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第十八話:大切にしたい繋がりのために。

「二人は…学生の時から知り合いってことですよね?」

 このままだと話が平行線になりそうだったので、コミュ力高い人の真似をしてみることにする。


 コミュ力高い人の真似をしていれば自分もそうなれるのでは?と一瞬思うが。

 今の時点でかなりぎこちなかったので、やっぱり私には無理だろうな、と考え直す。・

 人間にはそれぞれにあるべき姿というのがあるものだ。


「そうね!まぁ、リエちゃんに限らず、あの世代のオカケンはみんな私の弟子だからね!」

「弟子?」

「そうそう、オカルトの。」

「…。」

 思っていたものと違いすぎる回答に戸惑う私と、ミズユキ教授をしらけた目で見るハクア。


「ほぼ、巻き込まれてただけだけどね…。」

 トキノ教授が補足する。

 補足がなくとも、その情景は容易に想像できるが…。

 というかユウトたちの振り回されっぷりを見るに、ミズユキ教授が台風の目で悪評の要因なのは今も昔も変わらないというだけのことか。


「ねぇ、今日はいつになく厳しくない…?終いにゃ泣くぞ!」

 なんだその極めて需要が薄そうな場面設定は…。


「いつもと一緒だと思うんだけど…。

 …まぁ確かに、巻き込まれてただけだけど、引っ込み思案だった私を色々連れ出してくれたのには感謝してますよ…。」

「リエちゃーん!うぐっあ!?」

「でも、すぐベタつくのはやめてほしいですけどね…。」

 抱きついてきたミズユキ教授を椅子から立ち上がり、慣れた様子で交わすトキノ教授。

 意外なほど素早い身のこなしである。


 しかし、この蚊帳の外というか、もはやアウェイというか、そういう感じね。

 言うなれば内輪ノリ…。なんだか久々な感じだな…。


 逆にいうと、私は派遣機構の人たちの内輪には入り込めているということなのだろうか?

 身の危険を考えると、それも良し悪しだが…。


 そりあえず、このひさびさな感覚に、私はせいぜい苦笑いを浮かべるくらいしかできない。


「すみません、学生さんにする話ではないですよね…。」

「あ、いや…。」

 流石に今回は、地雷原と知りながら走り出した私が悪いので何もいえない。

 ハクアは私の隣で首を縦に振っているけれども。

 でも、ハクアも結構内輪ノリになりやすいタイプだと思うけどな…。


「あーでも、今もきっと、こういう人だけじゃなく、いい人もいっぱいいると思うから、誤解しないでね?」

「あぁ、はい…。」

「それはどういう意味だ二人とも!?」

「学生さんに迷惑かけない!」

「いたっ!?」

 今度こそは鉄拳制裁がミズユキ教授の頭頂部に下される。


 見た目や雰囲気から勝手に幽霊のような細身の印象を受けてしまっていたが、意外に重い一撃だったのは音でわかった。

 教授の中では関わりが最もあるはずのトキノ教授であるが、意外すぎる一面である。

 というか、ミズユキ教授と話している時は、授業や先ほどまでレポートの話をしていた時とは少し印象が違う。


 これが同窓会なんかでいう「学生気分に戻る」ということなのか。

 あるいは、誰にでもある、相手によって見せる顔が違うというだけの話か…。


「とにかく、こんなだけどいいところもあるから、勘弁してあげてくださいね…。

 無駄に引き留めてしまってすみません…。」

「いえいえ、そんなことは…あ!あの、レポートの話もできてよかったですし…。」

 正直その後に展開されたことのインパクトのせいで忘れかけていたが、そもそもはレポートの講評を聞くためにここにきたのだったのを思い出して、慌てて付け加える。


「はい、二年生からはプレゼミもあると思いますし、興味があればまた、私の授業もとってくださいね。」

「は、はい。ありがとうございます。」

「角谷さん、そろそろ、お暇しましょう。」

「おい…?あぁうん。」

 ハクアが言った言葉があまりにもハクアにそぐわないものだったので戸惑ったが、意図を察して二人で立ち上がる。


 多分この空気を逃したら一生帰れないだろうからな…。

 まぁ帰ったところで急ぎの用事もないといえばないが…。


 やっぱり昨日の今日で二人でいる時間を長くしてしまうのは得策とは思えない。

 それに、大学の課題もあるし、シノブの宿題も結論が出ていない…。


「引き留めてしまってすみませんでした…。また授業でお会いしましょう?」

「はい、今日はありがとうございました…。」

「お邪魔しました。」

 なんだか色々あったが、別れ際は案外あっさりとしている。


 いやむしろこれが普通のはずで、ミズユキ教授のようなノリが異常なのだ…。

 あるいはことあるごとに殺されかけるここ一週間の私の生活が異常なのだ…。


「あ、そうそう!」

 これで終わり、そう思って扉から出ようと思っていたところで、鉄拳を喰らって大人しくなっていたはずのミズユキ教授が私たちを呼び止める。


「やっぱいいや、ごめん。」

 …。

 えぇ…。

〜次回予告〜

カナコ:「なんだこの歯切れの悪い終わり方は…。」

ハクア:「まぁそういうところあるわよね、現実って。」

カナコ:「なんでそんないきなり傍観者キャラみたいなスタンスなの!?」

ハクア:「まぁそういうところあるわよね。」

カナコ:「違う、これはなんとなくその場を誤魔化すbotだ…。」

ハクア:「なんなのよその謎のbotは…。」

カナコ:「しゃべったぁぁぁ!?」

ハクア:「今日のあんたはテンションが高いわね。」

カナコ:「まぁまぁ、そういうこともあるじゃん。」

ハクア:「あんたもか…というわけで次回は『第十九話:その時また呼び出しの音が。』をお送りするわ。」

カナコ:「お楽しみに。」

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