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第五話:信じ合うって難しい。

「それで、カナコはどう思う?」

 しばしの沈黙ののち、コクウの言葉が突然私に向けられて、焦る。

 そもそもなにについて「どう思う?」なのか文脈から判断できない。


「リンネが言ってたこと。」

「あ…。」

 コクウの言葉で、ニコの表情も曇る。


 まぁ、普通に考えて、派遣機構の人間に「派遣機構信用できないかも」みたいな話聞かされたって言ったら、反応には困るよな。

 私も、だからこそリンネとの会話の内容までは話したくなかったのだが…。


「うーん。」

 正直、昨日寝る前の時点で、ちょっとそんなようなことを思ったのは確かだ。

 というか、これまでも「派遣機構全体」に対しては不安要素もなくはなかった。

 それは単純にシノブが頼りないとかそういう次元の話ではなく…。


 ここまでの流れ、つまり、私がニコに出会ってから、魔法を使えるようにしよう!…となる流れがあまりに出来すぎていると言うのは、ずっと思っていることだ。

 これが、リンネの策略なのか、派遣機構の誰かの計画なのか、あるいはまた別の…?

 だがそもそも、そんなことは私にはわかるはずがない。


 無知な人間を騙すときの詐欺師の常套手段、とリンネはいった。

 だが、人間界の詐欺だったら、とりあえずネットで調べるとか、警察に相談するとかできるかもしれないけど、今の私は?


 シノブの冤罪の話もしていた。

 今の私は、それを信じる?


「カナコ!」

 考え事をしていた私を、眠りから呼び覚ますように、ニコが声をかける。


「とりあえず、私たちに話してくださいよ!

 もしそれでも疑問が残るなら、その時考えても遅くはないですよ?」

 ニコの表情からは、私を心配するような様子が見てとれた。

 まぁ、確かに悪い方向に考えすぎていたような気はするか…。


「確かに…リンネのいうことも一理はあるかな、と思ったけど…。」

 私はコクウの言葉に答えていう。


「だけど、派遣機構の全員が信用できない、とは思えないかな…。」

 これまで会ってきた人たちの全てが、演技とはとても思えない。


 特にニコは…色んな意味で。

「それはどういう意味ですか…。」


「そう…。」

 私たちのやりとりをスルーして、コクウは、無表情で静かにいう。

 こういう時、無表情だと、何を考えているか読まれなくて得だよな…。


「となると、奴は少なくとも、あなたの考えることが予測できたのかも…。

 状況も、かなり仔細に知られてたんでしょ?」

「そうだね。」


「それも気になりますけど、そもそも、夢の中にそんなに鮮明に出てくる方法ってあるんですか?」

 ニコが、すごく根本的な質問をした。

 そういえば、私的には、魔法ならそれぐらい当然できるという前提で、夢に出てきたリンネが本物かどうかに意識が向いていた。

 だが確かに、その方法の解明も重要なのか?


 確かに、向こうが使ってるのが特殊な術だったら、向こうの状態もわかるかも…?


「確かに、遠隔で鮮明な夢を見せるのは難しい…ただ、できないことではないと思う。」

「じゃあ、流石にそこから何か分かったりはしないか…。」


「そういえば、カナコはこれまでも夢見が悪そうでしたよね?」

「え?…まぁそういえば…でも今日の夢みたいに覚えてはないけど。」


 確かにあまり夢見が良くなかったのは事実だが、新しい環境になれなかったのもあったと思うし…。

 正直、最近は特に経験も経験だったし…。

 今日の夢と違って、私は特に注意してはいなかったのだが…。


 コクウは考え込むように黙ってしまった。

〜次回予告〜

カナコ:「なんだか、話が大それた方に向かってる気が…。」

ニコ:「でも、心配してしすぎるってことはないかもしれませんよ?」

カナコ:「ハクアとツキヨには考えすぎって言われるし、でも心配しすぎることはないって、私はどうすれば!?」

ニコ:「え?いやえぇっと…?まぁでも、悩むのと考えるのって違いますよ?」

カナコ:「そう言われても?」

ニコ:「そもそも、ユニコーン族の能力では思考は読めないので、カナコの心を読んで考えてることも大体わかるってことは…?」

カナコ:「もしかして私は考えてない!?悩んでるだけ!?」

ニコ:「…かもしれませんね…。」

カナコ:「…絶望した!っというわけで次回は『第六話:ノータイムノーシンキング!』をお送りします。なんかいい感じの前振りみたいになってて余計に絶望した!」

ニコ:「まぁまぁ…お楽しみに!」

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