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第三十三話:誰もいない真っ白な世界の秘密。

「つまりどういうこと?」

「えぇ…ハコニワは場所の名前というよりは、システムの名前なんですよ。

 それでこのシステムは、現実の世界の空間を拡張したり、そこにあるもの…例えばあのドラゴンのような存在を別空間に移動させたりできるものなんです。」


 つまり空間の概念に関することならなんでもできるシステムってこと?

 そのシステムによって生まれる空間は同一ではないため、この場所で戦闘があっても、ニコの部屋に傷はつかない?

「何も万能とういうわけではないのですが…でもその理解力の高さはやっぱりすごいですね。」

 ニコは苦笑いをしている。

 昨日から緊張の連続で頭が回っているせいもあるし、オタクの性質上、こういった以上な状況にある意味なれているというのもあるのか。

 なんにせよ、おそらく通常の生活ではなんの役にも立たないでろう無駄な知識が役に立つのは嬉しいことである。

「今のアニメや漫画って、そんなによくできているんですか?」

「そうだね。ニコは見たことない?」

「そうですね、雑誌とかは見たりするんですが…。というか、カナコの部屋って、そんなにアニメや漫画好きなのに、本棚とかないんですね?」


 なるほど、確かに現物はほとんど手元にない。

 スマホを知らなかったニコからすると、本や漫画は現物あって初めて読めるものなのだろう。

「え?スマホってあの小型のパソコンのようなもの…?」

 一応扱いとしては携帯なのだが、それに関しては先ほどの自分の説明が悪かったのだろう。

「え?え?携帯?スマホ?パソコン?」

 ニコは混乱している。


 科学の世界で生きている人間にとって魔法はファンタジーであるように、魔法の世界で生きているものたちにとって科学はファンタジーなのか?

 いや、あまり深く知っているわけではないものの、ニコが魔法少女たちの中でも特異な存在であることは確かだ。

 アカネちゃんならまだしも、ミユキさんや猫耳がスマホで動揺している状況は想像できない。


「スマホは携帯電話とパソコンが合体したような道具なんだよ。今では漫画も本もこれ一つで読めるし、アニメも見れる…。」

「そ、そうなんですか!?」

 ニコの驚いた顔は、スマホが当然の技術である世界に生きる私にとってはユーモラスだ。

 だが、確かにこの技術が生まれる前の人間からすると、この機械は衝撃であるのは間違いないだろう。

 私は一応、漫画のサブスクリプションアプリを開いてみせる。

「へ、へぇ…。」

 ニコが、きょうび赤ん坊でもそこまでは驚かないであろうといった様子でスマホを眺めている。

「使ってみる?」

「い、いやいいです。私はこういうの触ると壊しそうなので…。」

 いやそう簡単には壊れんけども。

 とはいえ、このままだと確かに話が進まなそうな…。

 そういえばなんの話だっけ?


「ケセ?」

「ケセパサ?」

 私たちの後ろでケセパサたちが囁きあっている。

 そうだった。そもそもニコとケセパサたちの住む部屋の話だった。

「一応、分譲システムは事情を話せば使わせてもらえると思いますが、システムの設定もあるでしょうし、今過ぎにとはいかないですね…。」

 なるほど…。

 となるとやはりケセパサたちを家におくとするとハムスターか何かのケージを買ってくる?

 でもこれまでこの部屋を自由に闊歩できたのに、今更そんなに狭い場所で?

 ニコの部屋に放すわけにも当然いかない。

 だとすればやはり放流か?だがそれはやはり無責任?

 地方新聞の一面に<本物のケセランパサラン発見!?>とかあるのを見たくはない。

 それだと結局捕まって狭い檻の中か、最悪、解剖されたり?

 …。


 色々なことを考える。

 しばしの沈黙。

 すると何やら外から騒々しい音が聞こえているのに気がついた。

 壁が薄いので、どこからもかしこからも音が漏れ聞こえてくるのだ。

 外からも、ほらこの通りである。


 ニコに目をやると、ニコもこちらを見ている。

 その複雑な表情は、その騒音が私に無関係ではないことを語っていた。

〜次回予告〜

カナコ:「また一波乱ありそうな終わり方してるけど?」

ニコ:「いや、波乱…といえば波乱ですが、死にかけたりとかそういうタイプではないですね。」

カナコ;「やっぱりニコは部屋の外でも感情わかったりするんだ?」

ニコ:「まぁ大きくて単純な感情くらいは?結構遠くまで届きますし…。」

カナコ:「そういえば、このアパート周辺は穢れが溜まってるって散々言ってたけど、そんな場所にいて大丈夫なの?」

ニコ:「大丈夫…まぁそうですね。特に困ったりはしないですね。前にも言いましたが、それくらいは私がいるだけで寄せ付けませんから。えっへん!」

カナコ:「空気清浄機みたいなこと?」

ニコ:「くう…?なんだかよくわかりませんが馬鹿にされたような?」

カナコ:「えぇ…。いや…えぇ…。」

ニコ:「言いたいことが多すぎてカナコがフリーズした!?」

カナコ:「ということで次回は!」

ニコ:「突然別の話に!?」

カナコ:「第三十四話:『そういう話はよそでやってくださいとあれほど!』をお送りします。」

ニコ:「お楽しみに!」

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