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第七話:道端をスマートフォンとともに。

 今時の人間界の地図は電子化されているんですね?

 びっくりしすぎて心中で復唱してしまった。

 確かにファミレス知らなかったり、なんだりかんだりの様子から、片鱗は見えていたが。

 もしやニコはこの時代において生活必需品であり、もはや万人の肉体の一部と化してしまっているこの装置を知らないというのか!?


「え?」

「これは地図ではありません。」

「そ、そうなんですね。」

「これは小型化されたパソコンのような装置です。」

「な、なるほど。でもパソコンってあの箱みたいな?」

 パソコンが箱型…だと…?

 ニコは一体いつの時代からタイムスリップしてきてしまったというのだろうか。


「あれ?あれ?私何か間違ってますか?」

 あわあわしているニコは相変わらず可愛いがそれはそれとして、これはどうやら貴族だからどうとか、そういう次元を超えている。

 それはもうハイパージャンプ並みのぶっ飛び方だ。


「ハイパー…?まぁでもあんなに大きな機械と同じことが、これだけ小さなものでできるなんて…。」

 今じゃパソコンも薄型で小型なものがあるので、驚きのベクトルが若干ずれている。

 とはいえ、この話はいつでもできる。


 それに、道を間違えておいてなんだが、だいぶ疲れてもいる。

 とりあえず家に帰り着いてから考えたい。


「す、すみません。人間界についても勉強してきたはずなんですが…。」

 その人間界という言葉もフィクションの世界観ではよく聞くけれども現実で言われると違和感マシマシである。

 そもそも、ニコとミサキちゃんと猫耳は知り合いらしかったが、その辺の関係図も未だ不明瞭だ。

 …だめだ。よくない意味不明な妄想しか出てこない。

 疲れている証拠である。


「と、とりあえず帰りますか?」

 そうした方が良さそうだ。

「ごめん、道間違えてた。」

 そう一応言葉でも伝えて、きた道を戻る。


「そういえば、カナコの家ってどんな感じなんですか?」

 きた道を戻り、神社の前あたりまで来た時、ニコが思い出したように尋ねてきた。


 だが、自分でそう呼べと言っておいてなんだが、呼び捨ての破壊力が高すぎて、内容が入ってこなかった。

 親にすらそんなに呼び捨てで名前を呼ばれた記憶がないのだから仕方ない。

 改めて悲しい人生だな。


「えぇっと…さっき、家に来て欲しくなさそうなので。確かに、昨日知り合ったばかりの他人を部屋に入れるのに抵抗があるのはわかりますが。」

 そうか、その話か。

「見られたくないものがあるものだってサトミさんは言っていましたが?」

 そうといえばそう。

 その次元ではないといえば、そうでもある。


「まぁ簡単にいうと…。」

 と言いかけるが正直簡単に言いたくねぇ…。

 この事実を他人に告げるのは思った以上に心が痛い。

「な、なんですか。」

 ニコも私の並々ならぬ様子に気圧されて生唾を飲む。


「私の家は恐ろしく汚い。」

「!!?…ん?それだけですか?」

 雰囲気で一瞬驚いたニコだったが、言葉を咀嚼して疑問を感じたようだ。


 まぁその辺は、みればわかるだろう。

 太陽も地平線を脱したことだし、今はそれ以上言及せず、兎にも角にも家路を急ぐとしよう。


 というかこの私が朝帰りとはね。

 一生縁などないと思っていたが。

〜次回予告〜

カナコ:「まさか家の近くで迷うとは思わなかった…。」

ニコ:「それは私も思ってませんでした…。」

カナコ:「グサっ。ニコは引きこもオタコミュ障の心を折るのが得意みたいだね。」

ニコ:「でもそう言えば、カナコは第一章の最初で渋谷まで出てますよね?」

カナコ:「グサっ。」

ニコ:「え、今度は何が刺さったんですか。ごめんなさい。」

カナコ:「ごめん、ギクッって言おうと思って間違えた。」

ニコ:「どんな間違えですか…。」

カナコ:「と、ところで次回は、片道を戻って家にたどり着いた後の話。」

ニコ:「第八話:『それでも私はマップのピンを信じることにした。』をお送りいたします。」

カナコ:「お楽しみにー。」

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