第二十四話:波乱の自己紹介!(後編)
「それじゃあまずは、角谷さんじゃない?」
「そうだね。どうやら全ての人間関係の中心に、角谷さんがいるようだし…。」
「そ、そうですね、お願いしてもいいですか?」
なんだかそうなる気がしてたんだよなぁ。
ちくしょう…みんなして寄ってたかって…。
ってまぁ割と自然な流れではあるんだけども。
仕方がないので、促されるまま立ち上がる。
天井が高くないので、結構頭上スレスレである。
「あー…はい。」
とはいうけれど…。
「えー…。美術史学科二年、角谷…角谷カナコです…。
このサークルへは、えぇっと、成り行きでというか…。いろんなことの結果はいることになりました。…よろしくお願いします。」
といって、小さく頭を下げて座る。
うん、嘘はついてないな…。
実際、パラパラと拍手が起こる傍ら、事情を把握しているユウトやエレナちゃんは苦笑いをしている。
たった一人、マナだけはよくわかってなさそうだけど。
なんで当の本人だけが、わかってなさそうなんだよ。
まぁでも、とりあえず、これまでしてきた自己紹介の中ではダントツレベルでウケというか、わかってもらえた感があった。
やっぱり自虐ネタは身内でするに限るな…。
「この流れだと、次はニコちゃんかな。」
「えっ…えぇっと…?」
困り方が私と一緒だった。
でも照れくさそうに頬をかくような仕草が、一つ一つ可愛いのはずるいよなぁ。
私以上にとばっちりである以上、ある意味、私よりも難しいはずなわけだが。
「えぇっと…私はニコ、角谷ニコです。カナコは私のお姉ちゃん、ですね。…というか従姉妹なんですけど…。」
お姉ちゃん!?
そういえば、設定的にはそうだったな。
でも改めて言われると、なんか新しい扉が開いちゃいそうだね。
「…。」
ニコにジト目で見られたので、これ以上おかしなことを考えるのはやめようと心に誓った。
「それで…アサヒノモリの中学校に通っているんですが、カナコもいるので、ここに入りました。よろしくお願いします!」
ニコも、ギリギリ嘘じゃない線を攻めた理由でその場を収めた。
アサヒノモリの話を円谷先輩に問い詰められた時もそうだったが、案外どさくさに紛れて嘘をつくのは得意な子なのかもしれない。
続くハクアとツムギちゃんも、私やニコと同じように、嘘でもないが本当でもない内容で乗り切った。
その流れでシノブとコクウの紹介もあり、コクウに対しては円谷先輩から特に大きな拍手が送られた。
問題はツキヨとキララか…。
二人に関しては、そもそも私すらなんでここにいるのかわかっていない。
「じゃあ次は私ね。」
と声を上げたのは、ツキヨだった。
「お、お願いします。」
「私は、緋川ツキヨ。シノブの…まぁ遠い親戚で、今は高校生。この同好会には、カナコちゃんたちがいるって聞いてきてみたんだけど。
ホラー漫画も好きなんだけど、オカルトっていうと、今時ファンタジーの必須要素だと思うので入ってみることにしました。よろしくね!」
…完璧だ。
やばい、この人見た目はツンデレなのに、中身はむしろコミュ力お化けだ。
その上、高校生とか、親戚とか、よくもまぁいけしゃあしゃあと嘘を並べ立てられるものだ…。
いや、まぁ素直に尊敬するけども…。
実際彼女の簡潔で的をいた自己紹介はこれまでよりも若干大きな拍手を持って迎えられた。
「次は、キララ。」
「なぜ高貴なるこのキララ様がわざわざ愚民どもに、痛っ!?」
なんの躊躇もなく、隣に座っているツキヨからチョップが飛ぶ。
「うぅ。緋川キララだ。ツキヨは我が眷属、痛いっ。もとい姉である…。」
眷属って血が繋がってるって意味だから、姉も眷属で間違ってはなさそうだけどな。
「現在はそこのぐ、痛い!?まだ何もいってないのに!?…ニコとツムギとやらと同じ中学に通っておる…。今回はその縁もあってここに入会した…。」
「邪気眼系ってやつだね…。本当にいるんだ…。」
「確かに、今時聞かないですの。」
「何!?この高潔なるキララ様は…痛!?ってだからさっきから何もいっておらんだろうが!?」
「あんたに喋らせておくと話がややこしくなるんだもん。」
「『だもん』じゃない!屈強なるキララ様とはいえど、痛いんだぞ!?」
「ま、まぁまぁ…。」
キララがボコスカやられているのを流石に見かねてか、ユウトが止めに入る。
だがそこに、意識外からの一言が放たれる。
「これじゃ、一気にままごとサークルっすね。まぁ、別にいいっすけど。」
その声は、部屋の一番隅、物置か何かと思っていた扉の方から聞こえていた。
〜次回予告〜
ツカサ:「はぁ、なんだか騒がしいと思ったら、今年はこんなに新入会員がいるなんて…聞いてないんっすけど。」
カナコ:「うわぁ。なんか露骨にやさぐれたキャラきたな今度は…。」
ツカサ:「他人をヤンキーみたいに言わないでほしいっす。」
カナコ:「いや別にそうはいってないけども…。」
ツカサ:「じゃあどういう意味でいったんっすか?」
カナコ:「いや、確かに面と向かって言うことじゃないかもだけどね?」
ツカサ:「まぁ次回予告っすもんね。」
カナコ:「じゃあなんで聞いた!?というわけで次回は『第二十五話:やさぐれ可愛いにも限界がある。』をお送りします。」
ツカサ:「それ自分のことっすかね?」
カナコ:「だから!そういうとこ!もうええわ!お楽しみに!」
幕




