第二十七話:みんなでワイワイも必要なことです。
「…あ、あとは、活動記録をつけていますので、何かメンバーの中で記録したいような活動があった場合は書いていただけると嬉しいです。」
そう言ってユウトは、先ほどからただそこにあるだけで所在なさげにしていたファイルを開く。
仕事場が舞台のアニメとかでよく見かけるタイプの分厚いファイルだ。
同じフォーマットの紙が何枚も挟まっているのが見える。
「随分昔のやつからずっと残ってるから、それを読むだけでも、このサークルの活動はなんとなくわかるんじゃないかな?」
「そ、そうですね。」
円谷先輩とユウトはそう言うけれど、いくら報告書とは言っても、これだけの量があると、読むだけでかなり時間がかかりそうだ。
それこそ歴史研究みたいなことになりかねない気がするけれども。
「い、一応この部屋は部室というか会室として記法されているので、いつでも入れますが、節度を保って使ってください。
あぁ、で、でも時々教授が鍵を開け忘れてしまっていることがあるので、その時は教授を探し出して開けてもらってください。
ぶ、部誌や文化祭に関する詳細は、時期が迫ってきたら連絡します…。」
「連絡網、メールかSNSか、なんかもらった方がいいんじゃないっすか。」
かくいう甘原先輩は、円谷先輩と並んで座っている。
いつの間にかパソコンを開いて何か作業をしているが、流石に何をしているのかは位置関係的に見えない。
「あぁ、そうですね。」
ユウトはそんな甘原先輩の言葉を受けて、スマートフォンを取り出す。
「よ、よければ、SNSで、このサークルのメンバー全員の部屋があるので、そちらに登録してください。
他の連絡方法の方がいいかたは、電話番号かメールアドレスで…。」
ユウトが多方面への配慮を見せたが結局全員SNSで連絡をとることで同意した。
ちなみにみんなが登録したあと、はじめに挨拶を投稿したのは甘原先輩だった。
スタンプひとつだったが、それにしても周到というのか、律儀というのか…。
案外開いたパソコンもそのためだけに?
年明けた瞬間に「あけましておめでとう」っていう的な根性で?
そうなってくると、なんとなく円谷先輩が、甘原先輩をお気に入りな理由がなんとなくわかる気がする。
それにしても、ニコやツムギちゃんもそうだが、キララがスマホを持っているというのはいまだに違和感がある。
これはせっかく魔法を使えるのに、幻獣がわざわざ人間のツールを使う必要があるのか?という違和感が要因なのだろう。
…一方で、個人的に小学生とか中学生でスマホを使いこなしているイメージがつかない、とかそういう偏見もあるのは事実だ。
まぁキララは実年齢私とほぼ同じなので、本当にただの偏見なんだけれども。
「…こんなところなんじゃない?」
「そ、そうですね。あとは、歓迎会です。…あ、用事がある方は帰ってくださっても大丈夫ですよ…。よ、予告なく長い時間引き止めてしまってすみませんでした…。」
こうして、説明会は幕を閉じた。
ユウトは謝っていたが、私は謝っている言葉を聞いて初めて、この時間に他の用事があったら困っていたということに気がついた。
…思えばオカケンもそうだが、派遣機構も、そして<黄泉の妃>の死霊術師たちも、私の都合はガン無視でやってくる。
私はたまたま暇人なのでいいが…。
仮に私が仕事で忙しいとか、交友関係がすごく広いとか、そういう人だったら、どうなっていたのだろうか?
死にかけずに済んでいたような気もするし、逆にもうすでに死んでいてもおかしくない気もする…。
「私は特に用事はないわ。」
「あぁ…俺たちもだな。」
…ツキヨとシノブが答えると、視線が私の方に向く。
「…私たちも?」
と言ってニコの方を見ると、ニコも頷く。
そりゃそうなんだけども、っていうのは失礼か?
なまじ用事がないので、私は今日もオカケンに巻き込まれる。
まぁそれも、死にかけないのであれば、悪くはないと思うのだった。
〜次回予告〜
マナ:「おめでとう!これで角谷さんたちも立派なオカケンメンバーだね!」
カナコ:「まぁそうね。誠に不本意ながら?」
マナ:「あれ?本編だと前向きな感じだったのに?」
カナコ:「まぁこう、言われる相手にもよるよね、やっぱり。」
マナ:「どういうこと?」
カナコ:「…はぁ。…というかそれはそうと、マナは一昨日のあの…色々の後、なんともないの?」
マナ:「うーんまぁ、ないと言ったら嘘になるけど、死にかけたりはないなぁ。」
カナコ:「そうか…。そうならよかったよ。」
マナ:「なんでちょっと残演そうなのさ!?…ということで次回は『第二十八話:ワイワイガヤガヤのその傍で。』をお送りするわ!」
カナコ:「お楽しみに。」
幕




