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第三十一話:レッツゴー異種族間コミュニケーション!

「そうですね…ただ、動物は感情を隠すのが案外上手なので、閉心術をしている方のような感じで、感じられないことがほとんどです。

 それにさっきも言いましたけど、思考も単純なものが多いので、具体性がないというか、なんとなく嬉しいとか悲しいとかくらいならわかることもありますが、それくらいです。」


「じゃあこの子達は今あんまり警戒してないってことかな?」

 挨拶が功を奏したのか、私のひきつった笑顔が功を奏したのか?

 なんにせよ、とりあえず落ち着いてやり取りができる状況になったようだ。


「えぇっと?この部屋の…えぇ有機物?食べ物?を食べたのはあなたたちですか?」

 とりあえず言葉が通じているていで一旦コミュニケーションを図ろうとしてみる。

 不思議なもので、人間と話す時よりもはるかに、このよくわからない毛玉に話しかける方が緊張感がない。

 まぁあまりにもよくわからない生命体なので、緊張のしようがないといったところだが。

「ケセ?」

「パサケセパサ!」

「パサ!」


 やはり何をいっているかはわからないが、私が何かを言うたびに何かを返してくるのだから、こちらとやり取りをする意思はあるのだろう。

 言葉の意味が通じているのかはわからないが…?

「ニコ、なんかわかる?」

 とりあえずケセランパサラン語暫定通訳者となったニコに向こうの意図を聞いてみる。

「うぅ、なかなか分かりにくいですね…。何を思ってるか、具体的にはわからないですし…うぅん…。」


 どうやらケセランパサラン語は我々にはまだ早すぎる言語のようだ。

「パサ!」

「ケセケセ!」


 だがそんなことにも構わず彼らはこちらに何かを伝えようとしている。

 しばらくの間、向こうが何かを必死に伝えようとしている切ない時間が続いた。

 次第にケセランパサランたちも興奮してきたのか、ポンポンと中に飛び跳ね始めた。


 まるでライブで盛り上がっているフロアの群衆みたいである。

 まぁ、自分でいったことはないけど、ライブ。


「あぁ、そうですね。なんとなく分かりましたよ!」

 私も少しブルー入りそうになってきたあたりで、ニコが大きめの声を出し立ち上がる。

 それに驚いたのか、ケセランパサラン一同はまた元の陣形に近い塊に戻ってしまった。


「あ、あぁぅ。ごめんなさい…。」

 ニコがしゃがみ込み、彼らに謝ると、彼らもまた少しずつ元に戻っていく。

 これはどうやら、言葉の内容の大筋くらいは通じていそうだ。

 あるいは相手の様子を観察して敏感に反応しているだけなのか?


「で、何がわかったの?」

 何か大発見をしたらしいニコに尋ねる。

「彼らは多分、思ったより難しいことを伝えたいんじゃないかと思ったんですよ。快不快みたいな単純なことじゃないんじゃないかと…。」

「なるほど?」

 なんだか本当にアニメの博士キャラなんかが発明品をプレゼンする時みたいな言い回しだ。


「茶化さないでくださいよぅ。…それで、この感覚が何に近いか考えた結果、多分『尊敬』なんじゃないかと…?」

「尊敬?」

 予想の斜め上をいく言葉に、虚をつかれた。

 私たちに?なんで?

「いえ、多分カナコにだと思います。私はここにきたばかりですし、むしろ警戒されているんじゃないかと…。」

 私単体に?

 よりなんでかわからないんだが?


 家に住むネズミなり害虫なりが人間を敵だと認識しているように、彼らもそうなのではないだろうか?

「いえ、カナコは彼らを放置していたはずですよね?ゴミもあれだけ放置だったんですから…。」

「確かに?」

「しかも彼らの餌となるようなものも、カナコが供給しているわけですし、少なくとも敵ではないですよね?」

「でもそれで尊敬?」

「うぅん。私も今話したのは私が考えたことなので…?」


「パサ!」

「パサパサ!」

 ケセランパサランたちはまたポンポンと跳ね始めた。

 しかし先ほどまでの気迫はなくなっている。伝えたいことが伝わったから?

「パサ!」

「あ、今のはなんか肯定っぽい!」

「ケセ!?」

 ニコが少し大きな声を出すたびに彼らはビクついている。

 私が話しかけた時にはなんともなかったのに。

 どうやら私とニコへの認識の差があるというのも、ニコの予想通りらしい。


「うぅんでもこっちとしては別にそう思われようと思ってやったことじゃないしなぁ…。」

「あはは、でも彼らがそう思っている分にはいいんじゃないですか?」

「ケセ?」

「パサパサパサ!」

 緊張がほぐれてきたのか、なんなのか、彼らの主張も強くなってきた。

 ただそこに人間のような自己主張はあまりなく、あくまで控えめで、しかも声もあまり大きくない。

 未だ声なのかもはっきりしないわけだが、何かを食べられるということは口があり、口があるということはやはり声なのだろうか…。

〜次回予告〜

カナコ:「なんかケセパサたちともコミュニケーションが取れてきた気がするね?」

ニコ:「そうですね…。ってそう訳すんですね?」

カナコ:「まぁ日本では鳴き声で動物に名前つけるのは結構ポピュラーだからね。」

ニコ:「ワンちゃんとかってことですか?」

カナコ:「ケロちゃんとかね。…それはなんか違うものを連装するけども。」

ニコ:「そうなんですか?」

カナコ:「というか、ニコの読心術ってすごいんだね?こんなに能力が高いからユニコーン族は貴族って呼ばれてたりするのかな?」

ニコ:「うぅんそうですね。ユニコーン族の能力は個人差が大きいですから。それだけで貴族というわけでは?」

カナコ:「貴族の基準ってあったりするの?」

ニコ:「それは歴史的な要因が大きいです。ユニコーン族は起源が日本ではないんですが、海外でも高い地位を占めていたようです。」

カナコ:「なるほどね。でも便利だよね、読心術。」

ニコ:「まぁ、便利という点もありますかね。カナコもいっていた?思っていた?ように大変な部分もないではないですが…。」

カナコ:「そうか…他の種族にもそういう能力ってあったりするの?」

ニコ:「そうですね。それぞれの種族に、さまざまな能力がありますよ!」

カナコ:「他の種族の能力みたいなのも今後知っていくことになるんだろうか…。」

ニコ:「ところで次回はケセランパサランたちをどうするか?という話です!」

カナコ:「次回は第三十二話:『ケセランパサランの買い方育て方。』をお送りします。」

ニコ:「お楽しみに!」

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