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第六話:跳んでも跳んでも瓦礫の山。

 そいつは、鋭い目つきの猫耳黒ゴスショタだった。

 さらにいうなら非常に「わからせたくなる」タイプの高飛車な雰囲気をまとっていた。

 絶対エロ同人誌でモブおじさんにあれやこれややられているタイプだ。間違いない。

 ちなみにあれやこれやは、あれやこれやだ。


「そこにいるのは、高貴なるユニコーン族の御息女様ではないですか。なぜあなたが、こんな野蛮な戦場に?」

「あ、あぁ、えぇっと…。」

 猫耳ショタはニコに向かって、にこやかに、しかし明らかに嫌味とわかる口調で話しかける。


 ニコは口籠もって答えられない。

 無理もない。あまりに憎たらしい口の聞き方をするので、「あれやこれや」の分際で、と私まで少しムッとしたくらいだ。


 そんな私たちをよそに、ドラゴンがまた攻撃を仕掛けてくる。

 火の攻撃は効かないと判断したのか、今度は自身の長い尾をこちらに横なぎに振り抜くようだ。

 振り抜かれるドラゴンの尾のスピードと破壊力といったらない。


 おっと、今度こそ死んだか?

 やっぱり転生か?お?お?


 それにしても、今日は人生の中でも最もよく死にかける日だ。

 おそらく今日を越すことはないだろうし、越さないことを切に願う。

 まぁこの調子で、明日以降も生きていればの話だが…。


 …気づくと私は、何者かの小脇に抱えられて宙に浮いていた。

 下を向いた私の顔の真下を、ドラゴンの尾がものすごいスピードで通り過ぎる。尾にあたった瓦礫が粉砕されて、ものすごい音とともに飛び散る。


 これは、あのままだったら木っ端微塵だったな、という恐怖。

 そして、人に抱えられて空中をフライトするという前人未到の恐怖。


 嫌な浮遊感を感じる。正直今すぐおろしてほしい。

 とはいえ、ここで下手に身動きすると真っ逆さまに落ちて本当に転生してしまいそうなので、全てを諦めて身を委ねることにした。


 一度目の飛躍から、瓦礫の上を数回経由して、ドラゴンと十分に距離が取れたことがなんとなくわかる。


 着地したのは、瓦礫がうず高く積もって山のようになっている部分の、一番上だった。

 私は、紐なしバンジーかパラシュートなしパラシュート降下のような今さっきの経験に思わず身震いする。

 正直、呆然やら驚愕やら恐怖やらで、立つこともままならない。

 しかたがないので、しゃがみ込んだままの姿勢で、私をあの場から救出してくれたらしい人物を見上げる。


 その人物は、ニコでもなく、あの猫耳でもなかった。


 なお、パラシュートなしパラシュート降下は要するにただの物体の落下です。

 良い子のみんなは真似しないでね?


 さて、そこには、私と同じくらいの歳格好の女の子が立っていた。

 最も同じくらいなのは歳だけで、その見た目は、長い間の暗闇での引きこもりによって、どこに出しても恥ずかしい立派なもやしに育った根暗の私とは似ても似つかなかったが。


 なんかよくわかんないけどとりあえずごめんなさい、と言わざるを得まい。

 我ながら、何について謝っているんだ…。

〜次回予告〜

カナコ:「いやぁ…だいぶひどい目にあった…。」

ミサキ:「しかし、あのままでは死んでいたのですよ?」

カナコ:「誰!?」

ミサキ:「オヨヨ…。誰とはひどいですね。二人でたくさんの山を乗り越えてきたというのに…。」

カナコ:「もしかして、私を抱えていた方でいらっしゃる?流れ的に?というか嘘泣きでオヨヨって、何世紀前の擬音やねん。」

ミサキ:「そうですよ。先行登場ってやつですね!」

カナコ:「なるほど、公式の販促に用いられると噂の。そしてわかってても結局引っかかっちゃうで噂の…。」

ミサキ:「それは、財布の紐ゆるすぎでしょ…というかどこからそんな話に…?」

カナコ:「とはいえ、次回は先行登場したキャラが本編で掘り下げられるってパターンですね。」

ミサキ:「パターンとか言わない!言わない!次回は『第七話:魔法と少女と契約者。』です。私の初登場回ですよ。お楽しみに!」

カナコ:「全部言われた…。」

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