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第二話:火事場の馬鹿力でやられる敵の気持ちも考えて?

 次に目が覚めたのは、暗い部屋の中だった。

 部屋の電気が豆電球を残して消えているのが見える。


 体が重いのも少しマシになっている感じがするが、それとは別に妙な重さがあった。

 ゆっくりと上体を起こすと、腕の辺りに突っ伏すようにして、ニコが眠っていた。

 思えば私の方が起きるのが遅いのが常だったので、彼女の寝顔を見るのは、契約直後以来か?


 流石に暗くてよく見えないが、よく見えなくても可愛い。

「そんなことないですよぅ…はは…。」

 寝ていてもなお返事をくれる律儀な子である。


「寝てた方がいいわよ。」

 いきなり部屋のドアの方から声がしたので、心臓とまるかと思いながらそちらを向くと、ハクアがドアにもたれかかって座っている。

 片手にはスマホ、もう片手には私でも見たことぐらいはあるような女性誌が握られている。

 姉さん!ノックくらいしてよ!


「流石に色々と不安があるので、部屋で警戒中ってわけ。」

 そう言ってハクアは肩をすくめる。

 何か言いたいような気もしたが、それだけシノブたちも必死なのかと思うと何も言えない。

 というか気の利いた言葉が思いつくほど頭が回っていない。


「あれからどうなったの?」

「あんたが無茶してぶっ倒れたから、ここまで連れてきたわけ。」

「無茶?」


 記憶がない、というわけではない。

 ただ曖昧だし、夢との区別がついていない感じがする。


 夢だとしたら、極彩色の夢だ。

 …なんかオカルト界だとあんまり良くない意味だった気がするな?


「幽界のあんたが持っている剣、アレを使ってあんたは死霊術師を撃退した。

 あの二人まで出てきたってことはおそらく割と本気で殺しに来てたことを考えると、まぁかなり上出来な結果ではあるわね。」


「剣?」

 口に出した瞬間に思い出したのは、剣の切先が人の肌を切り裂いた瞬間の感触だった。

 強いけど喧嘩嫌いみたいなキャラが人を殴る感触が気持ち悪いみたいなことをよくいうけれど、おそらく割とそれに近い感覚になった。


「おそらく渡したのはヨドミノヌシね。覚えてないのなら、意図的に記憶を消したか…。」

「なんかそんなような気はするような…。」

 私の反応を見て、ハクアの眉根が上がるのがわかる。


「しないような…。」

 実際曖昧なのでなんとも言えないのだが、そんな私を見てハクアの顔もなんとも言えないものになる。


「流石に完全な記憶消去は神様でもできないわ。その出来事が『なかったこと』にすれば別だけど、それこそできるものは限られる…。

 なんとなくそんな気がするんだったら、そうなんでしょうよ。時期も一致するし…。」


 確かに前にもそんな話をした。

 その時は何もわからない感じだったけどな…。


「あれは幽界のものね。現実世界では少なくとも使えない。」

「あー…。あー?」

 現実世界でも、その存在を感じたことがあるような?

 いやでもお目にかかったのはどっちにせよ今回が初めてか…。


「あの剣は、実態のあるものが使うのに膨大なエネルギーを消費するはず。

 まぁそもそも実態があるものが幽界で活動すること自体かなり危険なんだけどね。」

「あぁ…。」

 確かにそんなことを前にも聞いたような気がするが、それってつまりここ数日で何度も幽界に入ってしまっている私も危険ということ?


「まあ本来少し誘拐に入るくらいなら、大きな問題は起こらないわ。

 もちろん入らないに越したことはないけど…、まぁせいぜい一回寝れば治るくらい。ただ、今回はね…。

 剣の負荷に加えて、あんたは呪文も魔法陣も道具も何も使わずにイメージだけで魔法を使った。」


「魔法を?」

 ただ必死で剣を振るった記憶はあるが、魔法の記憶はない。

 何も記憶がない様子の私を見て、ハクアは頷く。


「まぁ眠い頭に説明しても仕方ないから、詳しくは説明しないけど、あれはおそらくあんたみたいな<収束点>特有の術…。

 まぁ自動防御的なものかしらね?」


 なんだそのチートみたいな能力は…。

 私は特撮ヒーローの最終フォームですかって。

 あるいはラスボス?


「なんでもいいから要は、早く寝なさいってことよ。

 明日授業は昼からだったのは、幸運だったわね。」

「え!?学校!?行くんですか!?」


 私の驚きはもっともなはずなのに、ハクアは意外なものを見る目で私にいう。

「そりゃ当たり前でしょ。」


「カナコ…学校は…いかんばきゃだめですよぅ…。」

 私の声が夢の中で聞こえたのかもしれない。

 ニコがまた私に返事をする。


 二度も返事をしてくれるとは、本当に律儀な子である…。

 ニコに免じて今回は寝るとするか…。

 もう思って私が改めて布団を被る。


 目を瞑る前、ハクアがまた肩をすくめて苦笑いする顔が見えた。

〜次回予告〜

カナコ:「私は誰?ここはどこ?」

ハクア:「何言ってんのよいきなり?」

カナコ:「え?本来以上の力を発揮した後、記憶喪失になる主人公ごっこですが何か?」

ハクア:「縁起でもなさすぎるわね…。」

カナコ:「演技だけに?」

ハクア:「笑えないジョークだ。」

カナコ:「ハクアに言われるとミーハー感あって腹立ちますね。」

ハクア:「まぁ雑誌で読んだ知識しか知らないからね実際。」

カナコ:「今の女性誌って、そんなことも書いてあるんですか!?」

ハクア:「いや、割と昔からだと思うけど…というわけで次回は『第三話:まだ昼だってのに起きないとならんとは?』をお送りします。」

カナコ:「お楽しみに。」

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