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第十四話:何にもない昼下がりのお話。(後編)

 公園に向かうにせよ、オカケンに向かうにせよ、方向は裏門方面で同じ。

 私とハクアは裏門方面へと歩を進める。


 相変わらず雲は不穏な様子だが、外に出てみると雨は一旦止んだようだった。

 …雨降った直後の公園って、座れなさそうだけど、大丈夫なのかな…?


 そんなくだらないことを一瞬思ったが、そんなことはどうでもいい。

 それよりも、道すがら、私はふと浮かんだ疑問をハクアに尋ねてみることにした。


「…ハクアは、今回の任務、どう思う?…というか、どう思ってた?」

 間接的にではあるが、シノブがどう考えていたか、というのは聞いた。

 リンネとの因縁、その解決のために…。


 ではハクアは?

 ニコやツムギちゃんは、今回の内容の真相は知らない様子だった。

 だが、シノブが考えていることを、少なくともハクアとコクウは知っていたはずだ…。


 この状態になって初めて、推論が正しかったことはほぼ証明されたと言っていい。

 もちろん、リンネが私の夢に出てきた、というだけでは彼女がこの件に関わっているという証拠にはならないだろうが…。

 仮に私が見たのが本当に彼女の姿なら、今朝コクウが言っていた通り、少なくとも彼女との関わりのある人物が関与していることに間違いはない…。


 逆に、シノブたちが派遣機構へ呼び戻された初めの時点では、今回の件の真相は彼らも知らなかっただろうが。

 その時と、今、ハクア個人はどう考えているのかが聞いてみたくなった。


「どう思ってた?…まぁそうね、私もお人よしじゃないし、ここまでやられてただ黙っているつもりはないわ。」

「初めから、リンネは関わってるって、思ってた?」


「ミクニ…シノブの弟、現在の派遣機構の首領ね。

 あいつが私たちを呼び戻した時点で、私たちに関わる大事だってわかってたからね。」

「現在の首領って、そんなにすごいの?」

「抜け目がないって意味では、少なくともシノブより上でしょうね。」

 それはシノブがかなり抜けているからでは、と思ったが、話がめんどくさくなりそうなので、それは口にしない。


「派遣機構には、シノブよりもすごい人もいるんでしょ?ヤミさんとか?

 …というか、昨日のやつはわからないけど、それまでの相手って正直シノブじゃなくても倒せてたと思うんだけど…。」

 これは、わりと妥当な疑問だと思う。


 効率を考えるなら、余計に優秀な人材をわざわざ採用する意味はないだろう。

 逆に、相手を高く見積もるのであれば、一度リンネに敗北しているシノブを選ぶべきではないのではないか、ということだ。


「まぁ、優秀な人材は引く手数多だし、特に四年前の事件で自由に動ける特務隊員で優秀なのが根こそぎ死んじゃってるからね…。

 暇だったのが、追放されてたシノブくらいしかいなかったのかもね。」

「そんな消去法みたいな…。」


 しかし、こんなところでも影を落としている四年前の事件…。

 まぁ人手不足っていうのは前にも聞いたよな…。


「今回の任務は、何だかんだめんどくさいしね…。

 それにあんたも、いきなり髭のおっさんとかが護衛に来たら、嫌でしょ?」

「それは…確かに?」


 一応、今のようにこうやってわりと密接に生活することを考えた上で、年齢が近い人とか選んでくれたりしているのかも?

 いや、ハクアは年齢近いのは見た目だけだけども…。


「じゃあさ、ハクアはシノブのこと好きなの?」

「は、はぁ!?」

 突然の質問に、流石のハクアも神妙な雰囲気を崩した。


 なんでもいいけど、一千年くらい生きてるとはとても思えないくらいウブな反応だな。

 それはそれで逆にどうなのよ?


「なんでいきなりその話なのよ!?」

 ハクアは逆ギレ気味に私に尋ねる。

 何その可愛い反応…。

 コクウとかにも同じ質問したくなってきたわ。


「いや、一応命の恩人なわけでしょ?」

「あんたそれは、漫画の読みすぎでしょ…。」

 そう言われるとそうな気もするけど、今の反応は少なくとも脈くらいはありそうだったけどね?


 やっぱり、楽しく談笑と言えばの恋バナである。

 実際人生でしたのは初めてだけど…っていうか、今の稚拙なやり取りを恋バナと呼んでいいのか?

 ハクアのこと言ってたけど、私は私で、二十年近く生きてきて、この人生の経験値はどうなんだって思えてきた…。

 今のやりとりくらいなら、小学生でもできそうだったけど…。


「そういうあんたはどうなの?なんか面白い話とかないわけ?」

「え…?」

「なんでそんな意外そうな顔してんのよ…話振ったからには、振られるもんでしょこういうのは…。」


 ハクアに呆れられた…。

 思った以上に精神的なダメージが入るな…。

 あのハクアに常識を諭されるとは…。


 というか正直、自分が誰かを好きになるとかいうことはありえないものとして人生を過ごしてきたので、自分に質問が帰ってきた時、話すことが何もない。

 単純に好きとか嫌いとかいう次元にたどり着くほど他人と関わってきてないというのもあるか…。

 容姿の話をするにしても、現実の人間なんて二次元のキャラの劣化でしかないわけだし…。


「…何もないかな。」

「まぁ、そうよね…。」

 いや、そうなんだけどね?

 そうやって言われるとそれはそれでムカつくな?

〜次回予告〜

カナコ:「いやぁ、今までみられなかったハクアの一面が見られて私はすごく満足ですね。」

ハクア:「あんたは期待を裏切らない感じよね。」

カナコ:「それはどういう意味カナ?」

ハクア:「何そのちょっと古い時代の文字表現は…。」

カナコ:「え…つっこむところそこ…というかハクアにとっては別にそんなに昔のことじゃ…。」

ハクア:「あーあーもういいって!何回やるのよその流れ!?」

カナコ:「ということで、次回は『第十五話:この世は割り切れないことばかり。』をお送りします。」

ハクア:「お楽しみに。」

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