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第三十五話:古き良き時代に助けられる日もある。

 ニコとともに階段から降りると、アパートの正面でサトミさんのペアとシノブたち一行が向かい合っていた。


 そして重たい沈黙。

 先ほどまで何やら言い争っていそうだったのに、この状況。

 明らかに私たちが登場したせいで、妙な間が生まれてしまっている。

 全員の視線がこちらに向いていることが、それを物語っている。


 もしかして私、ピンチですか?

 いや、外が騒々しいから状況を確認する、知り合い同士が揉めているから仲裁に入る。

 やっていることは人として間違っていないはずだが。

 むしろどんな時でも「他人は無視」を決め込んできた私からすると真っ当な判断すぎるくらいだが?何か?


 …。

「あぁ…いや、外が騒がしかったので?」

「どうかしたんですか?」

 ニコも言葉を続けてくれて、なんとか重たい沈黙を脱した。


「あ、あぁカナコちゃん。すまんな。久々に同期におうたんで、つい盛り上がってもうて…。」

 明らかにそういった和やかな雰囲気ではないものの、そういうことにしておいた方がお互い幸せか?


「あぁそうだな?」

「そうだ。」

「えぇ。」

 シノブに白黒も同意見のよう。

 つまり暗黙の満場一致で、先ほどまでの騒々しいやり取りはなかったことにすることに決定したのだった。

 この辺は流石日本人というか、空気を読む達人である。

 ツムギちゃんがシノブたちのことを死んだ魚のようなジト目で見ているが、彼女も大変だったのだろう。

 苦労が偲ばれる。


 というか、干支の鼠をここまで疲労させるシノブと白黒は本当に何者なのだろう?

 だが、それを聞くのはやっぱりなんだか躊躇われる。

 特に今の状態に関しては。


「…でも、なんでここで?」

 と一旦場も納まったところで、ニコがシノブたちに質問する。

「えぇ…。」

「そういえば、カナコちゃんには説明してへんよな?」

 シノブがなんと答えようかと思案している間に、サトミさんが追い詰める。

 同じコミュ障としてああいった状態は同情するが、それはそれとして、ニコの疑問ももっともだ。

 サトミさんは事情を知っているらしいが…。


 ここは私の家のあるアパートで、サトミさんはそこを見回っていた。

 じゃあシノブたちは一体何をしているのだろう?

 ツムギちゃんがいる以上、問題のある行動ではないだろうが…?


「実は、十二支会の指示で、私たち四人で、このアパートに住むことになっているのですよ…。」

「「え!?」」

 私とニコの驚きの声が唱和する。

 全私たち驚愕の事実である。


 だがその刹那。


「さっきから、ウルセェ!」

 驚愕している私たちの横の、アパートのドアが突然開いたかと思うと、そんな怒鳴り声が聞こえてきた。

 まさかの第三者の乱入に、驚くのも束の間、反射的に私と、さらに同じくコミュ障らしいシノブが謝る。

「あ、ごめんなさい。」

「すみません。」


 私が軽く会釈しながらそちらをみると、腕には刺青の半袖の柄の悪そうなおっさんである。

 まさかこんな人物が住んでいたとは…。

 あまりにも引きこもりすぎて知らなかった…。


 さらに、ニコ、サトミさん、ツムギちゃんが謝罪を続ける。

「ごめんなさい、盛り上がってしまって…。」

「今後は気をつけますんで…。」

「ごめんなさいなのですよ。」


 そこまで聞くと、おっさんは鼻を鳴らしてドアを閉めた。

 ドアを閉めると同時くらいに、ドアの向こうから「あんたの方がうるさいんだよ!近所の迷惑考えな!」「でもよかぁちゃん!」というやりとりが聞こえてきた。

 なんじゃそりゃ。

 なんじゃその時代錯誤な…?


 何を見せられているのか分からないと思うが、私も何が起こっているのかよく分からない。

 女性の方の声は、気の強い妻なのか、それとも真っ当な母親なのか。

 分からないがとにかく、この部屋に住んでいる人たちには喧嘩を売らない方が良さそうであった。


 もしかしたら、このアパートにこれといった問題が起こらないのも、彼らがいるからかもしれない。

 何か問題を起こそうとするような人間がいたとしても、自分が起こす以上の問題にまで足を突っ込みたくはあるまい。


 そう考えると、そういった時代錯誤な感じもあながち悪いものでもないのかもしれない。

 先生に叱られた後のような、あの脱力感のような空気の中で、そんなことをぼんやり考えた。


 これからどうなるのかな?

〜次回予告〜

ハクア:「またまた登場!ハクア!」

コクウ:「コクウ。」

ニコ:「二人!?」

ハクア:「次回予告に登場するサブキャラが一人なんて誰も決めてないわ!」

コクウ:「そういうことみたいね。」

ニコ:「はぁ。まぁそうかもしれませんが…。それより、なんだか大変な回でしたね、今回は。」

ハクア:「サトミのやつがつっかかって来たんだ!」

コクウ:「怒鳴ってきたおじさんは、私たち八人組を見て、何を思ったんでしょうね?」

ニコ:「確かにそうですね…というか、カナコのご近所さんからの心象を悪くしないでくださいよ!」

コクウ:「それはとんだ言いがかりだわ。あなたたちが野次馬的に出て来たのが悪いんじゃ?」

ニコ:「それは…そうかもしれませんが…。」

ハクア:「まぁまぁ、思ったよりは丸くおさまったしいいじゃん?死傷者もでず…。」

コクウ:「…それは、そうね。」

ニコ:「死傷者…?」

ハクア:「それより次回は、部屋に入りたいな!」

コクウ:「そうね、変につっかかられただけで、私たち側に用はないしね。」

ニコ:「いや、この状況を説明してくださいよ!」

ハクア:「次回は第三十六話:『新キャラが隣に越してくるってあるあるだよね!』をお送りするわ。」

コクウ:「お楽しみに〜。」

ニコ:「聞いてくださいよぅ…。」

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