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第二十三話:ずっとぬるま湯の中にはいられない。

「ごめなさい、騒がしくて…。」

「いや、それは別に…。」

 コミュニケーションに息も絶え絶えな私を、みかねて話しかけてくれたらしい伊藤さんは、さすがのフォロー力である。


「美術学科って…なんていうか…個性的だね?」

「そうかもしれないですね…。あ、でも話してみると案外普通ですよ?」

 いや、私は話してみて言ってるんだけどね?

 百歩譲って横山さんはただギャルなだけだとしても、他の二人はなかなかいない感じだよね?


 なんというか、派遣機構のメンツも決してキャラが薄い方ではないと思うけど、なんとなく私と同族っぽいというか…。

 いや、それは向こうにかなり失礼だとしても、なんというか、根が暗そうというのか…。

 その言い方は余計失礼かもしれないけど…。


 なんとなく影があるんだよな。

 だから話しやすいってところはある…。


 まぁでもそれは、誰しもそうというか…。

 例えばあのマナでさえ、姉や家族の問題を抱えた上であの性格なわけで。

 人は表面的な性格によらないというのは確かにあるよな…。


 となると結局、横山さんたちも親しくなればそういう面も見えてくるのかな?

 そうだとすれば確かに、伊藤さんのいうとおり、「意外と普通」なのかな?


「オカケンの人たちの方が、世間的には変わってるんじゃないかな?」

「それはそう。」

 思わず肯定が口から出てしまった。


 学生中に恐れられている教授とマナ。

 実際の年齢よりもはるかに精神年齢が高いエレナちゃん。

 厚着お化けの円谷先輩。

 コミュ障の男性二人…。


 そう考えると、伊藤さんはあの中で唯一まともな人材なのでは?

 ミサキちゃんや、後から入った私たちみたいに派遣機構関係者でもないし…。


 伊藤さん自身はあまり変わってるって感じじゃないけど、私も含めて、何かがおかしい人を集めちゃうタイプの人なのかもしれない。


「あ、そうだ、これから私たち、カラオケ行くんだけど、よかったら二人もどう?」

 ハクアと話していた横山さんが、私たちを誘ってくれる。

 そういえば、伊藤さんが制作もせず、二つ入っているサークルにも出ないで帰るっていうのは不思議な感じがしたが、そういう用事があったのか…。


 まぁそういうものの比重って人によるだろうけど、友達付き合いも大事だもんなぁ。

 まぁ私は比率で言うと学校生活1:趣味99:友達付き合い0という極めて極端な人生を送ってきたわけですが?


「あぁ、えぇっと…。」

「確かに、二人がどんな曲を歌うのか興味あるっすね。」

 それはなにに対するどういう興味?

 中世の公開処刑ってどんな感じだったんだろう的な?


 というか当然私はカラオケなんて行ったことがないので、歌える曲なんてないが?

 なんとなく覚えているのも、せいぜい最近見たアニメのアニソンくらいだろう。


 まぁ確かに、放課後にカラオケとか、そういうシュチュエーションに全く憧れがないというわけではない。

 なんかいかにも友達っぽいし、アニメでも不自然によくある展開だし。

 いや、これに関しては、不自然だと思うのは、私に経験がないからというだけな気もするけど…。


 それに横山さんたちも、普通に喋ってくれて、当初恐れていたほどの気まずさはない。

 それでもいきなりカラオケに誘うっていうのは結構フットワーク軽いなとは思うけど…。


 でも、そうじゃない。

 今日の私には杖をもらうというやるべきことがある。


 さすがというべきなのか、伊藤さんの友達はフレンドリーでつい流されそうになるが、落ち着くんだ。


 今の私は命を狙われている。それはもはや、紛れもない事実だ。

 しかも自分自身にもどうやら誰も詳細がわからない謎の能力が秘められているかもしれない。

 なんだそりゃ、私のほうがよっぽど厨二病じゃねぇかと思うが、事実である以上は仕方がない…。


 そんな私が、さすがにただのほほんと学園生活を送るというのには無理がある。

 それに、杖をもらうのも楽しみなんだ。


 ただ、もし仮に私が、普通に大学生だったらこうやって友達が普通にできて、普通の学園生活を送れる可能性もあったのだろうか…。


 だが、もしニコに出会わなかったら、事件に巻き込まれなかったら、もしかしたらオカケンに入ることにはならなかったかもしれない。

 そうなるとやっぱり、今回の一件が私にこのチャンスを与えているのも事実だ。

 それに、そもそもニコがいなかったら、あの日、シブヤ町駅前の交差点で、交通事故で死んでたしな…。


 …そう思うと、複雑な心境である。

〜次回予告〜

シゲコ:「何か、逆に気を遣わせちゃったみたいで、ごめんなさい。」

カナコ:「いやいやいや、誘ってくれたのは嬉しかったんだけどね?」

ミカン:「それならよかった、また誘うね。」

カナコ:「…そういえば、横山さんって見た目ギャルっぽいのに、ギャル語使ってないですよね?」

シゲコ:「そういうのは、案外イメージが先行してるだけで、実際に使ってる人ってあんまりいないんじゃないかな…。」

ミカン:「ギャル語?」

カナコ:「そもそも伝わってないだと?」

ミカン:「ちょーやばくね?」

カナコ:「ギャルなのにギャルのこと馬鹿にしてたりします?」

シゲコ:「…うまくやっていけそうで良かったです…。」

カナコ:「というわけで次回は『第二十四話:断るという選択肢が学園生活を全力で邪魔している。』をお送りします。」

ミカン:「バイブスあげてこう!」

カナコ:「なんか逆にごめんなさい。」

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