?」

 ニコが驚愕の声を上げる。

 そう言えば、契約には三種類。第一種は最も古典的で一般的じゃないとかなんとか…。

 だがそれが、そんなにも驚くことなのだろうか?

 ツムギちゃんの方を見ると、彼女もなんとも言えない顔で苦笑いをしている。


「つまり、一人につき三人の感情が同時に存在してるってことですか?」

「そういうことになるわね。」

 存在してるってことですかってどういうことですか…。

 ニコが尋ねる言葉も、私には意味がわからない。

 置いてきぼりで少し寂しいです。はい。


「にしても…。」

 にしても!?

 今の話、それで話題転換できるくらいな程度の内容だったの!?

 ニコもツムギちゃんも結構な反応だったけど!?

〜次回予告〜

カナコ:「そうか、だいたいわかった。」

ツムギ:「何がわかったのですか?」

カナコ:「ひとはわかっていない時にそういうんだよ。」

ツムギ:「え?え?」

カナコ:「つまりそういうことさ。」

ツムギ:「えぇ…。」

カナコ:「というか本当に、ずっと置いてきぼりくらってるんですけど!仲間外れは良くないと思います!」

ツムギ:「そうなのですよね。でも、多分シノブさんたちからすると、ずっとこちら側の世界に関わって生きてきたので、何がわからないのかわからないんだと思うのですよ。」

カナコ:「なるほど?ちなみにツムギちゃん、スマホ持ってる?」

ツムギ:「あぁ、はい。この任務に着く時に買ってもらったのですよ!でもなんでなのですか?」

カナコ:「いや…。ところで次回はこのややこしい話の続き?」

ツムギ:「はい…。次回は『第四話:穢れとか気とかそういう胡散臭い色々。』をお送りするのですよ!」

カナコ:「お楽しみに。」

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