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第一話:週の最後でも気を抜かずに!

 雨の音がする。

 風の音もする。


 私は、ぼんやりとした頭で目をさます。


 ここ一週間は天気が良かったのに、今日は打って変わって悪天候のようだ。

 天気予報を見る習慣がない私にとっては、天気はサイコロの出目のようなもの…。

 誰がうまいこといえと…。


 上体だけを起こして、周囲を確認する。

 ベットの上にはニコが眠っており、リビング側の壁を見ると、コクウが座っている。


「おはよう。」

 コクウがぼそっと独り言のようにいう。

 私は答えるように頭を下げる。


 先ほど見たものが夢だったことがわかる。

 妙に現実感のある夢だったな…と、目をしばたかせる。


 今何時だ?

 悪天候のせいで、時間がよくわからない。

 流石に遅刻しそうならコクウが起こしてくれると思うので、まだ朝のはずだ…。


 スマホのホーム画面で時間を確認すると午前六時。

 流石に早く起きすぎじゃないですかね?

 これ絶対後々眠くなるやつだもんなぁ…。


 しかし、一度起き上がってしまうと妙に目が冴えていて、もう一眠り、というわけにも行かなそうだ。

 …何より、今日、金曜日は大学が一限からあるので、変に眠ってしまう方が怖かった。


「ほんとに寝てないんだね?…ありがとう。」

 私は、とりあえず気まずい沈黙から逃れるように、コクウに話しかける。

 ニコが寝てるので、起こさないように小声で。

「まぁ…。これくらいなら問題ない。」


「それ全部読んだの?」

 座り込んだコクウの隣に積まれた本の山を見て、私は尋ねる。

 確か昨日の私が起きていた時点では、そこには何も積まれていなかったはずだ…。

「せっかく時間もできたし、読み直してるだけだから。」


 …。


 何というか、コクウって会話続けようとしない節があるよな。

 あるいはこれが彼女なりの会話なのだろうか?


 確かに、シノブにも積極的に話しかけているイメージないし…。

 ってそれは、口に出す必要がないだけか?


 コクウが積極的に話してるのって、実はハクアに対してだけだよな…。

 何その扱い難しいヒロインと主人公の微妙な関係性みたいな…。


「今日は朝からよね?」

「うんまぁ…。」

 行きたくないけど。


 授業が楽しいとか退屈とか、そういうの一切関係なく、とりあえず一限っていう現象がめんどくさい。

 今日はどうやら雨の様子だし、余計にそうである。


「もう起きるなら、朝食を作るけど…。」

「え?」

「え?」


 一瞬朝六時なのにもう朝食?という疑問がよぎったが。

 考えてみると、世間的には朝六時ってもう朝だしな…。

 作るのならその時間もそれなりにかかるだろうし…。


 私からするとまだ夜…というよりはむしろ今からが寝る時間なので、何か食べるという発想がそもそもなかった。


「お願いしてもいい…って、私も移動しないといけないのか…。」

「そう。」

 …何というか、とてつもなく難儀なことになっているな?

 室内での移動も、自由にはできないとは…。


 というか、これだけきっちり護衛をしてもらいつつ、大学には行かせようというのは、本末転倒な気がいまだにしているのだが…。

 まぁでも政治家とかもSPがくっついていてもわざわざ危険な場所に赴いたりするもんな…。

 いや、私はただの学生なんだけど…。


 コクウがキッチンに立っている間、リビングの席で、リュックの中からパソコンを取り出す。

 せっかく早く起きたし、どうせここに座っていなくてはならないなら昨日結局終わらなかった課題でもやってやろうという安直な考えだった…。


 …安直な考えだったはずだが、思ったよりはるかに作業は効率的に進んだ。

 昨日よりはこの状況に慣れている、というのもあるのかもしれないが…。


 たまたま今目が冴えているからなのか、朝はやっぱり集中力が違うのか…。


 はっ!?これがまさか、噂の「朝活」!?

 そうか、私もとうとうできる奴らの仲間入りか…。

 ってまぁ、これを毎日やるのは、普通に考えてしんどそうだから嫌だけど…。

〜次回予告〜

カナコ:「今回はなんかぬるっと始まったね。」

コクウ:「一日始まりにぬるっとも何もないと思うけど。」

カナコ:「でも仮に人生が物語だったら、起承転結の起の部分は大事じゃない?」

コクウ:「いや、人生の始まりは生まれた時じゃないの…。」

カナコ:「うーん、意外にコクウはロマンがわかってないなぁ。」

コクウ:「今の話はロマンとかそういう話じゃなかったと思うんだけど…。」

カナコ:「まぁそれはさておき、次回は『第二話:自分の夢の話ばっかりする人って。』をお送りします。」

コクウ:「お楽しみに。」

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