第四十五話:試運転をしよう!(前編)
私はその杖の、持ち手の部分?を手に取った。
先ほどは、拾った木の枝そのままでも杖になるようなことを言っていたけれど、いざ手に取ったその杖は、まさしく「魔法の杖」といった感じだった。
持ちやすくしなやかな手触り。
片手に収まるより少し長いくらいだろうか。
なんというか…めっちゃ振ってみたくなる。
これはもう、杖、というか棒状のもの全ての宿命な気がする…。
だけど、さっきの…そういえばなんだったのか聞きそびれていたあの試験空間の中の杖と、ちょっと違うような…。
というかもしかして、杖の適性の検査ってさっきまでの試験空間で…?
そうだとしたらなかなか利口な…という言い方が精霊に対して正しいのかわからないが…やり方だ。
「わぁ…綺麗な杖ですね…これって、杉の杖なんですか?」
ニコがそう尋ねた。
この白蛇の精霊が住んでいるのが杉の木なので杉の杖…。
ニコの杖と違うとは思ったが、そう言われてみるとそうだなとは思う。
杖は元々、木の精霊にもらうものだっていう話だったし、そうなると、その精霊がついている木の枝の杖をくれるっていうのが普通なのかな?
「いや、それは松だな。松は寒さに強いからな。」
「「?」」
私もニコも、寒さに強いの意味がだからなかったが、しばらくして私は気づいた。
それは、たまたまなのか必然なのか、ついさっき追体験したからなのだが。
「それって、あの剣の冷気と関係が…?」
「うむ。その剣に関しては私にもわからないが、お前の性質も剣と同じ冷気のようだからな。
その剣を渡したヌシも、お前ならそれを使いこなせると思って渡したのかもしれん。」
「冷気の剣…というか、性質って?」
「うむ。まぁそれほどはっきりしたものではないが、その者の持っている魔法の適正か…。」
それはつまり、ファンタジーとかでよくある?
種族的な?属性的な?タイプ的な?
そういうやつですか!?
「というより、そもそもどんな者でも、生きている限りは全ての性質をある程度均一に持っているものなのだが…。
それでも個性として、強い性質と弱い特性があるのだ。それがいうなら魔法の適正…。
とは言っても、その性質の魔法しか使えないというのでもないし、逆に弱い性質の魔法が使えないというのでもないがな。」
「それはつまり、育て方次第でどんなものにでもなれるってこと…?」
「育て方って…自分の話ですよね…。」
「まぁ、適正があるかどうかと使えるかどうかは別だ。
事実、人間の場合は魔法を使えることからして稀だからな…。」
それは…。
いわゆる才能の持ち腐れってこと?
いやそもそも人間には、魔法を使えるような魔力がないって話だったかな?
ということは、属性は振り分けられてるけど、MPは0という状況なわけか…。
悲しい…。
たまたま私はそうじゃなかった…いや、そうじゃなくなったわけか…。
そもそも、そうなっていなかったら、魔法が必要な状況にはならなかったのだろうが…。
「さて、これでお前は杖を手に入れたわけだが…このまま持って帰るだけというのもつまらないだろう?」
「え?」
突然言われた言葉に反応ができなかった。
「さて、どうしようかな…。」
そう言って白蛇は鎌首をもたげる。
少なくとも見た目で言えば、その様子はまさしく獲物に狙いを定める蛇である。
それに、ついさっきまでの試験というのもなかなかのものだったので、不安だ。
少なくともただの試し切りにならないのは確かだろう…。
〜次回予告〜
カナコ:「なんというか、魔法の世界に来て試練の連続…なんでやろ。しかもこれまでとは比較にならないくらいお短期間で死にかけているような…。」
ニコ:「ま、まぁでも、最低限は安全対策しているんでしょうし…いや、わからないですけど…。それに、カナコは特殊なパターンですから、コボクノセイさんも気を遣ってくれているのかも…しれませんよ?」
カナコ:「ニコ、発言の自信のなさが言葉の端々から溢れ出ちゃってるから…。」
ニコ:「あう…いやでも確かに、正直ここまでやる必要があるのか、とは…。」
カナコ:「まぁでも、長く生きてるんだろうし、人間や幻獣とは違うし、感覚が違うのかな…?」
ニコ:「あはは、まぁ確かに、人間と幻獣でも感覚違ったりしますもんね。」
カナコ:「それは確かに…これまでもニコたちと生活するのもかなりギャップあったし…?でもニコは…ニコだからなぁ…。」
ニコ:「そ、それはどういう意味ですか!?」
カナコ:「言葉通りの意味なんだけど…。そ、それはそれとして次回は『第四十六話:試運転をしよう!(後編)』をお送りします。」
ニコ:「お楽しみに!って流されませんよ今日は!」
幕




