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第二十五話:みんなニコニコ魔法少女派遣機構!

 我ながら自分の発言を疑いたくなる字面の質問だが、こうと表現するより他にないのもまた事実。

「フッ。」

 と思っていたら、サトミさんに笑われた。

 こっちだって笑いたいさ。

 昨日の午前中までの自分だったら、こんな質問聞いた時点で、こいつやばいやつだとか、痛いとか厨二病とか、過去の傷が抉られるとかいって全力で無視していたはずだ。


「いやいや、ごめんごめん。まぁ、何も聞いとらんかったら、そういう考え方になるよな?」

 よっぽど私が仏頂面していたのだろう。

 サトミさんがフォローを入れてくれる。

 その辺はさすが大人で、ちょっと笑いはしたけれど、すでに真面目な表情に戻っている。


「うぅん、なんていったらええんやろな?人間界っていう言葉は確かにウチらの中でも使うんやけど、内と外という感じではないんよな…。」

「そうですね、いうなら、背中合わせで同時に存在しているって感じなんですよ。」

「いい例えだね、ニコちー!」

「ニコ…え?なんて言いました!?」

 ミサトさんとニコの説明にアカネちゃんが首を突っ込み、全てがバラバラになっている。

 しかもニコの例えは確かに訳が分かってから聞けばいい例えな気がするのだが、まだ私には理解できていない。


「ファンタジーの世界やと、人間界に対して、魔術界とかそういうキッパリした区分があるやろ?でも現実にそんなんはないんよ。簡単にいえば、すぐ隣に住んどって普通のサラリーマンやと思っていたおっさんが、魔法を使える可能性もある…っちゅう感じやな!」

 なるほど。

 しばし腕を組んで、下を向いて考え込む。

 それだとわかるようなわからないような、わからないような?

 とはいえ、家の近くの普通の神社の娘さんと息子さんだと思っていた人物が魔法少女の契約者だったのだから、その説明は説得力がある。


「つまり、そういった人も私たちに混じって普通に生活している…。」

「そういうことだねん!」

「人間界に人間以外のものが紛れ込んで生活しているから、人間界があっても、魔術界的なものはないってこと…ですか?」

「そういうことやな。流石はカナコちゃんや。」


 全て言い終えた後に三人を向き直る。こちらを優しい目つきで眺めている二人の横で、ニコが首肯している。


 いつの間にか食べ終えていた一個目のおにぎりの袋をとりあえずジャージのポケットに突っ込み、二つ目を取り出し開ける。

 ニコを見ると、野菜の束が半分くらいになっている。

 中高時代には昼ごはんにお弁当なり購買部のパンなりを食べながら話している人たちを見ながら、よく二つが並行してできるものだと思ったが、やってみれば自分もできるものだ。

 いや、行儀的にはあまり良くないのはそうなのだが。


 ご飯を食べながら楽しい会話、そんな現象が私の身の上によもや発生するとは…。

 ん?楽しい?

 それは何か違うな。ついさっきも死にかけたばっかりだし…。


 次は何を聞こうかと思いながら、二つ目のおにぎりを頬張る。

 さっき食べたのは何味だったか。今食べているものも味がよくわからない。

 おそらく考えること話すことに神経がすり減っているせいだ。


「…そういえば、魔法少女の定義がまだいまいちわからないような…?」

 と、私は思ったことをそのまま口にした。

 ニコからその存在を知らされ、チサトから概要は聞いた。

 だがそれらは形骸のようで、核心ではなさそうだった。


 目的はわかった、システムの説明もある程度は聞いた。

 だが結局魔法少女とは何者なのだろうか?


「せやなぁ…。派遣機構についてはチサトが説明したやんな?」

「派遣機構は幻獣とその幻獣にゆかりの深い家系の集合体…ですよね?」


「そうや。組織自体はだいぶ昔からあるんやけど、名前がついたんはほんまに最近。親しみやすい名前をと…まぁ、あんまりいい名前とは思えへんけどな?」

 やっぱりそうなのか。

 内部からしても、この名前はダサいのか…。

「あはは…。」

 ニコが私の心中を察して苦笑いする。


「まぁでも呼称はある意味どうでもいいんよな。多分カナコちゃんが聞きたいんは、その具体的な意味やろ?」

「えぇ…多分そうですね。」


「ここでいう魔法少女は魔法を使う幻獣側のこと。ただし、必ずしも少女やない。あくまで俗称で、歳いっとる人もおるし、男もおる訳やな。」

 訳やな。と言われても困るが。

 魔法少女(独身・36歳・男性)とか犯罪臭しかしない肩書の人物が存在するということか?

 まぁ男の魔法少女(?)である猫耳の存在も知っているので、正直想像はできていたが…。


「一応少女っちゅうんも全く意味のない名前ではないんよ。幻獣の中には歳をとらん種族もおるし。このアカネも…何歳やっけ?」

「忘れちった。」

「生まれたのいつやっけ?」

「江戸時代!」

 そんな「今何歳?」「5ちゃい!」みたいな感じで言われても…。

 嘘だろ…。ぴちぴちの現役ギャルにしか見えん…。

 まぁこういう世界観なのだ。一人ぐらい年齢詐称キャラがいるだろうとは思っていたが…?


「幻獣の中でも特に女性の方が強い力を持って生まれやすいっちゅうんもある…。はるか太古から考えると、女性がシャーマンやった時期もあるしな。

 ただ別に普通に歳をとる種族もぎょうさんおるし、男性でも強い力を持って生まれる子もいくらでもおる。」

 つまり、年齢も性別も関係ないけど親しみやすいから魔法少女なのか。

 世の中狂ってるな…。

〜次回予告〜

カナコ:「衝撃の事実が次々と明るみに出ていますが、私は元気です…。」

アカネ:「がんばれ!負けるな!元気出せ!」

カナコ:「そんな殻に入っちゃったカタツムリに顔出させようとする曲みたいなノリで言われましても…。」

アカネ:「え?」

カナコ:「というかアカネちゃんって、すごい年上だったんですね。全然そうは見えませんが…。」

アカネ:「むむ?こんなに最後まで威厳たっぷりなのに!?」

カナコ:「最後って…。というか威厳?」

アカネ:「やややや!今失礼なこと考えたな!?」

カナコ:「アホの子なのに勘はいいとは…。」

アカネ:「それより、次回は今日の続きの話!」

カナコ:「流石に世界のお話を一話分では引き出しきれなかったな…。」

アカネ:「というわけで次回は第二十六話:『こちら側の世界にようこそ!』をお送りするよん!」

カナコ:「お楽しみに。」

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