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第四十一話:ゲート開放的な気分で。

 大通りと派遣機構の本部を中心に集まっている家々が途絶えた辺りにその鳥居はあった。


 鳥居のこちら側は民家、向こう側は濠、そしてその向こうは山となっているので、確かにそれがいわゆる神社の鳥居ではないということはわかる。

「これが、ゲート?」

「そう。」


「こんなに突然あるものなのですよ…?」

「確かに、ゲート自体は一緒でも、幻獣側のゲートは森の端だもんな…。」

 シノブがぼそっという。


「はい…あれ?というか知ってるんですか?」

「うーんまぁ色々とあって?」

 シノブが答えをはぐらかす。

 彼の過去にはまだ謎が多い。


 いや、正確にはみんな過去は謎なのだ。

 シノブのそれが最も奇抜そうなだけで…。


「なんだか不思議な経験だった気がするな…。」

「感想としては、だいぶふわっとしてますね?」

「なんか、元の世界に戻ったら全部夢だったみたいになりそうな気がしない?」

「いえ…流石に私はここで生活してたので…。」


 それもそうか。

 逆にニコからするとここ数日の私との生活の方が目が覚めたら夢である可能性が高いということか…。


「現実は現実だと思いますが…いや、わからなくはないんですけどね?」

「胡蝶の夢ね。」

 コクウが横から口を挟む。


 流石にこれだけ苦労してきたので「全部夢だった」とは思えないだろうが。

 そもそもヴァーチャル世代としては、「現実だと思うものが現実」だと思うしな…。


「じゃあま、帰るか。」

「魔法の練習は厳しいから、やったら夢だったらよかったのにって思うかもね。」

「えっ?カナコさんは初心者さんなのですよ?そんなに厳しくは…。」


 私は最強系主人公じゃないので、流石に努力せずに全てを手にすることはできないか…。

 だがまぁ、それもいいだろう。


 今時忘れ去られた努力とスポコンくらいの、時代遅れな感じの方が私にはお似合いだ…。

 いや、普通にスパルタは嫌だけどね?

 私これでも一応ギリゆとり世代だからね?


「緊急時特例管原シノブ、現世への通行を申請。」

<申請を受諾します。>


 行きはサトミさんがやっていたやつだが、なんやかんやあったシノブでもできるのか…。

 いや、行きは厳しいけど帰りはそうでもないとかそういうパターンか。


 まあ実際、この組織も「派遣」機構であって、いろんな場所に魔法少女を送り込む必要があるんだもんな…。

 いや、だからこそ、狙った場所にピンポイントで派遣できるべきでは?


 でも思い返すと、ニコも私の元に直接現れたわけではなかったし、シノブもそうだった。

 全部この欠陥システムのせいだったか…。


 私が心の中で毒付いている間にも、鳥居の中の様子が変化していく。

 鳥居の向こうに見えていた濠と山々が段々と歪んでゆく。

 明音稲荷で起こったのと同じ、風景をデジタル処理でぼかしたような状態だ。


「帰ったら何時くらいかしらね…。」

「夕方、五時六時くらいじゃないか…。」

 となんでもないようなことを言いながらシノブとハクアが先頭をきってでていき、それにコクウとツムギちゃん、最後に私とニコが続く。


 だが次の瞬間には、私はこの欠陥システムを本気で呪うことになった…。

〜次回予告〜

カナコ:「なんだかここにきてフラグが段々と回収されてきましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?」

ニコ:「何回かその入りやってる気がしますけど、それはどういうテンションなんですか?」

カナコ:「えぇ…ぼちぼちって感じかな。」

ニコ:「いや、そういう意味ではないんですが…。」

カナコ:「しかし、ニコのメタ発言にも毎回突っ込まない程度には、私たちの冒険も続いてきたわけですけども。」

ニコ:「基準がよくわからないですけど、まぁそうですね。」

カナコ:「なんか異世界に行ったり帰ったりってもうちょっと感慨深いもんだと思ってたけど、そうでもないよね。」

ニコ:「まぁ、派遣機構で生活している人もいますし、往復してる方もいますからね。」

カナコ:「うーんまぁそうなんだけどね…なんというか、がっかり?」

ニコ:「バッサリですね…。」

カナコ:「というわけで次回が『第四十二話:正夢の交差点と夢違え(前編)』をお送りします。」

ニコ:「お楽しみに!」

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