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第二十八話:昇れ進めこの世界の真理へと!

「はい。」

 ニコがちょっと警戒しながら答える。

 私や他の面々も小さく会釈したり挨拶をする。


「私は派遣機構員の望月リコ。普段はアカネ町、シブヤ町、ミヤド町の管理をしてる。

 ただ、今回は魔道具開発部兼、移動の足兼、案内役の全てが一人でできる便利屋として呼ばれたんだけどね。」


 望月リコと名乗ったその女性は、私たちに数歩近づいてきて、私の前に手を差し出す。

 私の前に差し出された手を、私は曖昧に握り握手する。


 初めからややこしい言い回しだけど、要はこの人がミョウガの主人で、チサトやミサキちゃんの上司…。

 ただ今回は、上司としてではなく、一機構員としてここにやってきた、と言うことか。


 というか魔道具開発って何だろう?

 そのめっちゃ興味惹かれる単語は…。

 派遣機構は魔道具を回収したりしてるみたいな話はミサキちゃんがしてたけど…。


 望月さんがニコとツムギちゃんとも握手を終える。

 すると、私たちの足元あたりにいたミョウガが跳ね上がり、彼女の腕の中に飛び込んだ。

 彼女がそんなミョウガの額のあたりを撫でると、ウサギの姿はぽんっと言う小さな音と白い煙と共に消えた。

 望月さんの元には、代わりにウサギの形に切り抜かれた紙だけが残っていた。


「…とりあえず移動しながら話そうか?」

 初めてみる現象に、驚愕している私に望月さんが声をかける。


 一人で歩き出す望月さんを追いかけて私たちも歩き出す。


 望月さんの足取りは段々と校舎の近づいていくが、どうやらその中に人影はなかった。

 時間は大学の三限終わりだから…仮に中高なら五限?六限?

 流石にその記憶ももう定かではないが、まだ授業が終わるには早い時間な気がするのだが…。


「今日は演習日なんだよ。それでみんな派遣機構の方にいってるから、今日はここに生徒はいない。」

「演習って、どんなことを?」


 私のその質問に、望月さんは振り返って一瞬じっと私の目を見てから、答える。


「人間で言うところの体力測定みたいなやつから、実践型の仮任務みたいなのもある。

 成績で上位になればそれだけ選べる道も広くなる。…まぁ管原君のような天才タイプは、入学前に特務隊に引き抜かれたりもするけどね…。」

「はぁ…。」


 なんと言うか、世知辛い世の中だ。

 魔法が使えても、結局は試験やテストで「できるかできないか」を問われ続けるのか…。


 思えばシノブ、ツキヨ、チサトにミサキちゃんやサトミさんも「優秀だった」と言う話を聞いている。

 魔法に関してはどうかわからないが、少なくとも高校生の時点で学業と町を守ったり人を守ったりという仕事を両立しているだけでも私のようなその辺の大学生よりは優秀かもしれない。

 いや、私を一般的な大学生と捉えるかどうかはもはやだいぶ諸説あるが…。


 とはいえ、そんな人たちにばかり囲まれていたのであまり意識しなかっただけなのかもしれない。

 結局、「学校」があって派遣機構と言う「社会」の中で生きていく以上、条件は私たちと同じなのだろう。

 ただ使っているツールが違うだけだ。


 ニコやツムギちゃんだって貴族なわけだし…。

 今回たまたま別の社会の住人同士だったから出会えただけで、本当は私なんて遠く及ばない人たちなのかもしれない…。


「わ、私は…そんなんじゃないですよう。」

 ニコが困ったような顔でそういった。


「ユニコーン族の読心能力か…。でもみんな上手くやれているようだね?」

「え?…いや、はい。」


「ま、私たちはユニコーン族でも心が読めないらしいしね。」

「二重契約の影響だね。論文で読んだことはあるけど、実際の報告を見たのは初めてだったよ。」

 論文とか、報告書とか、本当に現実世界と変わらないよな…。


「シノブさん、ちゃんと報告書あげてたのですね…。」

 ツムギちゃんが真顔でとんでもないことを言う。

 まぁ確かに、シノブはそういうマメさはなさそうなイメージだけど…監視しててもなお気づかない感じなのか?


「俺は直接上に送ってるんじゃなくて、チサトに提出してるだけだしな。今時簡単なフォーマットの書類くらいはスマホでも作れるし…。」

「だから君の報告書はいつも簡素なんだね。」

「伝わることが大事だろ…。」


 シノブの喋り方はフランクな感じだ。

 ヤミさんの時も口調こそ似たようなものだったが、雰囲気からは緊張のようなものを感じた。


 今回はそういったものがないと言うことを考えると、本当に古馴染みなのだろう。

 まぁ仮に望月さんが前から同じ職についていたとすると、四年前まではシブヤ町A地区の守護者だったシノブと知り合いでもなんら不思議はない。

〜次回予告〜

リコ:「いやしかし、まさか私の担当の地区で<収束点>が現れるとは…。」

ニコ:「やっぱり珍しんですよね?」

リコ:「まぁ国内でも常に二、三人はいるもんだから、確率的にもありえないほどではないんだけど…まぁ今回は事情も特殊だしね。」

ニコ:「いつもお世話になっています。」

リコ:「いやいや、私は事務処理と、何かの時に責任負うくらいで、実際に働いてるのは音羽君や花崎君のような守護者、それに派遣員の人たちだからね。」

ニコ:「そう言うものなんでしょうか…。」

リコ:「まぁでも問題が表面化してきたら私も動けるようになるからさ…ってそうならずに済むのが一番なんだけどね?」

ニコ:「難しいんですね…。」

リコ:「派遣機構の仕事はないときの方が世の中平和って感じだからね…。と、言うわけで次回は『第二十九話:何かを手に入れることは何かを失うこと。(前編)』をお送りするよ。」

ニコ:「お楽しみに!」

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