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第三十二話:オタクの友達が厨二病ってね?

 霧といえば白いという認識だが、これは灰色の霧。

 故にどちらかというと火を焚いた時の煙に近いか?


 匂いはしないけれど、息苦しくはある…。

 というか、呼吸ができない?

 え?マジで言ってる…?


 こんなインスタントに死にかけることあります?

 やばい、ちょっとマジでやばいって!?


 深く息をしても肺に空気が入っていないというか、喉の奥で引っかかるというか。

 酸素がなくなったらこんな感じなのかなと思ってみたり…。


「やめなさいキララ!」

 ツキヨが本棚を殴りつけ、強く叱りつけるような口調でいう。

「な、なんだ!?侵入者ではないのか?」

 霧の中、どこからともなく声がしたかと思うと、霧は瞬く間にツキヨの横に収束し、人の形となった。


 霧が引くと同時に深く息を吸い込む。

 思った以上に限界ギリギリだったようで地面にへたり込みそうになったのを、コクウが受け止めてくれる。

 だがそんなコクウもなんというか不快感の漂う表情をしている。

 ニコもなんとか棚にもたれかかっている様子だ。


 焦った。

 人間足元までの水で溺れるというが、そういう人もおそらくこういう焦り方なんだろうな。

 というか、呼吸ができなくなるってこんなに焦るんだな…。

 まぁまさか水中でなく空気がある場所で溺れかけるとは思わなかったが…。


「あんたねぇ、ちょっとはその慌て癖をやめなさいっての!」

「あっ痛!?」

 ツキヨがその人形に軽くチョップをかます。

 人形はいつしか具体的な形をなし、やがて可憐な少女の姿となる。


 ニコを初めてみた時も、絵本か何かから飛び出してきたお姫様かと思ったが、その少女はまるでお人形さんみたいというか、ニコとはまた別ベクトルだが明らかにAPPが高い。

 強い邪神か何かなんじゃないかと疑うレベルだ。

 わかる人にしかわからない例えだがIQを下げていうなら要は、「めっちゃ美少女」ってことだ。


「いくら警備してもここは誰も侵入できないのよ!」

「それはわからなんじゃないかって、おいちょっと待て、チョップは一回で十分だ…あああああ!?」

 右手の手刀を避けられたところに死角から左手の手刀を叩き込むその技、私じゃなきゃ見逃しちゃうね?


「くっ。眷属の分際で、生意気なのだ。ってもういい、もうチョップはいいから!やめて!可愛い我が体にこれ以上どのような、ああああ!?もう!」

 左手の手刀を買わされたところに右手の手刀をフェイクで放り下ろした上で左手の手刀でとどめをさす早技、私じゃなきゃ…いやこの流れ、このままだと永遠に続きそうだな…。


 いや、ちょっとは学習しようよ?

 ツキヨもそこまでやらなくても…いやまぁ、なんというか確かに、わからせたいタイプのイキリ方な感じはするけどね?


「そちらは?」

 やっと息が整ったらしいニコが、尋ねる。

「こいつは…。」

 コクウが何かを忌々しそうな表情で言いかけたが、それよりも先にその少女が自分から名乗りをあげた。


「我が名は緋川キララ!闇の支配者、由緒正しき吸血鬼の末裔なるぞ!」

 そう言うと、「はっはっは!」とよくいえば元気に、悪くいえば偉そうに、胸を張って笑う。


 なんというかうん。

 嘘はついてないような気もするけど、それにしても厨二病かなこれは。

 アイタタって感じですわほんとに。


 コクウがものすごいいやそうな表情をしているのは、きっとそのせいなのだろう…。

〜次回予告〜

キララ:「二度も言ったな!二度も我が高貴なる存在を厨二病などと言ったな!」

ニコ:「キララさんは、吸血鬼族なんですか?」

キララ:「そうだと言っておろうが!」

カナコ:「吸血鬼で書物庫っていかにもって感じしちゃうのは私だけ?」

ニコ:「確かに博学な種族だとは聞いたことがありますが…。」

キララ:「はっはっは!そうであろう、そうであろう。もっと褒め称えよ!」

カナコ:「よっ、世界一の厨二病。」

キララ:「そうであろう、そうで…ってお前は!?」

ニコ:「カナコはそういう言葉のトラップみたいなの好きですよね…。」

カナコ:「いや、これに関しては引っかかる方が、ねぇ?」

ニコ:「あはは…。」

キララ:「何が言いたいんだこの!」

カナコ:「はいはい、というわけで次回は『第三十三話:命短し本読め乙女!』をお送りします。」

キララ:「我が扱いがひどくぞんざいではないか!?我、初登場ぞ!?」

ニコ:「…お楽しみに?」

キララ:「無視するにゃー!?」

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