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第十三話:迷惑をかけること心配をかけること。(前編)

「あ…あの…。」

「うわっ!?じゃない。すみません…。」

「…!?」

 ついさっきは初めから警戒していたので驚かずに済んだが、今回は予期していなかったので素直に驚いてしまう。


 ただでさえ、トキノ教授は存在感が薄いというか…なので、意識外から背後に立たれるとどうしても驚かざるを得ない。

 私が単純に背後に立たれるのが苦手なだけなのかもしれない。

 我ながら驚きすぎという気はする。


 けれども逆に、私の周囲の人が誰も彼も背後から話をかけてきがちというのもあると思うのだ。

 勘弁してください。

 しかし、向こうもだいぶ驚いた私に驚いていたので、今回は引き分けということで…。


「あーあーすみません…。今日、よろしければ少しこれからお時間ありますか?」

「あー…はい…。」

 ハクアの方を見ると小さく頷いたので、とりあえずイエスの返事をする。


 このタイミングで教授の方から話しかけてくるとは?

 用事はなんだろうか?


 とりあえず、ハクアが無警戒ということはやばい相手ではないのだろうが…。

 ミズユキ教授のように、こちらの事情を知っているのか?

 それとも単純に、去年の授業すっぽかしまくったのがマズかったか?


「よければ、研究室で…院生もこの時間帯ならあまりいないでしょうし…。」

「あーえぇっと…?」

 と、またハクアの方を見る。

 こういう場合普通は呼び出された生徒一人で行くんだろうが、今の私の場合は、ハクアとは離れられない理由がある…。


 しかし一方のハクアはいっちまえという風に手を動かす。

 わたしゃ犬か…。というか本当に大丈夫なんか…。


 しかし、なんだかんだと仕事はしっかりこなしてきたハクアだ。

 ニコの次に私のそばにいたのもハクアだし、正直すでに、一緒にいた時間も親を超えている可能性があるくらいだ。


「あぁすみません。大したことではないんですが…。」

 私が、友達と一緒に帰れなくなるのを心配しているように見えたのか、トキノ教授は、ハクアと私に向かっていう。


「いえ、あたしは待ってるんで大丈夫ですよ…。」

「私も、特に用事があるわけじゃないので…。」

「そうなんですか…ならよかったです…。私もこれであまり時間がないので…。」


 といってトキノ教授は私の先を歩き出す。

 私もそれを追って歩き出す。

 そして教室を出る。


 さらに少し間隔を空けて、ハクアが教室を出てきたのが見えた。


「「「…。」」」


 しばらく三人とも無言で歩き続ける。

 行く先は、去年のプレゼミの授業でも行ったことがある研究室だ。


 ちなみに「プレゼミ」とはいうが、授業名は「初期研究」か何かだったと思う。

 二年生にはしっかりと「プレゼミ」という授業があり、これは、三、四年のゼミ生に混ざって授業を受けるというもの。

 なので去年私が受けた授業は正確には「プレプレゼミ」と呼ぶべきだろう…。


 さらに数十秒ほど廊下を歩き、研究室にたどり着く。

 同じフロアなので、移動に一分もかからない。


 ハクアは、遅れて教室を出てきてから、少しずつ距離を詰めてきて、今は私と並んで歩いている。

 不審に思われれだろうと思ってハクアの方をつい見てしまったが、ハクアが手で「静かに」のジェスチャーをしたので、おそらくあのご都合主義的な「認識阻害」がかかっているのだろうと気づく。


 それ以降はなるべく意識から外すように心がけた。

 そうでもしないと私の方が、虚空を見て右往左往する変な人になってしまう。


 教授は研究室に着くと、ドアを開け…。

 …る前にこちらに向き直った。


「あ、あの、私は別に構わないんですが…。あの…あなたも入りますか?」

 そのセリフは間違いなく他でもないハクアに対するものに違いなかった。


 私は驚いて振り向くが、ハクアの方も驚いた顔をしている。

 浄化魔法とかは暴走させてたけど、死霊術師との戦いでも普通に戦えてたし、確かヨドミノヌシとあった時も、自分で認識阻害をかけてたような…?


 つまり、おそらく術側に不備はない。

 だとすると、教授の方に何か仕掛けがあるということになる。


 その時私は、大学に誰とどうやっていくのかという話をしていた時のことを思い出した。

 確か認識阻害が効かない人間が、稀にいるとかいないとか…?


 つまりトキノ教授はそういうタイプの人間、ということなのだろうか?

〜次回予告〜

カナコ:「いやーまさかの展開で話がややこしくなりそうだけど、結局なんで私は呼び出されたんだろう?」

ハクア:「出席日数足りなくて落第とかじゃないの?」

カナコ:「ちゃんと単位もらったよ!?というか、それ告知するの教授じゃなくない?」

ハクア:「それもそうね…。で、何やらかしたわけ?」

カナコ:「なんで私がやらかした前提…?というか、ハクアもなんで認識阻害聞かないのさ?」

ハクア:「それは本編であんたがいってる通りなんじゃないの?」

カナコ:「やっぱりか…案外身近にいるもんだな…というわけで次回は『第十四話:迷惑をかけること心配をかけること(中編)』をお送りします。」

ハクア:「お楽しみに。」

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