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アナザーサイドストーリー34(サトミ)

※:第十話前の、カナコたちがやってくる前のサトミ視点のお話です。

 サトミは窓から差す太陽の光で目覚めた。

 自分の部屋に戻らず、社務所の奥で眠ってしまったようである。


 向こうも本気ではなかったとはいえ、クナイが全身にブッ刺さっているので、それなりのダメージなのは仕方ない。


 <同化>系の契約者は特に顕著に契約相手の身体能力を反映する。

 それは術を使っていない時も同様である。


 アカネは同じ系統の中ではそれほど身体能力が高くない代わりに、治癒能力はほかよりも高い。

 それゆえにあの程度の傷ならば、一度寝て起きたら跡形もない。


 だが、目に見えないダメージもある。

 それは疲れのようにしてまだ残っている感覚がある。

 徹夜明けか、重労働の後かというような重い体を持ち上げる。


 重いまぶたが開いた状態を何とか保ちつつ、辺りを見渡す。

 横にはアカネがまだ眠っており、「むにゃむにゃ」と漫画のような寝言を言っている。


 枕元に置かれた自分の携帯を手に取ってみると、時間は十時半。

 驚くほど遅いというわけでもないが、早寝早起きが習慣化しているサトミからすると、罪悪感がある。


 それにそろそろシノブたちが来るはずだった。

 その辺の話は、昨日寝る前に聞いたので覚えている。

 カナコの大学が終わったら、と言っていた。授業が二限までだとどれくらいの時間?

 寝ぼけた頭で考える。


 サトミは長男のシノブもいるので神職に就く必要もなく、ゆえに大学にも通っていない。

 一応巫女として仕事はしているが、表向きにはアルバイト的な扱いということになっている。


「まぁえぇか。」

 ぼそっと呟いて、立ち上がる。

 着替えは自分の部屋に行かないとない。

 とりあえず、一般の参拝客と遭遇しないように裏道を通って自分の部屋がある住居スペースに向かう。


 どちらにせよ二度寝しているほどの時間はない。

 それに、傷が治っているならとりあえずは動いても問題はないだろう。


 派遣機構への道は、その土地の守護者の承認がないと開かない。

 だが今日は平日なのでチサトがない。

 そしてこういう時の後見人の出番というわけである。


 だが、事情を知ることがいいのか悪いのか、サトミは疑問になってきていた。

 彼らは何らかの情報を手に入れるために、自分を襲ってきた。

 だとすれば、事情を知ることが、カナコやニコを更なる危険に晒すことにならないか?


 今回の件は、本来なら特務隊が動いてもいいくらいのきな臭い案件なのは、すでにわかっている。

 その代わりに今回はシノブが採用されているということは?


 一つ言えるのは、それは「シノブにしか対処できない」という判断が裏にあるということだ。

 シノブがいなくなってからも、シノブ以上の術師は出てきていない。

 つまり現在生きている術士の中では、シノブの順位は変わらず四位。


 上位三人は派遣機構を離れることはないと考えると、シノブが積極的に動ける中では一番強い。

 だがそれも、さまざまな条件付きでの話だ。


 術の強さ、術士の強さなど、条件や状態でいくらでも変わる。

 それに、基本的には圧倒的な数や、ふいをついた大魔術などには、シノブでも敵わないだろう。

 要は、今回の一件は、誰か一人に解決を任せるには荷が重すぎるという話だ。


 昨日氷崎レナが言っていた通り、臨時派遣されたはずの隊員は全滅していたという。

 それならば尚更…。


 なぜ、全てシノブに押し付ける形になるのだろう?

 四年前の事件にしても、冤罪という了解は上層部では取れていて、異論はなかった。

 それは、最もそれに異議を唱えそうな前首領、シノブの父が死んだ後だったからというのもあるが…。

 結局、シノブはあの時、自分が嫌いだった父親が選ぶであろう道と同じ選択肢を選んだということになる。


「難儀やなぁ。」


 だが、もし仮に、派遣機構側もグルだったとしたら?

 四年前の事件が、内部の人間の協力がないと成し得ない事件だったのは確かなのだ。

 なぜなら、派遣機構への扉は、守護者の了解なしには開かないから。


 前首領を殺したとされるリンネという狐。

 管原家に封印されていたはずのそいつが、シノブと現世で戦い、その後派遣機構にいた前首領を殺したとすれば?

 少なくとも現世と派遣機構を一往復はしているはずなのだ。


 そこまで考えて、サトミは考えるのをやめた。

 これに関しては事件後にも調査がなされたが、結果は謎のままだったのだ。

 今考えても、頭の中だけでわかるものではない。


「聞いてわかるとええんやけどな…。」

 そう言ってサトミは溜息をついた。

〜次回予告〜

サトミ:「事件って言うけど、ほんまは何があったんかは、うちは知らんのよな。」

ツキヨ:「まぁ、私たちともあまり接点なかったものね。」

サトミ:「…そうやな。」

ツキヨ:「だからってそんなに苦い顔しなくても良くない?」

サトミ:「気まずいやん?」

ツキヨ:「私はそんなことはないんだけど!?…私もしかして一方的に嫌われてたりする?」

サトミ:「そんなことないで?」

ツキヨ:「そのいきなり平然を装う感じが怪しい…。」

サトミ:「そないなわけで次回は『アナザーサイドストーリー35』で視点はツキヨやな?」

ツキヨ:「楽しみにしてなさいよね!」

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