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第二十九話:伝説とは違うけど有益ならばオッケーです!

 それは、白く丸い毛玉だった。

 初めは巨大化した埃かカビかと思ったのだが、そうでもない。

 なぜならそれは、ポンポンと軽く飛び跳ねている…つまり動いているからである。


「うっ…んんん?えぇ…?」

 よくわからない感嘆詞の連続が口から漏れる。

 何せ、目の前のものは、本当になんだかよくわからない。


 魔法少女たちにせよ、ドラゴンにせよ、あのでしゅ野郎にせよ、これまで出会ってきた怪異な現象は、なんとなくみたことがあるというか、得体が知れているというか。

 少なくともそれがなんであるかくらいはなんとなくわかった。

 だが、この毛玉に関しては、本当に何者なのかわからない。


 ただしそれらはどうやら私に恐れをなしているようで、袋が取り上げられたそばから、玄関の角に移動し、固まって震えている。

 どうやら複数あった毛玉は、それぞれが別の個体のようだ。


「どうしたんですかーカナコ?」

 ニコがリビングからこちらを呼ぶ声にも、震え上がっている。

 その様子は少しユーモラスでもあり、哀れでもある。


「何がいたんですか?」

 なんと返事していいかわからず黙っていると、ニコが、玄関まで出てきて、こちらを覗き込む。

 少し離れているので一瞬戸惑ったが、これぐらいの距離ならば心が読める能力の圏内らしい。

 ちょっと離れていても心は通じているということか。

 なんだその遠距離恋愛ラブソングの歌詞みたいな…。


「何考えてるんですか…というか、ケセランパサランですね、これ。」

 ケセ?パサ?

 なんだか聞いたことのある固有名詞だが、具体的になんだったかが思い出せない。


「ケセランパサランは、日本の幻獣の一種で、ワタのような姿をしています。伝承では一年に一度見ると幸せになると言いますね。」

 そんな名前で日本産というのは驚きだが、内容はいかにもありそうな伝承だ。

 だがなぜぞんなよくわからない生命体が、私の部屋にいるのだろうか?


「彼らは実際には、エネルギーの強い人間の周囲に自然発生的に生まれてしまう半生命半エネルギー体的な物体なんですよ。

 見ると幸福になるというのも、おそらく彼らによって幸福になったのではなく、彼らが発生するだけのエネルギーを持ち合わせた人間なので、自分で幸福を引き寄せたと考えた方が自然でしょう。」

 なんだかもっともらしい解説である。

 エネルギーとか幸福とか胡散臭いのは、まぁ実際に動く毛玉を目撃してしまうと、本当かも知れないと思ってしまうが。


「えっとそれで?」

「うぅん…まぁ特に害はないです。というか、カナコの部屋が見た目より汚れていなかったのも、彼らのおかげかも知れませんね。」

「というと?」

「ケセランパサランは、虫や人間の食べ残しなんかを中心に有機物ならなんでも食べるんですが。多分カナコの部屋のそういったものを彼らが食べてくれていたのかも知れません。」

 …つまり?


 …めっちゃ益虫やんけ。


「まぁそうですね。昔の人も、見つけたら捕まえて飼育していたと言いますし…。」

 なるほど流石、先人の知恵である。

〜次回予告〜

カナコ:「…益虫とかいったけど、虫とか生ゴミとか食べてるのかと思うと、なんともいえない気持ちになるな…。」

ケセランパサランたち:「パサ?」

カナコ:「…そうきたかぁ。確かに新キャラだけども!次回予告に向いてなさすぎる!」

ケセランパサランたち:「ケセ?」

カナコ:「うぅんしかも見た目も可愛いんだか、気持ち悪いんだか。」

ケセランパサランたち:「パサ!」

カナコ:「ん?今なんとなく怒ってた?」

ケセランパサランたち:「パサパサ!」

カナコ:「なんかそうっぽい?でも何をいってるのかわからないからなぁ…。」

ケセランパサランたち:「ケセっ!」

カナコ:「…結局何もわからん。まぁいいか、次回は第三十話:『身近すぎて忘れがちだけどすごく大切なこと。』をお送りします。」

ケセランパサランたち:「ケセ!パサ!」

カナコ:「お楽しみにっていったのかも知れない…?まさかね?」

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