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第四話:これだから物分かりのいいオタクは嫌いだ!

 さぁ冷静になって考えよう。

 あたかも冷製スープかのように。

 それは字が違うなぁ。


 今までのやり取りで「ユニコーン族」の謎は解けた。

 今の私には、全てがマルワカリータだ。


 つまりよくわかっていない。

 とはいえ、今彼女から引き出せる情報は引き出したのではないかと思う。

 詮索しようにも詮索するのに必要な情報が足りない感じだ。

 言うなれば、薄味の下手なダイエット食のように、何が足りないのかわからないが、とにかく何かが足りないのだ。


 であれば、あと考えるべきは、「魔法少女」云々の話と、彼女の目的だ。

 さて、どっちから尋ねてみるべきか。

 付け合わせ以外相違点のないメインメニューを二者択一するような、どっちでも一緒だけど間違いたくない、と言う絶妙な塩梅だった。


 だがそんなことより、私の頭の中で謎のフルコース料理が出来上がるまでに、この状況を整理して、さっさと立ち話を終わらせたかった。


 思い返せば朝、何も食べずにここまで来て、今は昼時。

 ろくな運動量がない普段ならまだしも、慣れない外出のせいで、そろそろお腹も空いたし、引きこもりの体力では立っているのもいい加減辛い時間だ。


 それに朝はそこそこ寒かったので厚着(体操着にジャージ)できたが、日が昇ると暑くて仕方がない。

 このままでは蒸し焼きの蒸かし芋になってしまう。

 って、もう食べ物はいいって。


「あのさ…。」

 私が、魔法少女についてとりあえず尋ねようと口を開いた刹那。

 またも、不思議なことが起こった。


 世界の色が消え、音が消える。

 初めは、また時間が止まったのかと思った。

 ニコの方を見る。しかし、ニコはまだリボンを結び直し中である。思い返すといつどのタイミングでどこにしまったのかわからないが、とにかく杖を振った様子もない。


 ニコのリボンを結ぶ手が止まっている。

 そして、明らかに警戒した面持ちで、周囲を警戒しているのがわかる。


 私も身構える。ニコの様子に、周囲の状況も相まって、これが異常な事態だとわかる。

 先ほど時間が止まった時は、人々も、車も、鳩も、止まっているだけでその場にあった。


 今回もそれら全ては残っている。

 だがその様相が異なるのである。

 建造物も、人も街路樹も、何もかもがペーパークラフトのような、とでもいえばいいか、蝋人形のような、といえばいいか、とにかく有機的でない作り物にすり替わっているのだ。


「これって…。」

「しっ。」


 思わず疑問を口にしようとした私を、ニコが制止した。

 さっきまでとは明らかに違う、真剣そのものの顔だ。


「これは、まずいです。」

 声のトーンを落として彼女がつぶやく。


 あるあるなら、それはわかってるんだよ、とかつっこむのだろう。

 だが、実際その立場になってみると、それどころではない。


「どう、やばいの?」

 聞き返す私の声も、状況に気圧されて小さく低いものになる。

「これは…。」


 ニコが説明しようと口を開いた瞬間。

 世界が震えるような、爆音が辺り一帯に響き渡った。

 とてつもない爆発音に、何かの気配を感じ、頭上を見上げる。


 そこには視界の全てを覆い尽くすほどの塵とともにこちらにものすごいスピードで飛来する瓦礫の大群が見えた。

 作り物のようになった街並みだったが、どうやら質量は元の世界のものと変わらないらしい。


 あ、これは今度こそ死んだな。


 そう思い呆然と立ち尽くしていた私をよそに、ニコは素早く先ほどの棒状の、おそらく魔法のステッキ的なものに相当するであろう、杖を振るった。

 すると、杖の先からぼんやりとした青白い光を放つ盾のようなものが現れた。


 一通りファンタジー世界を(フィクションの世界で)旅している私は直観する。

 これは、おそらく防御魔法の一種なのだろう。

 想定通り、瓦礫はその盾に弾かれて、私たちの横に物凄い勢いで轟音と共に墜落するのだった。


 案外フィクションというものは、本当に現実世界の写鏡なのかもしれないな、二次元オタクたちもこれには泣いて喜ぶだろう。

 かく言う二次元オタクの私も今、なんとなく自分たちのこれまでが認められた気がしてじんわりと嬉しい。

 などとまたTPOを弁えない思考が脳裏をよぎる。


 しばらくして、瓦礫の飛来で巻き上がった二次的な煙や塵も収まった。

 改めて、瓦礫が飛んできた先を見やる。


 十数沿線が集まる巨大なターミナルが、見る影もなく、上部が完全に吹き飛んでいる。

「な…。」

 驚きすぎて、言葉に詰まる。

 今日は随分と、現実世界の非現実性に驚かされる日だ。


 だが、驚くことに、驚くことはこれだけでは終わらない。

 何せ、火がないところに煙が立たないように、起爆剤がないところは爆発しないわけで…。


 半壊したシブヤのターミナル内部から、姿を現したそれは、これまで現実世界で出会ってきたどんなものとも一致しない。だが、フィクションの世界では何度となく出会ったきた。見慣れた存在と言っていい。


 ターミナルの残骸から現れた雄大すぎる影はまさしく、私の知る「ドラゴン」のそれだった。

〜次回予告〜

ニコ:「結構いいところで切れますね、今回。」

カナコ:「ドラゴンだってさ。なんか最近だと物語上の敵が初手ドラゴンって結構ある気がするよね。昔は初期的といえばスライムとかぢゃん?」

ニコ:「そうなんですか?」

カナコ:「なんか派手な演出のための過剰戦力を最初に持ってくる感じ?インフレですねぇ。」

ニコ:「は、はぁ…。」

カナコ:「グッ、ニコちゃんの無垢な視線から放たれるよくわからないものを見る目は、だいぶ心にくるわ…。」

ニコ:「はは。」(乾笑い)

カナコ:「そしてそこからの乾笑い…。」

ニコ:「いや、でも…。」

カナコ:「からの気を利かせた話題転換…っすーフルコンボですわ…。ぐはっ。」

作者:「ぐはっ。」

ニコ:「いや、えっと、え?え?」

カナコ:「くっ、どうやらこの戦いに作者ではついてこれなかったようだ。作者、そこそこいいやつだったよ。多分。」

ニコ:「………?ま、まぁそんなこんなで次回は、このドラゴンをどうしよう?ってそんな話です。『第五話:今日の日はよく死にかける日だ。』をお送りします。」

カナコ:「しかし画面外まで被弾するとは、広範囲高威力だ。恐るべしだな…。」

ニコ:「お、お楽しみに…。」

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