第十一話:単位取得は協力プレーでお願い!
結局一限の授業は、授業の進め方くらいしかわからないままに終わった。
流石に、一年座学で学んだだけの言語は難しい。
授業の出席の管理は、オンライン上…ってまぁこれだけの人数がいる授業でアナログな方法で出席とる方が無理ってものだと思うけど…。
指示された通りに出席を提出し、とりあえず一安心。
でも課題の説明がよくわからない。
よくわからないのは、自分の頭が回ってなかったせいなのだろうか。
こういう時に聞ける相手がいるとありがたいのだが…。
ハクアはいるけど、寝てたと思うから参考にならないし…。
見回してもこういう時に限ってマナもいないし、伊藤さんもいない。
二人とも選択言語が違うのか、あるいは時間割の関係で 別の時間のやつをとってるのか…。
ハクアは自分の腕を枕にしている状態から、顔だけを上げて、細い目で正面をぼんやり見ている。
というか、授業が終わった瞬間に起きることってあるらしいけど、それってわりとすごい特技だよな。
…課題についてはわからないままだが、教室移動が別棟なので、急いで支度をする。
まぁなんとかなるだろう。
周りの様子を見るに、少なくとも今すぐ提出しなければいけない感じではないっぽいし…。
「ハクア、行こう。」
「次は美術史?」
「デザイン入門、美術史は三限。」
「美術史の学科なのに、デザインやるわけ?」
「まぁ、他の学科の授業も少しは取れるからね。」
美術史は歴史系だからなのか、他の学科に比べると他学科の授業をとっている余裕がない。
これは入学時に配られる資料を読んでいて知ったことなのだが…。
とはいえ、卒業単位の中で数単位は別学科の授業を受講することが義務付けられている。
そのため私はデザイン学科のデザイン入門を今年の時間割に入れているのである。
まぁ興味がないジャンルでもないし。
それに、美術と通ずることもあるので、最悪テストやレポートでも美術の知識でゴリ押せるだろうという打算的な理由もある。
というわけで、デザイン学科もある東棟の、273号室に向かう。
東棟は二つあり、大学の一番辺境、というか目立たない位置にひっそりと立っている。
ただ、建物は最も新しく、入っている学科も新設の学科が多い。
今から向かうデザイン学科も、近年美術学科・美術史学科から独立する形でできた、この大学ではわりと新しい学科だ。
「大学で勉強して何になるのかしらね?」
東棟に辿り着き、七階に向かう途中のエレベーター内で二人になった時、ハクアがふとそんなことを言った。
そんな、思春期の拗らせ受験生みたいなこと突然聞かれても?
「えぇっと…?」
「だって、直接職業になったりってしにくいでしょ?
デザインとかだったらアレだけど、美術史とか、民俗学とか、哲学とか…。」
「学芸員とかはあるんじゃないかな…研究職とか?」
って言っても、私は学芸員資格の授業も今のところとっていないし、はっきりしたことは言えないけど…。
というか、私や円谷先輩だけでなく、シノブやコクウにも喧嘩売りに行くのはなかなか勇気あるな…。
そんな二人に命助けられたんじゃないんか…。
というか、ただでさえ現状を捌くのに精一杯な今の私に、将来への不安とかいう新たな問題を提起するの、やめてもらっていいですか…。
〜次回予告〜
カナコ:「ああぁぁぁぁあぁ。」
ハクア:「何いきなり?それはどういう感情なの?」
カナコ:「え?…虚無?」
ハクア:「まぁ人間って、自分の人生を自分で決めなきゃいけないし、めんどくさいわよね。」
カナコ:「逆に、幻獣はそうじゃないの?」
ハクア:「まぁ派遣機構に所属してるやつは、ある意味就職先決まってる様なもんだし…まぁ希望があれば人間界で他の職につくことはできるらしいけどね。」
カナコ:「そうなんだ…でもハクアの生まれた時ってまだ派遣機構とかなかったでしょ?」
ハクア:「さらっと、心を抉る様なことを…そうね、あの頃は別に、狩猟採集でも死ぬことはなかったし…。」
カナコ:「え!?古代!?」
ハクア:「流石にそこまで年くってないわ!…ということで次回は『第十二話:イングリッシュ使えばスタイリッシュだと思ってるだろ!』をお送りします。」
カナコ:「お楽しみに。」
幕




