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アナザーサイドストーリー6(サトミ)

※:第二章第三十三話の中からしばらくのサトミ視点でのお話です。

「シノブ!それに白黒やないの!」

「白じゃねぇよ!」

「黒じゃないわ。」

 反射的に答えるハクアとコクウ。

 そしてその声を聞いて非常にバツの悪そうな顔をするシノブ。

「おっ久しぶりだねん!」

 アカネもしれっと挨拶する。


 久々の同期生同士の再会。

 当時、所属する班こそ違ったが、地元が近いこともあり、実力を競い合った仲だ。

 だが、彼らの関係性は複雑で、当然感動の再会になるはずもなく。

「なんで今更戻って来たんかなぁ?」

 シノブたちが恐々と声のする背後を振り返った時には、サトミの脅迫もとい笑顔がすぐそこまで迫っていた。

 おそらくシノブからすれば、恐怖以外の何ものでもなかっただろう。

 何度同じようなパターンでしばかれ続けてきたことか。


「いや、これには事情があって…?」

 とりあえずなだめるように両掌を相手に見せつつ答えるシノブ。

 ハクアとコクウも明らかにヤバいやつに見つかってしまったという顔。

 事情を知らないツムギでさえ、その威圧感に圧倒されて逃げ腰である。


「どないな事情があったら、面倒な事件の落とし前つけずに逃げたあんたがこの場所にノコノコ戻ってこれるんか知りたいなぁ?」

「いや、えぇ…あぁ…十二支会と代表の指示で、えぇ…新たな収束点の護衛の任務を…?」

「新たな収束点?カナコちゃんのことやな?」

「ああ。」


「というか、なんでお偉方があんたに頼むん?大事件起こして除名になったやろ?この土地に元々配属されとるペアもおるし、うちらやっておるのに?」

「代表が事情を説明したらしい。…それ以上のことは俺たちも知らない。」

 と言って、おそらく唯一事情を知っている可能性があるツムギに視線を移すが、ツムギも首を振るばかりだ。

 ちなみに代表というのは、派遣機構における人間側の指導者の呼称でだった。

「じゃあなんで今なんや?というか、事情を説明してなんとかなる問題なんか?せやったらもっと前に!」

「あの時に説明しても、誰も聞く耳を持たなかっただろ?」

「じゃあなんで今なら!?」


「代表と話はついてたんだ。急を要する状態になれば、みんなをまっとくさせることができるから、それまで待てってな。」

「じゃあなんでうちやミサキちゃんに連絡せえへんかったの?あるいはチサトに一言いっといてくれれば…?」

「それをしたら意味ないでしょうに。」

「コクウは黙っといて。」

「まぁまぁ。一回落ち着いて!」

「アカネも!あぁもう!…はぁ。」

 ため息をつくサトミ。

 行き場のない怒りは、文字通り行き場がない。


 ここは一度落ち着くべきだった。アカネの意見は正しかった。

 極秘で行われたことであるからこそ、大罪の容疑のかかったシノブがこの組織に戻ってこれたのだ。自演がバレれば、たとえ代表の言葉でも誰も耳を貸さなくなる。コクウの言葉も正しかった。

 そして、シノブがおそらく、誰とも連絡が取れる状態になかったのだろうという予想はつく。シノブのいうことも正しいのであった。


 だが納得がいかない。

 サトミは拳を握りしめて、また深くため息をついた。

「はぁ…。」


 と、言い争いが起こりそうなところで、階段を降りる音に全員が一斉に押し黙った。

 そもそも一般の人間がいるところであまり話していい類の話題ではない。

 恐る恐る音のした階段の方をみると、そこには角谷カナコとニコの二人が立っていた。

〜次回予告〜

サトミ:「相変わらずうちの扱いひどない?」

カナコ:「そうかもしれないですね。」

サトミ:「ちゅうか、割と何が起こるのかわからん状態で本編終わっとるけど、こっからどうなるんやろな?」

カナコ:「それは、第三章始まってのお楽しみですよ。楽しみになるようなことはあまり起こりそうにないですけど。」

サトミ:「そう?カナコちゃん楽しそうやけど?」

カナコ:「まぁ、私の変わり映えしない人生に訪れた初めてのチャンスですからね。」

サトミ:「なんか、手伝えることあったらなんでも言ってな!」

カナコ:「ありがとうございます。というわけで次回は第二章と第二・五章のまとめ、そして、その次からは本編再開になるよ。」

サトミ:「次回、『幕間:前回までのあらすじ2』をお送りするで!」

カナコ:「お楽しみに。」

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