第三十二話:いつの間にか仲間になっているのかもしれない。
ニコもツムギちゃんも、周りの勢いに押される形で納得してくれたようだ…。
まぁ確かに、中学生くらいまでは、「学校は誰でも当然通うもの」という純粋な子たちがいるのはおかしくないよな…。
それがいいことなのか悪いことなのかもそもそもよくわからない。
トキノ教授は、私が休んでいてもしっかり研究できていたといってくれた。
オカケンの人たちも、概ね、「人生そんなもんだ」ということで意見が一致しているようだ。
多分、一番納得いっていないのは自分自身…。
「というか、そういうマナは、結局どうだったの?研究旅行?」
「あーそうですね、全国回って、文字通り古今東西のホラースポットに行ってきましたよ?」
円谷先輩の言葉に、マナは体の前で拳を振るって待ってましたとばかりにいう。
なんだその死ぬほど悪い千社参りみたいな旅は…。
動画配信サイトとかで配信したらそこそこウケそうだな…。
女子大生が心霊スポット巡り…まぁそういう需要もあるだろう。
というか字面だけでも色んな意味で危険だってことが容易に想像できるな?
よく何事もなく帰ってきたな…。
その図太さというか生命力なのか運なのか…は素直に称賛に値する。
それは本人に言わせると「勘」なんだろうが。
「な、何か起こった?」
ユウトがそう尋ねる。
他のメンバーもマナの言葉に耳を傾ける。
「いやー。流石に許可が取れないと中にまでは入れないところも多いからね…。雰囲気あるなてところは多かったけど…。」
私はむしろ、許可を取るという常識が、マナに備わっていたことに感動した。
まぁそういう場所って基本は立ち入り禁止で私有地って聞くし、当然のことなのだが。
一昨日のアサヒノモリの時、強行突破しようとしたことを考えると、他の場所でもそうなのかと…。
いやでもアサヒノモリも、通っている人が現れる機会を待っていたという話をしていたし、最低限関係者になってから入るという良識はあったのか?
それでもどうかと思ったけども…。
それより、あれはまだ一昨日のことなのか…。
もう一年くらい前な気がしちゃうんだけど…。
「トーノにも行った?」
「にひひ、行きましたよそりゃ!古典怪談の聖地みたいなもんだからね!山深くて大変だったけどねぇ…。」
「イヌマキトンネルは?あの有名な看板は見た?」
「あー二つ説があるじゃない?両方行ったんだけど、なんだかピンと来なかったなぁ。」
話を聞く限り、本当に全国のオカルト関連の場所を片っ端から回ってきたようだ。
両方とも名前を聞いてピンとくる辺り、私もある程度はこの同好会の素養はある…と信じたい。
入ったからには、少なくとも足を引っ張るような感じにはなりたくないし…。
というか、割と重い話題だと思ってこれまで触れて来なかたけれど、私の話は思ったよりはるかにあっさりスルーされた。
マナに話題持ってかれてることを考えると若干負けた気もするけど、まぁ深掘りされたところで私もさっき以上の答えはできないしなぁ…。
あの時は「なんとなく」休まないと、と思った。
それもマナから言わせると一つの「勘」なのかもしれない。
その結果私は今ここにいて、まぁなんだかんだ悪くないと思っている。
そういう意味では私の「勘」も、間違えていなかったと言えるのかもしれない。
〜次回予告〜
カナコ:「それにしてもよくやるよね、加賀美さんも。」
マナ:「呼び捨てでいいっていってるのに。」
カナコ:「じゃあ加賀美は…。」
マナ:「このやりとり二回目なんだけど!?」
カナコ:「それにしてもよくやるよね、加賀美は。」
マナ:「あ、これもしかして、正しい選択肢選ばないと一生会話がループするタイプ…。まぁ、本当に危険かどうかはわかるからね、勘で。そういうところには行かないよ…直接は。」
カナコ:「じゃあアサヒノモリの時も大丈夫って思ってたってこと?」
マナ:「まー流石にああなるのは予想外だったねぇ。まぁでも、結果としてなんともなかったでしょ?」
カナコ:「なんともなかった…のかなぁ…?」
マナ:「というわけで次回は『第三十三話:いつもと違ういつもと同じ道。(前編)』をお送りします。」
カナコ:「お楽しみに。」
幕




