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第五話:今日の日はよく死にかける日だ。

 そのドラゴンは、どうやら私たちに気がついたようで、持ち上げた鎌首をこちらに向け、じっと凝視している。


 私は自称魔法少女のニコを見た。「これはまずい」とかなんとか怖いことを言っていたが、この状況を解決することが彼女にできるのだろうか。

 正直、下級の防御魔法なんかでは、落下物は防げても、ドラゴンの攻撃は防げないだろう、と私の長年のオタクとしての直感が語っていた。


「正直、私の使える防御魔法では、落下物は防げても、ドラゴンの攻撃は防げないですね。」

 心を読んだのか、それともたまたまなのか、私の心の声とほとんど同じことをいうニコ。


 だが重要なのはその発言の形式ではなく中身だ。

 ドラゴンの攻撃をニコが防げないということは、私たちはやはり死ぬということに他ならない。


「時間を止めるとか?」

「あれは、この世界にいる間は何に対しても効き目がないんですよう。」

 思いついたことをとりあえず言ってみたが、すぐに却下される。流石に素人の浅知恵ではその辺はどうしようもなさそうだ。


 ここは初めに使った魔法で危機回避して伏線回収するところだろうがっ、と現実世界に心の中でとりあえず文句を垂れておく。


 そんなやりとりをしている間も私たちはほとんどドラゴンから目を離せなかった。一方のドラゴンの方も、こちらを視界から外してくれない。

 目が悪いのか、あるいは出方を伺っているのか、何かをさしはかっているのか。ドラゴンは目を細めてこちらをみている。

 その表情は笑っているようにも見えなくもないが、残念ながら、明らかすぎる敵意が笑っていないことを示している。


 ドラゴンの口が、突然開く。

 本当に笑っているみたいだ。

 だが、そうではないことはなんとなくわかっている。


 長年のオタク生活で無駄に察しが良くなっているみんなにはわかるはずだ。

 長年のオタク生活で無駄に察しが良くなっている私にもわかる。

 ドラゴンが口を開くときは…。


「…火が。」

 ドラゴンの大きく開いた口の奥が、みるみる間に赤く燃え上がる。


「避けてくださいっ。」

 ニコが私に飛びつき、押し倒すが、ドラゴンの炎の範囲は、そんな程度で避けられるほど狭くはなかった。

 扇状に広がる炎が私たちを射程に捉えた。


 今度こそ死んだだろ。


 これはもう、私の人生は転生系のラノベ確定ですわ。


 そう思って私は目を閉じた。

 だが、大方の期待を裏切って、私の身には何も起こらなかった。


 何も感じられない速度で死んだのかもとも思ったが。

 だとしたら、肉体の感覚があるのはおかしい。

 恐る恐る目を開ける。


 そこには、火を防いでいる盾があった。性質は先ほどニコが出したものと似通っているようだが、それよりはるかに大きい上に、私たちを囲うような球形をしている。

 それを杖から出している人影が見える。


 一瞬ニコかと思った。

 もしや必死になった時に本性現れて覚醒するタイプかと思った。


 だが違った。

 ニコは先ほどと同じ私の横で、複雑な表情で人影を見ている。


 そうこうしているうちに、炎は一旦途切れた。

 炎を吐き切ったのか、攻撃が無駄だと感じたのか。

 どちらにせよ、ドラゴンはこちらを警戒するように一旦距離をとったようだ。


 ドラゴンが一歩遠ざかるだけで、周辺にある巨大な瓦礫がわずかに宙に浮くほどの振動がある。


 人影が杖をシュッと一振りすると、球形の盾は杖に吸い込まれるように消えた。

 そして、その人物は開口一番、こう言った。

「はっ、この恥晒しが。」

 と。

〜次回予告〜

ニコ:「…。」

カナコ:「これはイキったライバル登場ですか?」

ニコ:「いやぁ、ライバルというか、なんというか?」

カナコ:「早い段階で登場するサブキャラは、因縁深いフラグでは?」

ニコ:「因縁…という感じでも…?ううん?」

カナコ:「どっちにしても、ああいうタイプに目にモノ見せなきゃ納得いかないのが、オタクという人種なのですよ!」

ニコ:「えぇ…。まだ一言しか喋ってないのにひどい扱いだなぁ。」

カナコ:「SNSだって一言で炎上したりするんですよ!?」

ニコ:「なんでそんな必死なんですか…。」

カナコ:「というわけで、『第六話:跳んでも跳んでも瓦礫の山。』をお送りするぜ!イキったサブキャラに私が天誅を下します。」

ニコ:「嘘予告しないでくださいよう。っていうか、カナコさんって口調が安定しないですよね?なんでなんですか?」

カナコ:「それもオタクの悲しきサガよ…。」

ニコ:「そうなん…です…ね…?」

カナコ:「てなわけで、次回も、絶対見せくれよな!」

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