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第九話:この世の果てかと思ったら自分の部屋だった件。

 しかしやばいと言われても。

 事故物件とか聞いたことないんだけどな…。


「だとしたらもしかして…カナコに集まってきた陰の気がカナコの周囲じゃなく住んでいるこの場所に溜まっているってことですかね?」

 よくわからないが、気とかそう言うものは、そんな融通の効くものなのだろうか。


「私もあまり詳しいことはわからないんですが、土地のエネルギーと住んでいる人のエネルギーは影響しあっているのは事実なので…。」

 まぁ説明を聞くと、確かにそう言うものかもしれない気はするが。


 しかし、それだけやばい場所でも、私のような普通の人間は感じ取れないものなのか。

 それとも私が何かおかしいのか…?


「まぁ、感覚として気持ち悪いと感じる人はいるんじゃないでしょうか。でもそう言う場合、現代の人間は感覚がだいぶ麻痺してしまっていますから、気のせいである場合が多いです。」


 なるほど?

 気が見えると言うのはフィクションの世界では当然の能力だったりもするが、現実的にはそうもいかないらしい。

 というか、ただの気のせいとか言ったら、電波系とかオカルト好きの人にめちゃくちゃ怒られそうだ。

 あるいは、そんなこと言われ慣れているから気にしないか?


「…とはいえ、入るしかないですよね…ここまでくると陰の気云々というよりただの穢れって感じですが、その原因もわかりませんし…。」

 ニコも居住いを正し、やる気満々という様子だ。


 いい心意気である。

 その様子なら、私の部屋に入っても問題ないだろう。

 それは流石に皮算用だが。


「じゃあ、行こうか。」

「はい。」


 というわけで、階段を上がる。

 強い気を感じて進めない、とかそんなこともないようで安心した。


「まぁそもそもこういった陰の気や穢れを存在するだけで退けられるのが、第三種の条件ですからね。」

 確かに言われてみればそうである。

 さっきからニコの言葉に納得させられてばかりだ。


 私が門外漢とはいえ、ニコに教えられてばかりなのは若干納得がいかない。


「な!?なんでですか!」

 なんとなくだが。

「し、しかもひどい理由ですね…。」


 昨日よりも少しニコの反応がラフな感じであることに気がついた。

 これはもしかしたら好感度が上がってきた証拠かもしれない。


「え、そんなに変わってますかねぇ…。」

 照れてる可愛い(結論)っていう感じだ。

 インスタントに可愛いって暴力だね!

「だからそれやめてくださいって…。」


 そんなこんな言っているうちに、我が愛しのお部屋の前についた。

 205の部屋番号表記の下に、郵便受けと「角谷」の表記。

 いつものように何気なく、鍵を開け、ドアノブに手をかける。


 その瞬間、酸いとも甘いともつかない悪臭が外に漏れる。

「うっ。」

 ニコが目を見開き、鼻を抑える。

「ね?」

「なんで微妙に嬉しそうなんですかぁあぁ!」

 予想通りの反応であったことに満足しつつ、部屋に入る。

 ニコも躊躇いがちに、鼻をつまみながら暗い部屋の中に足を踏み入れ…。


「ぬにゃ!?」

 何かを踏んでしまったのだろう。

 ニコの意味をなさない悲鳴が響く。


 それを受け、私も部屋の電気をつける。

 そこには所狭しと並んだゴミ袋の山。

 まさに分け入っても分け入っても半透明の山である。


「な、なんじゃこりゃあぁぁぁあぁあああぁあぁ!?」

 私はこの時初めてニコの敬語以外の言葉を聞いたような気がした。

〜次回予告〜

カナコ:「いやぁどうもすみません…。」

ニコ:「どれだけお掃除…以前の問題もしますが、しなかったらこうなるんですか?」

カナコ:「お、ソウジ?」

ニコ:「えぇ…。」

カナコ:「それはそれとして…。」

ニコ:「それはそれとしてる場合じゃないですよぅ!」

カナコ:「次回予告することが許されない次回予告コーナーはここですか?」

ニコ:「だってこれはそれどころじゃないですよ!人間が生きていける環境じゃないですよ!?」

カナコ:「グーの音も出ないのでありますが。」

ニコ:「次回は第十話:『ハイになるほどぶっ飛んだゴミの山にて。』をお送りします。そんなことより早く片しますよ!」

カナコ:「はーい。次回もよろしく。」

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