表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
324/455

第三十七話:帰ろう私たちの世界へ。(前編)

 ツキヨは扉の鍵を回す。

 どういう仕組みなのかわからないが、部屋に入った後には鍵はかけていなかったはずだ。


 自動ロック的な奴なんだろうか。

 科学でできることは魔法で大体できるというどこかで聞いたような理論でいくと、それも可能だろうが、アナログな鍵のドアでやるかそれを?


 いやでも魔法が使えるのにわざわざ電気を起こすとか無駄か?

 待て、ここも、さっきの部屋も蛍光灯か何かで照らされてなかったか?

 じゃあ電子ロックでいいじゃん…?

 と思ったけど、考えてみると物理的なロックでは魔法に対抗できないのか…。


「わざわざ鍵を使わないと帰れないのよ。

 鍵で空間移動の制御をしてるからね。」


 私がよっぽど不思議そうにしていたのか、何かを聞く前にツキヨが答えてくれる。

 つまりこの鍵を開ける行為は、単純にロックを外すということではなく、移動先を決定しているということなのか…。


「カナコちゃんって案外心読まなくてもわかりやすいわよね。」

「そうね。」

「あはは…まぁそうかもですね…。」

 コクウもニコもそれには同意という様子なのだが、私は割と納得いかない。

 確かに、ハクアにも同じようなことを言われたような気はするが…。


 いや、私はいつでもクールにポーカーフェイスでは?

「それはないですよ。」

 ニコに真顔で言われた。

 いいもんね、いざとなったらマスクして表情隠すし…。


「随分仲良くなってくれたみたいで、何よりだよ。」

 半開きの扉の前でそんな話をしていたせいか、戻ってきて早々ヤミさんにそんなことを言われた。

「そっちの話は終わったのかしら?」

「まぁ大方そうだね。」

 ヤミさんはそう言って、頷く。


「角谷カナコさん、今の状況が大体どういうものか、わかってもらえたかな?」

「まぁそうですね。」

 だが、ツキヨから話を聞かされた直後はなんともいえない気持ちにもなったが…。

 それって結局、私だけではどうしようもないということでは?という結論に至らざるを得ない。


 何せ私は無力だからな。


 というか、それを聞くということは、ツキヨが予言した通り、ヤミさんはそもそもその話をさせるために、メンバーを二手に分けたのか…。

 二手に分かれて本当に何も起こらず無事に帰って来れたのって、何気にこれが初めてな感じがしないか?

 そう思うと、シノブが近くにいると、向こうも警戒するということなのかもしれない。


「というわけで、状況は単純に<収束点>を浄化すれば済むという話ではないんだ。」

 ヤミさんは、これまで私たちが話した内容を知っているかのようにそう続ける。


「だから、管原シノブくんに相談して、一つ決めた。

 我々は、つまり派遣機構は、角谷カナコさんに簡易的な魔法教育を行うことを決定した。

 ただし君にも拒否権が…。」


「受けまぅっ…。」

 勢いつきすぎて舌を噛んだ。

 だが、そんなことはもはやどうでもいい。

 取り繕っている場合ではないのだ。


 これを待っていたんだ、この展開を!

 魔法が現実に存在すると知ったその日からね!

 つい最近だけどね!


「って、それは…。」

 私の前のめりな返事に対して、ツキヨは難色を示す。


「チームでなくなっても、君たちは似たもの同士だね…。

 管原シノブくんもこの話には反対するだろうと思っていた。だから個別に話をさせてもらったんだ。」

「当たり前でしょ!魔法はそんな簡単に使えるものじゃないし、危険も伴う。

 関わらないで済むなら、なるべく関わらない方がいいに決まってるじゃない!

 だからこそ派遣機構も…。」


「確かに派遣機構の決まりとして、一般の人間に無闇に組織や魔法の存在を公開することは御法度だ。

 だが、角谷カナコさんはもはや一般人というには、こちら側に踏み込みすぎている。

 それに、何よりも彼女自身のために、自衛の技術を身につける必要はないか?

 現状、幽界に自発的に、それも瞬時に、自在に、移行する術は我々にはない。

 だとすれば、管原シノブくんたちとの分断も十分にありうるんだよ?」


「…。」


「私は…私も、訓練を受けられるってことですか?」

 なおも何かいいかけるツキヨの言葉を遮って、ニコがヤミさんに問いかける。

 その表情は、今まで見たことがないほど魔に迫った真剣なものだった。


「そういうことになるかな。角谷ニコさん。」

 そう言ってヤミさんはニコに微笑みかける。

 もしかしたら、ここまで想定した上で派遣機構はニコを派遣したのかもしれない、とふと思った。

〜次回予告〜

カナコ:「さぁいよいよ面白くなってまいりましたよニコさん!」

ニコ:「そう…ですかね。」

カナコ:「まぁ、魔法を使うことがただ楽しいだけじゃないっていうのはわかるんだけどね…。」

ニコ:「それでも、やるんですね?」

カナコ:「できるなら。私だってさ、ここまでただ守ってもらってばかりっていうのはやなんだよ?」

ニコ:「そんなことは…。まぁでも…カナコがそういうなら、やってみる価値はあると思います。」

カナコ:「ありがとう。…ということで次回は『第三十八話:帰ろう私たちの世界へ。(中編)』をお送りします。」

ニコ:「お楽しみに!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ