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第二十話:こんな茶番はもう勘弁してください!

 すでに慣れてきたオカケンへの道を行く。

 引きこもる前までは想像もできなかったことだ…。

 というか場所も怪しかったからな、サークル棟…。


 ハクアと並んで歩いているわけだが、特に話すことがあるわけでもない。

 シノブの宿題の話も、結論どころか考えが進んですらいない。


 というか、考えておくっていう宿題って、真面目にやるとこんなに大変なんだな…。

 そもそも考えるっていう行為がすでにゲシュタルト崩壊的な状況なんですが。


「そういえば…。」

 ハクアがふとした様子で話し始める。

「何?」

 そんな珍しい状況に一瞬圧倒されたが、別に無口なキャラというわけでもないのでそういうこともあるだろう。


「あのトキノって教授、あんたに似てるわよね…。」

「え?」

 予想外の方向から話が始まったのでびっくりである。

 内容の意外性もあって二度びっくりである。


 私的には教授はコクウに似ていると思っていたのだが。

 まぁでも言われてみると、似ているのって髪型とか身長とか、それくらいの表層的なことだけなので、今となってみると、それが違うのもわかる。


 でもだからと言って、私に似ている?


「自分の土俵の中で話だしたらいつまでも話してるとことか、引きこもりなところとか、喋るの苦手なところとかね。」

「間接的にディスられてる気がするんだけど、気のせい?」

 こんなにわかりやすく面と向かって言われると流石に傷つきますけど?


「まぁそうね。まぁ、それはそれで個性だとは思うけどね。

 あんたもだいたいわかってると思うけど、派遣機構にはもっとヤバい奴なんて山ほどいるし…。」

「…。」

 あんたがそれをいうかと、私は思ったが言わなかった。

 サイコパス疑惑のハクアさんは間違いなくヤバいやつの代表者なんだけど…。


 というか、今のところ、とりあえず思ったことを全部言って最終的に「それもいいよね」って言っておけばいいと思ってる人みたいになってるけど?


「…つまり、どういうこと?」

「考えすぎってことよ。」

「…。」


 教授に対してそういう「一人の人間として」という目線で見たことがそもそもないので、正直言われてもピンとこない。

 逆にいうとハクアは、ただここにいるだけで学生でもなんでもないし、なんなら私たちよりもはるかに年上だからこそ、そういう見方が自然にできるのかもしれない…。


「あ、そういえばさ、さっき、教授を誤魔化した時、どうやってやったの?」

 私は、なんとなく話題を変える。

「あー。幻術よ。天狐族の十八番だからね。」

 ハクアも特にそれ以上何かをいうわけでもなく、私の話題振りに付き合ってくれる。


「やっぱりそういうことか…。でも、杖とか使わなくてもできるんだね。」

「あんたんとこのニコも杖いちいち振らなくても心読んでるでしょ?それと同じよ。」

「でも、これまでなんで使わなかったの?」

 使えるならば使ってもいいタイミングはいくらでもあったような気がしたのだが…。


「まぁ、それは…あれよ。」

「…?」

 ハクアが言い淀むのは珍しいので、素直に黙って答えを即してしまったが、しばらく考えてから、なんとなくわかった。

 そういえば、ハクアは魔法も十分には使えなかったのだ。

 確か<狐の珠>とかいうやつがないからとかなんとか…。


 聞いちゃまずかったか…。

 そういえばそれがなぜなのかって話は四年前の事件の話の中にも含まれてなかったしな。

 考えてみると、その時点ではすでにシノブと契約してたはずだしな。


 だとすると、何か別の理由があるのか…。


「それより、ついたわよ。」

 慣れた道のりだったので自然に歩いてきてしまったが、いつの間にかサークル棟までたどり着いていた。

 オカケンの扉の前。


 現実逃避していたが、なんらかの私にいえない理由でニコに呼び出されたのだった。

 ハクアの様子を見るだけでもなんとなくそれが切羽詰まった理由ではないというのはわかっているが…。


 それでいて呼び出す場所がオカケンとは…。

 またとんでもなくロクでもない理由な感じがするよなぁ。

〜次回予告〜

カナコ:「あーあ…なんだか毎回何かに巻き込まれてるよなぁほんと…。」

ハクア:「そういうところが似てるっていうのよ。」

カナコ:「とばっちりくらってるところがって意味だとそうだね。」

ハクア:「まぁ、そうといえばそうだけど、別にオカケンに関しては断ろうと思えば断れたでしょ?」

カナコ:「え?」

ハクア:「…なんでその選択肢を初めて知ったみたいな顔してんのよ…というわけで次回は『第二十一話:びっくりしないびっくり箱みたいなもの。』をお送りするわ。」

カナコ:「お楽しみに。」

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