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アナザーサイドストーリー5(ツムギ)

※:第二章第二十話にシノブたちとともに逃亡することとなったツムギ視点のお話です。

 ツムギはハクアに抱えられて宙を飛んでいた。

 奇しくも昨日、カナコとニコがミサキに抱えられてスリリングな空中散歩を嗜んだ場所の付近だったが、そんな偶然を知るものはこの場にはいない。

 カナコたちとは違い、こういった異常な状況にも若干の耐性があるツムギは騒ぎこそしないものの、やはり不安定な状況で地面に足の付かない場所に放棄されるのは恐怖なのだろう。

 なるべく下を見ないようにしながら言う。

「何で逃げるのですか!?」

 サトミとチサトがやってくるのを感じ取ったコクウ、ハクアとシノブは、逃亡作戦を決行し、見事逃げおおせたのであった。


「いや、つい癖で…。」

「くせ!?」

 シノブの言葉に、ツムギは絶句する。

 

「まぁ二人にはよくお説教くらってたからな。」

 呟くハクア。コクウも何も言わないまでも、表情が少し強張っている。

 そんな三人をツムギは呆れ顔で見渡した。

「一体何をしでかしてきたのですか…?」

 と誰にともなく尋ねてみるものの、このほんの短い間でも、この三人がいかに問題児であるかはわかるような気がしてきている。

 これが魔法少女の長い(正確には魔法少女と呼称されるようになったのはごく最近だが)歴史上稀に見る優秀なバディだとはツムギにはとても思えなかった。


「…と言うか。」

 ハクアが六階建てのマンションの屋上の端、そこに立てられたフェンスの上で急停止したので、話は遮られた。

「うぅ!!?」

 慣性の法則に従って抱えられているツムギの体は大きく揺れ、屋上からはるか下の地面が嫌でも見える。

「ちょっ!?止まらないでくださいなのです。いっそ降ろしてほしいのですよ!」

「あ?あぁそうね、ごめんごめん。」

 ハクアがマンションの屋上に降り立ったので、ツムギは久々の地面の感触を味わうことができた。


 そこに、少し先をいっていたシノブとコクウが戻ってくる。

「どうした?」

「いや、私たちどこに向かってるんだっけ?」

「「「…確かに。」」」

 三人の声が唱和する。

 ツムギは浮遊感への恐怖で、そして他の三人は逃げることに必死で、忘れていたのだった。

 移動しているのに目的地がないと言うのは、考えてみればバカバカしい話ではあるが。


「そ、そういえば、伝えていませんでしたが、お三方は護衛対象であるカナコさんとニコさんのお家のそばに拠点となる住居が用意されているのですよ!」

「「「…それを先に言えよ!」」」

 今度は白黒シノブの三人の声が唱和した。

 流石に名バディというだけあって三人の仲はいい。


 むしろそこに入っていけているツムギの順応性を評価すべきなのかもしれない。

 元々ネズミという動物は環境に順応することが得意でもあり、だからこそ幻獣としての鼠であるツムギたちの一族も、十二支会で参謀的な立ち位置に立っているのだが。


「…で、それってどこなんだ?」

「えぇっと確か、アカネ町のB地区…。」

「それはわかってるんだけど?」

「あぁ、ちょうど見えるのですよ!あのマンションなの…ですよ…?」

 ツムギが指差す方を見て、三人は目配せする。

「そのマンションって、あのヤバそうなところ?」

「……そ、そうなのですよ。まさかああなっているとは…。」

 四人が口ごもるのも無理はない。

 そこは、少し離れたマンションの上部から見てもわかる、穢れの溜まった場所だったからだ。


「しかも、あの感じ。人間の念じゃなくて、精霊とか神とかの穢れな気がする。」

 コクウが耳と目線をそちらにむけ、警戒しながら告げる。

「え!?コクウさん、そんなことまでわかるのですか!?」

「ううん。何となくの勘だけど。」

「でも、あんたの勘はよくあたるもんね。主に悪い方面で。」

「大きなお世話だわ。」

「何だと!?」

 またも白黒の喧嘩が勃発しそうになったところに、ツムギが止めに入る。


「あ、でも、現場でずっと活動してきたからなのですかね?そういうの、憧れるのですよ!」

「というか、ツムギってまだ配属されてあんまり期間経ってないよな?」

「今回が初任務なのですよ。至らない点があったら教えてほしいのですよ。」

「…なんていうか。なぁ?」

「災難ね。」

「何がなのですよ!?」

 と、もはや完全に順応したツムギであった。


 その後、耳の遠いアパートの管理人さんから206の鍵を受け取ることになる。

 そして部屋に行こうとした道中、先ほど逃げおおせられたと思っていたサトミにバッタリと出くわしてしまったのは、いうまでもない。

〜次回予告〜

ツムギ:「なんだかどっと疲れたのですよ…。」

サトミ:「ご苦労様やなぁ。」

ツムギ:「お三方は昔からこうなのですか?」

サトミ:「せやなぁ。昔からようしばいたってたわ。」

ツムギ:「な、何があったのですか?」

サトミ:「うちらが気づかん間に討伐対象と仲ようなってたり、機密情報やら禁書やら持ち出したり…。」

ツムギ:「そう言えば流されて忘れてたけど、そもそも二人の幻獣と契約するのも禁術なのですよ…。」

サトミ:「まぁそれに関しては事情もあって、後々許可もとったんやけどな?」

ツムギ:「そういうのは事後報告じゃダメなのですよ…。」

サトミ:「ちゅうか、ここにうちがいるってことは、次はまたうち視点なんやな?」

ツムギ:「そうですね!そして長く続いた第二・五章も次で終わりなのですよ!」

サトミ:「そないなわけで、次回は『アナザーサイドストーリー6』をお送りするで!」

ツムギ:「乞うご期待なのですよ!」

サトミ:「うちら本編やとほとんど絡みないのに、次回予告でよう話しとるような?」

ツムギ:「それは言わないお約束なのですよ…。」

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